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今日は盆の入りなので 
夜家に帰り門を開くと 
家族は敷石の一つに迎え火を焚き 
両手を合わせ
揺れる炎を囲んでいた 

初老の母ちゃんが 
「 お爺ちゃんがいらっしゃるわよ 」 
と ....
数週間かけてつくった 
富士山の大きいパズルも 
遂に最後の1ピース 

・・・というところで 
頂上のましろい1ピースが 
無い・・・! 

わたしは探す 
目を血走らせ 
床を ....
貧しい村の群衆に紛れ 
無数の足音の下を 
痩せ細った 
病める女が這っていた 

低い目線の前に 
舞う{ルビ砂埃=すなぼこり}の向こうで 
長い間-----  
女が ....
降りしきる 
スコールみたいな哀しみを 
突き抜けてゆく 
Poetry

暴力の間に 
道を切り開く 
見えない力の 
Poetry

愛欲の沼に溺れ 
腐った{ルビ屑=くず} ....
古い日記の頁を{ルビ捲=めく}ると 
遠い昨日へ 
葬られた{ルビ女=ひと}の名前 

( 霞の向こうに立つ、その人影 ) 

左手首に巻いていた 
あの日の腕時計は 
いつのまに、{ ....
転がりそうで 
転がらぬ 
歪んだ花瓶に生けられて 
まばらに咲いた 
ひまわり達 

打ちひしがれて、皺くちゃに、 
首を折って{ルビ俯=うつむ}く者。 

背丈を伸ばした頂で、  ....
夕暮れ 
母校の校庭の隅に立つ 
{ルビ巨=おお}きい{ルビ欅=けやき}に額を押しつけ 
涙を絞って泣いていた 

この木のまわりに穴を掘り 
子供だった僕等の宝を入れた 
卒業前のあの ....
犀川の 
芝生の土手に腰を下ろし 
静かな流れをみつめていた 

午後の日のきらめく水面には 
空気が入ってふくらんだ 
ビニール袋が浮いていた 

近くで
ぴちゃりと魚が 
跳ね ....
風ノ葉 

こころには 
埋まることなきすき間あり 
葉の揺る茶屋に 
独り佇む 



椀 

{ルビ空=から}の{ルビ椀=わん}
ひかりのにじむ 
底のまるみに 

 ....
ぼくの頭の修理を頼んだ 
大工のたけさんが通った 


「 ぼくの頭はやかんなので 
  やっぱり治さないでだいじょうぶ 」 


「 あぁそう ならば
  ちょっと不思議な部品を ....
ざざあ 


ながしに水をすてる 


空っぽの 
やかんの中身をみていると 
わたしの頭のようだった 
風船の顔をした 
君の彼氏が 
口先ばかりの愛を囁くので 
「 死にたくなった 」と 
君は深夜のメールをぼくに送る 

驚いて、瞳もぱっちり覚めたので 
深夜の散歩で月を仰いで 
川 ....
森に架かった木の橋に 
父は手にしたカメラを構え 
木漏れ日と葉陰の揺れる{ルビ袂=たもと}に立つ 
妻と娘をレンズ越しに覗いた 

シャッターを押した後 
肩を並べた三人の後ろ姿は 
 ....
「 この世の外なら何処へでも ! 」 
という最後の詩句を読んだわたしは 
「 転居先 」について考えていたが 
そんな場所は、何処にも無かった。 

日常から逃れるほどに 
毎夜訪れ 
 ....
 {ルビ赤煉瓦=あかれんが}の橋を渡る 
 傘を差した婦人がうっすらと 
 遠ざかる面影映る 
 Cafeの窓 

 四角いテーブルの前には 
 文学館で偶然会った詩友が 
 詩について ....
プレハブの 
休憩室の入り口に 
日中の仕事で汚れた作業着が 
洗ってハンガーにかけてある 

ドアの上から照らす電球の 
茶色いひかりにそめられて 
干されたまま 
夜風にゆられる作 ....
ある日の{ルビ些細=ささい}な出来事で 
仲良しだった 
AさんはBさんの陰口を 
BさんはAさんの陰口を 
別々にぼくの耳は聞いていた 

夕暮れの 
空気のはりつめた部屋に 
Aさ ....
ふいに 
{ルビ痒=かゆ}くなった腕をかいたら 
思いのほか 
しろい爪は伸びていた 

( 窓の外には風が吹き 
( 緑の木々が  
( 夢を{ルビ囁=ささや}く声がする 

はた ....
窓辺には 
ガラスケースにしまわれた 
誰かの心臓が置かれている 

真夜中の無人の部屋に現れる 
今は亡きピアニストの面影 

奏でられる旋律に 
永い眠りから覚めた心臓は 
脈を ....
終電前の 
人もまばらなラーメン屋  

少し狭いテーブルの向こうに 
きゅっ と閉じた唇が 
うれしそうな音をたて 
幾すじもの麺をすいこむにつれ 
僕のこころもすいこまれそう 

 ....
冷えた石段に腰かけ 
振り返ると 
木々の茂みの向こうに   
{ルビ巨=おお}きなH型の下を{ルビ潜=くぐ}り 
無数の小さい車が行き交う 
横浜ベイブリッジ 

( H型の四隅 
 ....
空の曇った暗い日に 
ざわめく森の木々に潜む  
五月の怪しい緑の精は 
幹から{ルビ朧=おぼろ}な顔を現し
無数の葉を天にひらく 

わたしを囲む森に{ルビ佇=たたず}み  
ベンチに ....
帰り道を歩いていたら 

  ぽとん 

となにかが落ちたので 
ふりかえった地面には 
電池が一つ落ちていた 

( 塀越しの小窓から 
( 夕暮れの風に運ばれる 
( 焼魚の匂 ....
虹色の服を着た少年が 
壁をよじ登る 

若い母は 
きゅっ と眉をしかめ 
平手で幼い尻を 
幾度も叩く 

( 次男坊は、黙って菓子を、食べていた ) 

母の隣に座らされた少 ....
 日曜の午後 
 鎌倉の喫茶店で 
 「 詩人の肖像 」 
 という本を読んでいた 

 店内の天井から 
 ぴったりと静止した 
 サーカスのブランコのように 
 ぶら下がる 
  ....
「 みなさ〜ん 
  ぼくのあとについてくると 
  穴に落ちますよ〜     」 

背後から 
ぞろぞろと 
杖をつくお爺ちゃんや 
車椅子をこぐお婆ちゃんが 
頼りない 
ぼく ....
夜、コンビニへ行く途中 
「 傷・{ルビ凹=へこ}み・45分でなおします 」 
という車修理の看板が 
無数の電球に{ルビ縁取=ふちど}られ 
夜道に ぴかぴか 点滅していた 

今までに ....
わたしはいつも、つつまれている。 
目の前に広がる空を
覆い尽くすほどの 
風に揺られる{ルビ椛=もみじ}のような 
数え切れない、{ルビ掌=てのひら}に。 

その手の一つは、親であり  ....
畳の部屋に座る祖母が 
親父と叔母を目の前に座らせ 
「もしも私が世を去った後も
 互いに仲良くしなさい  」       
と静かに語っていた頃 

仕事帰りで疲れたぼくは 
霧雨の降 ....
あっ 

と九十過ぎの{ルビ老婆=ろうば}が言うと 
黒い杖はエレベーター十階の 
開いたドア下の隙間にするりと落ちて 
奈落の底で 
からんと転がる音がした 

「 杖も毎日使われて ....
北大路京介さんの服部 剛さんおすすめリスト(77)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
盆ノ夜_- 服部 剛自由詩9*07-7-14
幸福のピース_- 服部 剛自由詩8*07-7-8
病める女_- 服部 剛自由詩407-6-28
eden- 服部 剛自由詩8*07-6-27
浜辺の女_- 服部 剛自由詩10*07-6-25
「_ひまわり_」_- 服部 剛自由詩707-6-17
夜の校庭_- 服部 剛自由詩11*07-6-15
犀川_- 服部 剛自由詩18*07-6-12
〜金沢小品集〜__- 服部 剛短歌12*07-6-12
やかん_〜2〜_- 服部 剛自由詩707-6-4
やかん_〜1〜_- 服部 剛自由詩507-6-4
不思議な交際_- 服部 剛自由詩14*07-6-4
汚れた庭球_- 服部 剛自由詩807-6-2
日々ノ契約_- 服部 剛自由詩11*07-6-2
鏡ノ国_〜港の見える丘公園にて〜_- 服部 剛自由詩1007-5-30
夜ノ電球_- 服部 剛自由詩15*07-5-29
夕暮れ煎餅_- 服部 剛自由詩7*07-5-29
爪切り_- 服部 剛自由詩9*07-5-26
窓辺の心臓_- 服部 剛自由詩12*07-5-24
ゆげのむこう- 服部 剛自由詩19*07-5-21
母子像_〜港の見える丘公園にて〜__- 服部 剛自由詩7*07-5-18
森ノ潮騒_- 服部 剛自由詩13*07-5-18
秋刀魚_- 服部 剛自由詩14*07-5-18
虹色の少年_- 服部 剛自由詩11*07-5-14
桜吹雪_- 服部 剛自由詩907-5-13
お婆ちゃんのきっす_- 服部 剛自由詩8*07-5-12
達磨の詩_- 服部 剛自由詩5*07-5-1
椛の木陰_- 服部 剛自由詩25*07-4-24
出棺の日- 服部 剛自由詩11*07-4-19
古い杖- 服部 剛自由詩12*07-4-18

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