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燃える草の原のむこうで
夜は息をしつづけていた
生まれる前のものが羽に包まれ
夜とともに揺らいでいた
かがやきのない星が穴のように在り
風と煙と火の柱を
吸い尽くすように吸いつ ....
やってみたいことはたくさんある けれど、
やっておきたかったことも、たくさんあった
高く、空に流れていった最後の校歌と
旅立ちの、握りしめたら少しだけ痛い
金釦のような歌
それらをいいわ ....
もうこうなりゃポカスカ日和だ
立っていると
足がくらげになってしまうほど
あったかかった
午後三時の図書館の屋上は
どの午後より
死んじゃってる、と
お ....
調子はどうだ。
大学には慣れたか。
都会は楽しいか。
食事はきちんととってるのか。
父さんは心配だ。
ダイエットもいいが
野菜と肉も食べろよ。
風邪引くぞ。
たまには実家に帰ってこ ....
ホームで君が歌を口ずさむ
それはとても良い音なので
お墓のようなものと間違えてしまう
床に書かれた落書きが
羽をはやして飛び立とうとする
言葉はそんなことをしてはいけない
小さな子供が言い ....
?.
この絵、あんたにそっくりね
そういっておまえが笑った絵は
リオハのお城みたいなワイン美術館にあって
おまえが指差して笑った絵は
赤ん坊のバッカスが
ワインをラッパ ....
鳥かごを作った
鳥は空にいるので
それで良かった
代わりに魚を入れると
苦しそうに跳ねた
花や玩具を入れても
どうということはなかった
鳥かごは
誰のものでもなかった
鳥は空にいた
....
1
うすい意識のなかで、
記憶の繊毛を流れる、
赤く染まる湾曲した河が、
身篭った豊満な魚の群を頬張り、
大らかな流れは、血栓をおこす。
かたわらの言葉を持たない喪服の街は、 ....
あの人
昨日の真夜中に
「ここではないどこか」に
行ってしまった
展示品現品処分19800円で買った
ちょっぴり傷のついてるセミダブルのベッドに
私一人を置き去りにして
煙が消える ....
きんいろは
かなしいすべだと思います
闇夜のはなは
もっともあかく
ひとみを閉じこめて
火から、
結ばれてゆく、
果実のことなど、
だれもが、
とが ....
ピクルスはお入れになりますか。
何にといってハンバーガーにでございます。
ハンバーガーを注文されてないと申されましても
そのことがピクルスを入れるかどうかを尋ねることを
妨げるものとは思えませ ....
―RIOJAにて
見渡す限りの葡萄畑を歩いてゆく
そこ此処に きれいな花をつけた木が点在している
アルメンドラ!とおまえが叫んで 駆け寄って
木 ....
空からは 降りてくる
土からは 起きあがる
手をさしのべて
のびをして
あくびする
呼ぶ声にこたえる
うつくしく
わらう
{ ....
きみの名前をおぼえた日から
ぼくはふたつを呼んでいる
やさしさは偽らないからね
溢れても
まみれても
ささやかなすべてを
見失わないように
疑うことは
....
ざわめきを聴いていた
誰か、いいえ
それよりもっと
わかりやすいものたちと
孤独を分け合って
ざわめいていた
聴いていた
つばさを諦めることで
繰り返されてゆく、
....
東京特許許可局
俺はおまえを許可しない
おまえのような早口言葉は到底容認することができない
おまえだけじゃない
赤巻紙青巻紙黄巻紙や新春シャンソンショーにも伝えておけ
ふざけるなって
おま ....
君という雨に打たれて
私のあらゆる界面で
透明な細胞たちが
つぎつぎと覚醒してゆく
夏の朝
影に縁取られた街路
やわらかな緑の丘
乾いたプラットフォーム
きらめきに溢れた ....
この街が奇病に犯され始めたのは
冬が明ける前だった
『蒸発王』
最初の目撃は
髪の毛だったらしいが
全ての症状は同じだった
蒸発する
感 ....
あおいカーテンの
こちらがわで
くらげとくらしています
くらげはいつも
ふらふらゆらいでいるだけです
わたしがねてても
おきてても
ゆめをみてても
みていなくても
この街はす ....
濁った沼のある寂れた町に
マリーという女が住んでいた
マリーの本名は誰も知らない
彼女は
夏の真夜中のような眼をした
中々の美人であったが
友達はいなかった
若者はみな都会 ....
小高い丘に店を開いた
お客が来た
出入り口なので
お客は出ても入っても良かった
晴れた日は
見渡せることろまで見渡せた
雨の日は
屋根や壁に雨があたった
ただここにいて
何かを待って ....
冬が終わりそうなので
ひだりの方を向いたら
そこにはひだみがいた
ひだみと名づけられたひだみは
自分が何であるのかわからないので
大そう困っている
僕もひだみと言ったものの
ひだ ....
てのひらに乗った 雪が
溶け出して、僕の
一部になってゆく
降り始めに気がついたのが
どちらだったか
もう忘れてしまった
雪は
これで最後かもしれない、と
最初に言ったのは君の ....
羽根のはえた指で
不透明のやわらかい
やわらかい虚無を撫でながら
ゴウゴウと吹きあげる
おおきな風を
待ってる
やあ、とか
ほう、とかって
羽根のはえた指で
お前 ....
夜の硝子
朝の氷
はやく溶けるのは
(指)
祭壇の上
振り払われた火
煙の行方は
(川底)
ひとつ
かけらが降る
ふたつめは
(手のひら)
....
なかなか歩かなかった
かいちゃんが
とうとう歩き始めた
まだよちよちだけど
少しずつ歩く距離ものびて
もう少し歩くのが上手になったら
まあたらしいくつをはいて
お外をいっしょに散 ....
いきなり
砂から 立ち上がって
わたしの目の前で
復元する ひと
ああ!
あなたの写真を 一枚も持っていなくて
あなたに よく似た絵があったから 売ってもらいました
ありったけの貯金をおろして 買ってしまいました
ヘッドフォンからクラゲが出てきた
きちんと右と左から
透き通るその姿は美しかった
片方が大きくなると
一方が小さくなったり
それぞれ浮いたり沈んだり
その度にひらひらと舞う姿は
まさにハ ....
せかいの おわりに
きみとだけは いっしょに
いたくないと いわれたら
がんばって
せかいを すくう
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