母子像 〜港の見える丘公園にて〜
服部 剛
冷えた石段に腰かけ
振り返ると
木々の茂みの向こうに
巨きなH型の下を潜り
無数の小さい車が行き交う
横浜ベイブリッジ
( H型の四隅
( それぞれに点滅する
( 真昼の星々
二本の大きなポプラの間に
ふたりの子供を座って抱き
うつむく母の像があり
小さい両手を胸にあて
瞳をみ開く少年は
ふらりと訪れたわたしの方を
じっとみつめる
うつむく母に
呼ばれるように腰をあげ
3人の前で佇む
碑文に刻まれた
20年前の悲劇
「
昭和52年9月27日
横浜緑市緑区荏田町に
米軍機が墜落し、
幼い子供ふたりが死亡
残された母は長期入院で
皮膚移植手術を繰り返した末
4年後に呼吸困難により
息を引き取る
」
ポプラの根元に群がる草々は風に騒ぎ
翼をひろげた烏は木々の間を横切った
木々の茂みの向こうに
真昼の星が点滅する
横浜ベイブリッジ
寄り添う兄と肩を並べ
うつむく母の膝にのり
少年の瞳は今もみつめている
あの日父の肩車から見渡した
大好きな
横浜の港を