内面鏡
渡 ひろこ

またもや不意打ちに
なげこまれたアクシデント
水面がざわざわ騒ぎだす
バリケードをはりめぐらせたつもりが
いつもほんの一瞬のスキをついて
とびこんでくる



ズン と重く腹にしずんで
あざわらうかのように
平行四辺形の口や
三日月の目が
消化されずに
ゴロゴロころがる


(そう わかっている)
なすがままに呑みこんでしまったのは
凸凹にゆがんでしまった
水面のせい



鏡のように
フラットならば
入射角45度
反射角45度 で
はねかえすのに



(ほら 力をこめて)
背すじをのばし
ピンと引っぱれば
ゆるんだ水面が
まったいらな鏡になる



(これさえかかげていればダイジョウブ)
せいいっぱい背伸びして
両手を高々とあげると


やがて自ら光を放ち
礫をくだいて
だんだん重くなる鏡


支えきれなくて
思わず
反転させてしまったら




湧き出る涙をおさえられない
萎えた横顔を
映し出されてしまった






自由詩 内面鏡 Copyright 渡 ひろこ 2008-05-01 00:04:52
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