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大晦日は
子供部屋のとびらを
あけておかなくてはならなかった
トシガミサマが来るので

トシガミサマ
というものがなにで
どんな姿をしているものなのか
わたしは知らない

ある年の ....

彼女は晴れの日でも傘を差している
雨を異様に怖がっているのだ
酸性雨を浴びると体が跡形もなく溶けてしまう
という話を子供のころに聞いて以来
ずっと信じているらしい
雨が降り出してから差 ....

午後四時
青の上から
橙や赤や紅色が
塗り重ねられてゆくのを見ながら
大急ぎでベランダのシーツを取り込む
あのうつくしい仕事をしている人が
どんな人だかは知らないが
時折
ゆるめ ....

夫があまり鋭く見つめるから
わたしはしだいに削れてゆく
夫と婚姻関係を結んでからのわたしは
もう余程うすっぺらくなったらしい
強く手を握られると
きしゃり と指ごと潰れるから
か ....


凍ったような青空の中を一艘の船が
西から東へ進んでゆくのを見た
おそらく西に沈んだ月を
東の定位置へ戻す船なのだろう
さざなみが白く航跡を描いて
航跡はそのまま雲になり

ま ....
缶切りで鯖味噌缶を開封し背中まるめてわぶわぶ食べる

薄荷飴ひとりで舐めてさびしがる君のことなど想ってみつつ

朝刊の明朝体が目に刺さる夜明けどこかで鳥が鳴いてる

晴れた日の午睡が好 ....

衣替えが近いので
冬服を夏服に入れ替えることにした
天袋の奥にしまいこんでおいた段ボール箱をおろし
夏服を一枚ずつ箪笥の引出しにおさめてゆく
最後に
去年の夏によく着ていた
さくらん ....

からだじゅうの隙間という隙間に
硝子の欠片を
ぎりぎりと押し込まれているような気がして
目が覚めた
いつの季節でも
朝の光は鋭く皮膚を切り裂いてくる
光が当たって切れてしまったところ ....
・国語

休み時間 机の上に伏せられた教科書はみな鳥のかたちで

「死」という字を習い17年経つが何故か未だにうまく書けない


・算数

「算数は嫌いなんだよ数式の突起みてると痒く ....

十月も末になるとパソコンが
鼻をすするような音を立てながら起動するようになる
動作もどことなく鈍くて
悲しいつらい気持ち悪い
という類の言葉は迅速に変換されるのに
楽しい嬉しい気持ちい ....
制服の胸で何かを育ててる紺の靴下はいた娘ら


文庫本読んでる君の眼の中に寄せては返す海が見える日


昼下がりだらりと畳でねむってるわたしだんだん蛇になってく


そこだけが青 ....

どういうわけかうちのごみぶくろだけ
いつもあけられてしまって
中身がまき散らされているの

ある日曜の朝
母が困惑顔で言ったとき
それはきっと妹を狙う肉食獣の仕業に違いない
とわた ....

空が脱脂粉乳のように
薄く万遍なく引き延ばされてしろい日
うすぐらい部屋のなかで洗濯機を回している
色とりどりの洋服は不要になった皮膚のように
集められ濡らされ浮かんだり沈んだりし
渦 ....

エスカレーターに乗れば段を踏み外す
券売機のタッチ・パネルはいくら押しても反応しない
施錠をすれば鍵を無くす
自動ドアには挟まれる
わたしは
文明というものに適応するように
生まれつ ....
金曜ロードショーや
日曜洋画劇場で
「教育にいい」ような映画を
放映する日は
子どもはコーヒー牛乳を飲んで
映画が終るまで
観てもいいことになっていた
たとえば「ローマの休日」や
 ....
昔から
隅に居るような子供だったので
かくれんぼでは
何時も鬼をやらされた
両腕で眼を覆って
だけど
じゅう数えるまでは
どうしても待てない

いち、に、もういいかい

すぐ振り返ってしまう
隠れ ....
陽炎を踏み越え君は手を振って、あちら側へと行ってしまった


家じゅうを掻きまわしつつ探したが、あの日の記憶が見つかりません


路傍にはいつも死骸が落ちている、人かも知れぬ、見ない振りす ....
{ルビ朝寒=あささむ}や子宮の奥へしのびこみ


初秋の路上に晩夏わだかまる


塗りたての青あざやかに秋の空


コンビニで桃缶さがす風邪の人


ほおずきが臓器のようにおち ....

私の本当の名前はスマコというらしいです
だけど父も母も兄弟もみんなスマと呼ぶので
いつの間にか私はスマになってしまいました
ときどき本当の名前について考えます
コというのはどういう漢字な ....

幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥 ....

四角い硝子の内側に
ぶわぶわしたひとびとが
等間隔に産み付けられた卵のように
ぎっちりと隙間なく座っている
人間ではないふりをした顔は
電灯に照らされて
生気がないように青白い

 ....
毎日
夕暮れ時になると
必ずスーパーマーケットへ行ってしまう
何か買うべきものがあるように思うのだ
冷蔵庫の中には
肉も野菜もそろっているのに
心の片隅がすうすうして
それを埋めるものを ....
わたしが無職だったころ
茹で卵と塩むすびだけはんかちに包んで
毎日河原へ出かけていた
それしかやることがなかったのだ
アンケート用紙とかに
無職
と書くのが厭だったので
仕事を探してはい ....

仕事帰りの街灯の下
夜がひたひたと打ち寄せている
その波打ち際に立ってふと
えッと吐き気を催した
げぼッと咳き込んだ口から足元へ落ちたのは
幼いころのお友達だ
あの頃いつも遊んでいた ....

消費者金融の無人審査機の前で
背筋をこころもち曲げている女
どういう顔をしていたらいいか
分からないのだろう
真っ二つに分けた前髪の間からは
かきまぜたコーヒーに入れたミルク
みたい ....
{引用=
【パンばかり食べていると外国人になる】



こぐま印のしょくパン
という名称の食パンが
近所のスーパーで売られていた
近所の小さい食品工場で
おばさんたちが手作りして ....

掃除をすると
部屋の四隅から
無限に白い米粒が出てくる
表面は乾いて
埃にまみれて
まるで
昔わたしが産み落として
そのまま捨てた卵のようだ


遠くに見えるラブ・ホテルの ....


飲みさしのコーヒーの中に
砕けた夏を発見した
掬い上げようとしたら
逃げるみたいに砕けて沈み
底の方で銀色に光っている
人差指でかき回すと
跡形もなく溶けてしまった

 ....
スガイは或る貧しい村の生まれである
彼は五人兄弟の長男で
下は四人とも妹であった

スガイは十歳のときに夢を見た
光り輝く犬が お前は医者になれ と言う夢であった

スガイには両親が居な ....

めざめたら
体中が赤の水玉だらけになっていた
なんだか痒くて仕方がない
そのうえ頭皮にまで広がってるらしく
頭をかきむしらないといられない

体中かきむしっていたら
いつしかわたし ....
プル式さんの吉田ぐんじょうさんおすすめリスト(136)
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