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修善寺の源泉で
足湯に浸した
両足は
鬼の如く真っ赤に染め上がり
旅人は心に決める。

――この足で、日々を切り裂こう

娑婆の世を生きるには
時に…鬼と化さねばならぬ
が、赤い仮 ....
老人は、もはや泣くこともなく  
日がな寺の石段に腰かけ、笑うこともなく  
そうして人は  
化石になってゆくだろうか――  

  *  

昨晩、偶然、点けたTV画面から  
私 ....
――再び発つ、と書いて「再発」という―― 

    * 

「人間はふたたび起きあがるようにできているのさ」 
いつも眼帯をしてる{ルビ達磨=だるま}診療所のヤブ医者は 
片っぽうの目で ....
今日という一日に数え切れない
(ありがとう)が、隠れている。  

よく晴れた日の夜空に 
いつのまにか姿を現す 
あの星々のように―― 
塩を振られたなめくじは 
縮みあがった僕なのです 

縮みあがった僕だけど 
今は一児の父なのです 

一児の父であるならば 
縮みあがった、この体 

自分らしくのそぉりと 
濡 ....
車で信号を待つひと時は 
役者が舞台にあがる前の 
あの瞬間、に似ている 

交差点を 
右から左へ、左から右へ 
車はゆき交い 

のたり、杖をつくお爺さんと 
たたた・・・と駆け ....
目の前に、一本の棒がある。 

誰も高飛びをしろとは言わない 
ただ、越えねばならぬ。 
向こう側に、行かねばならぬ。 
誰もお前の美しい技を待ってはいない 

目の前の、一本の棒を見る ....
心の中のゴミを掃く 
ざぁ、ざぁ、という 
あの音を聴け 

塵一つ無くなった心の中の 
真空の庭に 
ひかりの鳩が降りてくる 

そうしてひかりの{ルビ嘴くちばし}は 
開き 
 ....
ふと手にした一枚の紙切れに 
優れた画家のデッサンが浮かぶように 
鏡は少女の清らかな 
一瞬の微笑を映すだろう 

ほのかな{ルビ灯=ともしび}のひかりの中に 
明け方の少女がひとり 
 ....
鞄から引っ張り出したノートの角が 
勢いあまって目に入り 
白目に赤い線がひとすじ入った 

思わず両手で片目を抑え 
あいたたたたた・・・とうずくまり 
まったくついてねぇや、と目医者に ....
今僕は、東京へと走る列車に乗っている 
結婚前の妻と出逢ってからの数年間 
毎日顔を見ない日はなかったが 
今日から三日間 
我が家を離れ、旅に出る 

今僕は、妻と幼い周から 
どんど ....
不器用な自分を忘れようと 
彼はアトリエに入った 

目の前にある石を 
彫刻刀で、削る。 

無心の者となり 
夢中に、削る。  

いつのまにか 
とっぷり日は暮れて 
暗闇 ....
仕事帰りの若いサラリーマンが 
夢庵でネクタイを緩めて 
しゃぶしゃぶ定食を食べていた 

思えば僕にもそんな 
寂しさにみたされた夜があった 

職場の老人ホームで 
お年寄りが喜ん ....
僕の履いてる靴の踵は 
ぽっかり穴が、空いており 

電車待ちのベンチや 
仕事帰りのファミレスで 
片足脱いでは 
いつも小石を、地に落とす。 

給料日が来るたびに 
「今月こそ ....
私の魂というものは 
量りにのせて 
測定することはできません 

たとえば眠りの夢に落ちる時も 
たとえば悲嘆に暮れる日さえも 

私の内的生命は 
一本の透けたアンテナを立て 
 ....
{ルビ麺麭=パン}には、バター。 
御飯に、味噌汁。 

人間も、自らを引き立てる 
誰かさんが、必要で。 

以前は朗読する僕の後ろで 
キーボードを弾いていた君が 
ある日、舞台に ....
「 いってきます 」 

顔を覆う白い布を手に取り 
もう瞳を開くことのない 
祖母のきれいな顔に 
一言を告げてから 
玄関のドアを開き
七里ヶ浜へと続く 
散歩日和の道を歩く 
 ....
皆が笑顔で集う 
不思議な海の中心で
貝のこころを開いて
歓びを分け合うのも自分 

ふいに人と話せなくなり 
深海の暗闇で 
貝のこころを固く閉じ 
独りきりになっているのも自分 
 ....
日曜日の広場で 
バザーをやっていた 

たくさんの子供等が 
小さい手に{ルビ紐=ひも}を握り 
宙に揺れる 
色とりどりの風船達 


  あっ 


立ち止まる若い母と  ....
暗天の下に荒れる 
大海原に背を向けて 
丘の上の白いまりあ象は{ルビ俯=うつむ}いて 
一人の幼子を抱いていた 

長年の雨や泥に 
汚れた背中を隠しもせずに 
只、一人の幼子を守るこ ....
「明るい私」を演じる日々に疲れて 
休日は体を丸めた蓑虫となり 
布団に包まる 

{ルビ転寝=うたたね}の間に 
夢の運転席で僕はハンドルを握り 
並走する左の車線に 
追いついてきた ....
たこ焼きを買うといつも 
棒が二本添えてあるのは 
何故だろう・・・? 

屋台の太ったおばちゃんよ 
ついこの間 
惚れた女に逃げられた 
寅さんみたいな俺さまに 
ずいぶん気が利く ....
「免許を取るには、年齢位の金がかかる」 

誰かさんが言ってた通り 
33歳にして33万という金を 
母ちゃんは惜しげもなく貸してくれた 

二俣川で筆記試験に受かり 
初めて免許を手に ....
食事を始めた 
一口目に 
山盛りポテトフライの皿の 
隅っこにのせられた 
パセリを食べる 


噛み切れない小さい葉達が、苦かった。 


今日も世界の
あちらこちらの食卓で ....
わたしの心と体というふたつは 
風の息吹に包まれながら 
透けた紐に結ばれたひとつです 

体が体のみならば 
わたしは只の人形です 

心が心のみならば 
わたしは只の霊魂です 
 ....
なぜあなたは 
病の親の世話をして 
毎朝歯を喰いしばり 
家の門を出て来る部下が 
体調崩し仕事を休む 
辛いこころが見えぬのだ 

わたしは今日も ふんふん と 
あなたの腐った愚 ....
( 世界は 
( 透けた瓶の内にある 

森の小道を裸足で走り 
汗をかいたラムネの器の底を手に 
真夏の空に傾ける 

( 星のころがる、音がする。  

{ルビ蝉時雨=せみしぐれ ....
車椅子に座る 
小さいお婆ちゃんを 
前から抱きかかえる  

少し曲がった 
「 人 」という字そのものに 
なれた気がする 

ごめんなさい、ごめんなさい 
と繰り返すので
な ....
テレビをつけると 
瓦礫の山から掘り出され 
額に血を流した中年の女が 
担架から扉を開けた救急車へ 
運び込まれていた 

その夜 
テレビの消えた部屋で 
歯を磨き終えたぼくは 
 ....
大型台風は 
太平洋沿岸を次第に逸れて 
中心の(目)を閉じていった 

数年ぶりに
{ルビ小動=こゆるぎ}岬に立てば 
鉛色の海に
幾重も立ち昇る 
龍の白波 

腰越港へと続く ....
北大路京介さんの服部 剛さんおすすめリスト(77)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
鬼ノ涙___- 服部 剛自由詩615-10-27
老人と魚- 服部 剛自由詩813-10-15
達磨診療所_- 服部 剛自由詩8*13-4-4
ありがとうの星_- 服部 剛自由詩813-3-8
なめくじ親父_- 服部 剛自由詩14+*13-2-19
交差点にて_- 服部 剛自由詩1212-11-9
向こう側__- 服部 剛自由詩212-10-24
ひかりの鳩_- 服部 剛自由詩512-8-17
ルノアールの少女_- 服部 剛自由詩7*12-5-19
詩人の目薬_- 服部 剛自由詩612-4-5
不思議な扉_- 服部 剛自由詩212-3-13
詩人の魂_- 服部 剛自由詩4*12-1-28
あの頃の青年_- 服部 剛自由詩1011-11-3
穴の空いた靴_- 服部 剛自由詩810-2-4
魂の器_- 服部 剛自由詩9*10-1-3
オノ・ヨーコの伝言_- 服部 剛自由詩3*09-12-22
海に還った祖母に捧ぐ_- 服部 剛自由詩3509-1-24
貝をひらく_- 服部 剛自由詩608-11-2
空の何処かに_- 服部 剛自由詩508-10-27
丘の上のまりあ象_- 服部 剛自由詩508-10-15
夢の道路_- 服部 剛自由詩7*08-10-11
串棒二本_- 服部 剛自由詩9*08-9-28
免許を取れた日_- 服部 剛自由詩27+*08-8-26
パセリ達_- 服部 剛自由詩1708-8-12
宇宙ノ木_- 服部 剛自由詩10*08-4-18
虫の味_- 服部 剛自由詩11*07-7-24
蝉時雨_- 服部 剛自由詩11*07-7-19
「_人_」_- 服部 剛自由詩18*07-7-18
掌の上に_- 服部 剛自由詩13*07-7-17
腰越- 服部 剛自由詩6*07-7-15

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