歳神様
吉田ぐんじょう

大晦日は
子供部屋のとびらを
あけておかなくてはならなかった
トシガミサマが来るので

トシガミサマ
というものがなにで
どんな姿をしているものなのか
わたしは知らない

ある年の夜中だった
真っ暗な子供部屋のなかで
眼だけあけて息をしているとき
何者かが裾を引きずって部屋に入ってき
くちびるにそっと触れるのを感じた

翌朝
歯磨きをしながら
わたしたち兄弟は顔を見合わせ
眼を丸くした
確かに昨日まで
欠けたり蝕まれたりしていたはずの
各々の歯
そのいっぽんいっぽんが全て
夜のうちに
新しい歯に替わっていたのだった




自由詩 歳神様 Copyright 吉田ぐんじょう 2013-01-03 23:26:34
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