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地図を広げて電話を片手に話している
相手は叔父だ
ある地名の場所がわからないという
三文字の漢字で表す地名
「興味の興、という字がつくの?何?聞き取れないの?」
歳老いた叔父の声はしゃがれ、 ....
シュッと宙に向けて突き出した切っ先が
目に飛び込んできた
暗い展示室にひときわ輝く一振り
研ぎ澄まされた刀身が
強いスポットライトを跳ね返して
銀色の光を放っている
思わず吸い込ま ....
向き合った途端、一瞬たじろいでしまった
あまりにも真っ直ぐに見つめられて
ファインダー越しに覗いた
淡いピンクの大輪
千重咲きの奥に守られている花芯は
何か語りた気に
唇をうすくほ ....
私のDNAの塩基配列に
「ケ・セラ・セラ」という
遺伝子情報が組み込まれている
膨大な螺旋構造の宇宙には
母から降ってきた星屑が潜んでいる
突然の父の入院で
しばらくぶりに会った母 ....
「水際」
水際、を考える。
ボーダーラインを越したり、引いたり。
波打ち際の刹那。
それは躊躇するもどかしさにも似て。
繰り返し訪れる人生の選択にもなぞらえる。
....
いま、立方体の中で手足を折り曲げている
きっちり蓋を閉めて 一分の隙もないように
それでもはみ出しまう「私」が漏れ出て
側面を綴りながら、ゆっくり滴っていく
シジン、と名乗っているうち ....
走るトリル
軽快な鍵盤の連打を聴くうちに
視界が開けて広大な一本の道が現れる
どこまでも追いかけてくるスケール
トップスピードの旋律に
併走したくて意識を集中させる
Gコードを ....
声高に叫べないから
文字の裏にスルリと隠す
ほとばしる感情をメタファーにゆだねて
苦く噛みしめる思いをほどいて昇華していく
そうやって幾つ言葉を散らしてきたのだろうか
押し黙 ....
上澄みの中を泳いでいた
透明ではなく薄く白濁した温い水の中を
紅い尾鰭をゆらゆら振って
指差すふくみ笑いを払い退けて
腹の下に感じる見えない水底の冷たさに慄きながら
ゆるんだ流れに身をまかせ ....
琥珀色のサウンドトラックが、
頭蓋骨の内側を濡らしていく
すっかり皺が減り、ツルンとした私の大脳皮質
鼓膜までねじこむイヤホンや
タイムラインを流れる電子文字で
刻まれたものが薄れ、 ....
温められた皿が食卓に置かれている
「私を彩って。そして汚して…。」と
上気した白さで語りかけてくる
アンティパストでは物足りないと言いたげな光沢で
ゆるやかなフォルムの輪郭を際立たせている
....
<ブラッディ・マリ―>
ブラッディ・マリーと君の唇の色が同じだから、
どちらに口をつけようか迷っている。
君は何のためらいもなく赤い液体を飲み干す。
重なったその色が乾く前 ....
ずっと寄りかかっていた
揺るぎない背もたれとして安心しきって
あなたが感じている重たさも
慈愛で受け入れて
融かしてくれているのだと思っていた
いま、青に導かれて去ろうとしている
....
「貴女はご自分に酔っていらっしゃるのです」
思いがけない言葉に顔を上げた
彼は静かに私を見つめて煙草に火をつけた
(どういうこと?)
いぶかしげな眼差しの私に彼 ....
駆け上がったスケールの天辺で
頭にティアラを乗せられた途端
3オクターブ下の森へと転がり落ちた
黒鍵に打たれた身体に赤い痣が散る
地面に投げ出された
ティアラの真直ぐで静謐な輝きは
脆い影 ....
終わってしまったはずなのに
密閉した重い蓋の透き間から
かすかにに甘くたちのぼる
胸の底 荒野の地中から
かぐわしい薫りはゆるゆると漂い
真夜中の片すみにうずくまる
そ ....
夜気に退屈をさらけ出すプラタナスが
細い小枝で編んだ投網で上弦の月を引っかけている
葉陰から木漏れ日のように明かりを点滅させて
モールス信号を送る橙色
きっと月の頬には痕が残るほど
....
二重奏が聴こえる
ベースとピアノが語らい合っている
たった今、老年のピアノ教師は華やいだカードを引いてしまったらしい
指先からときめいていく旋律が、ベースのコード転回に絡んでいく
熟年のベーシ ....
ギリギリでバスに乗りこむと
最後部の片すみに
ちょこん とすわっていた
同じ塾の子たちと離れ
まわりを遮断するように
本を開いている
「よかった 帰りが一緒で」
となりにすわると ....
そんなこともあったっけ…
あれは息子と歩んだ道
四谷大塚の教本や模試の受験票が
ジグゾーパズルのように
断片となってパラパラこぼれていく
うまくつながらないのは
終わってしまったも ....
地の底の歌を聴き
暗がりの言葉をまさぐり
ざわめく井戸端をなぎたおし
しどけなく横たわる絹のストールを引き裂き
ヒリヒリと苛立つ昨日を脱ぎ捨て
ゆがんだ唇を真っ赤に塗りつ ....
雑踏のあちこちに
発生する
ポップな電子音
それぞれの手のひらの中
ぽろぽろと
カラフルな想いをつかまえる
まるでゼリービーンズのよう
人工着色料かけた
ねじれた言葉が小窓にな ....
タンゴの旋律に
呼吸を合わせるように
茜色のロウソクの火が
ゆらめいている
凪だった{ルビ水面=みなも}を掻き立て
眠っていた感情に爪を立て
ゆさぶりながら
身体の中を貫 ....
突然放りこまれてしまった
病院の待合室にすわらされ
時計の針が無表情にすすむのを
昼メロのデジャ・ヴのようにながめる
「ママ ごめんね」
かすれた声の一言で
キミは幕開けを ....
「モクテキは何か」
「今 何をユウセンすべきか」
「シテンをどこに置くかが重要だ」
(なんて
ゴシドウくださるおかげで)
くちゃくちゃの紙クズみたいな
オツムの中は
ひ ....
たっぷりとあふれんばかりに湛えて
こぼさないように歩く
ネットの海に棲む詩人が紡いでいる
いつまでも色褪せない
磨きこまれたナイフ
のような綴りに痺れ
少しでも掬い取ろうとつかんでも
手 ....
「別れる日は決めてあるんです」
あどけない顔をして
サラッと彼女は言う
離別の餞まで手に入れた
お人形のような瞳には
背景の妻子の温度は伝わらない
サーモスタットはいつ壊れるかわからないの ....
雑居ビルの中にある小さなライブハウス
彼女が鍵盤に指先を下ろした瞬間
スタインウェイは真っ直ぐに彼女を見つめた
たたみかけるような熱い音の重なり
スタインウェイと彼女の間には
透き間 ....
林檎がふるえている
暗い海の底で
ヒリヒリする電波を発しながら
傷んだ痕をさらしている
林檎たちがふるえている
共鳴しながら
いくつもの透明な触手を
スルスルのばし
痛みをそっ ....
またもや不意打ちに
なげこまれたアクシデント
水面がざわざわ騒ぎだす
バリケードをはりめぐらせたつもりが
いつもほんの一瞬のスキをついて
とびこんでくる
ズン と重く腹にしずん ....
北大路京介さんの渡 ひろこさんおすすめリスト
(123)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
午前三時
-
渡 ひろ ...
自由詩
28*
12-11-14
斬る
-
渡 ひろ ...
自由詩
21*
12-10-10
乙女椿
-
渡 ひろ ...
自由詩
24*
12-7-2
ケ・セラ・セラ
-
渡 ひろ ...
自由詩
38*
12-4-9
水際
-
渡 ひろ ...
携帯写真+ ...
22*
12-1-17
立方体
-
渡 ひろ ...
自由詩
30+*
11-10-17
ジャズ・ピアノ
-
渡 ひろ ...
自由詩
18*
11-9-1
囀り
-
渡 ひろ ...
自由詩
20*
11-5-12
紅い尾鰭
-
渡 ひろ ...
自由詩
19*
11-4-13
Days_of_Wine_and_Roses
-
渡 ひろ ...
自由詩
20*
11-1-19
メインディッシュ
-
渡 ひろ ...
自由詩
19*
10-12-13
カクテルのための三篇
-
渡 ひろ ...
自由詩
14*
10-11-9
GRADUATION
-
渡 ひろ ...
自由詩
18*
10-10-12
恋愛遊戯
-
渡 ひろ ...
自由詩
13*
10-9-27
armoire_caprice
-
渡 ひろ ...
自由詩
24*
10-5-14
センチメンタル
-
渡 ひろ ...
自由詩
17*
08-12-3
フルムーン・ラプソディー
-
渡 ひろ ...
自由詩
17*
08-10-27
Everybody_Loves_Somebody
-
渡 ひろ ...
自由詩
18*
08-9-29
塾帰り
-
渡 ひろ ...
自由詩
26*
08-9-22
リフレイン_ー十二歳の受難ー
-
渡 ひろ ...
自由詩
16*
08-9-3
ストレス・フリー
-
渡 ひろ ...
自由詩
10*
08-8-19
ゼリービーンズ
-
渡 ひろ ...
自由詩
21*
08-8-11
タンゴ・ダンサー
-
渡 ひろ ...
自由詩
23*
08-7-14
ミスキャスト
-
渡 ひろ ...
自由詩
18*
08-7-7
カゴの鳥
-
渡 ひろ ...
自由詩
22*
08-6-23
ネット遊泳
-
渡 ひろ ...
自由詩
23*
08-6-10
ドライフルーツ
-
渡 ひろ ...
自由詩
20*
08-5-26
音の回廊
-
渡 ひろ ...
自由詩
22+*
08-5-19
IT_Apples
-
渡 ひろ ...
自由詩
18*
08-5-8
内面鏡
-
渡 ひろ ...
自由詩
26*
08-5-1
1
2
3
4
5
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