お前の名前は何と言ったらう?

この期に及んで馬鹿な俺は
来世でお前に逢へるだらうかと
やくたいも無いことばかり気にしてゐる

ああ美しかったお前

お前ほど
深く愛した女は
つひ ....
夜明けの手を絶ち
かたちなきものを奪い
罪を重ねる


やがてうごめくものたち
うごめくものたち
偽りの鳥たち


限られた光の下の影ふみ
遠くゆうるりと
震える獣の星 ....
こんぺいとう 目を閉じ頬に手 しゃりしゃりしゃり
たったひとつで 幸せの姫

ケチャップで うさぎが先っ! ぞぉーが先っ!
コラコラ押すなよ ほーらこんなになっちゃった

{ルビ祖父祖母= ....
 *

朝起きて色を塗る
テーブルの上にある
野菜ジュースの中を
遠くまで行くことは
とても難しい

 *

虹を壊し
虹に壊されながら
走る子どもたちの足音が
回覧板でまわ ....
レインコートを身にまとい
土砂降りの朝をゆく
雨の
一粒一粒は
私の中に入ろうとして

もがく
流れる
つたって落ちる

あなたは
ていねいになぞってくれた
私の中に入ろうとし ....
僕は、女が欲しい
女のかたちではなく、女というものだ
できれば女のかたちに入っていると
うれしいが
それが別のかたちでもかまわない

君がもしも男だとしたら
僕は女というものになりた ....
ぼくは詩を書きたい

歌は灯火 詩は心
自然に生あり 人に命あり

今日もまた

朝の散歩をしていると
あじさいに出会いました

今にも雨が降りそうな
暗い空の中
輝くものは鈍 ....
眠りこけていた君を
ふとみると
蛹になっていた

ジャコウアゲハの蛹に似て肌色の
妙になまめかしい蛹だ

蛹の下部の
やがて尾になるであろう部分だけが
ぴぴんと動くが
だからといっ ....
 勢いこんで始めてしまった「近代詩再読」シリーズ。前回は長い詩暦を誇る草野心平をとり上げたが、今回はいきなり立原道造である。草野心平は八十過ぎまで生きていた人だが、立原道造はわずか二十四歳で亡くなって .... 新しいリズムはとりあえず不要です、
ただ一つのリズムを繰り返してください。
確実に、丁寧に、譜面を追ってゆけば、
高まりゆく陶酔がそこにあります。

繰り返し繰り返し繰り返すリズムは ....
湿気のあがる
風の強さに 
飛ばされそうな肩
足を止めて

古いままの 山道にも
じゃりが くだかれてて

こぼれていかないように
角と角の淵に
つま先 入り込ませ

明るい  ....
ぼくは詩を書きたい

今の季節を感じられるのは
今の自分があるからである

今日もまた

朝の散歩をしていると
夏に出会いました
 
もう夏
長袖はいらない

歩いているだけ ....
ぼくは詩を書きたい

早いか遅いかは
その時点の問題であり
大切なのは
その時点で何を創り出したかである

今日もまた

朝の散歩をしていると
草船に出会いました
 
小川に架 ....
とてもシンプルな音を立てて
きみは生きている


噎せ返る緑の中を駆けるときも
たましいの全てを委ねて眠るときも
まるでありのままの世界を描くように


混じりけのないの声で笑って
 ....
夕日の落下地点を追いかけていると
白い花を踏みつぶしそうになる
地面はいつも
ほとけの顔をしている

花のいのちを買い
鳥のいのちを買い
魚のいのちを買い
そののち僕は買われていく
 ....
夜の白が海へ飛び去り
やがて来る雨が冷たく香る
半ば空へと持ち上げられながら
ゆらめくように船は消えてゆく
長い時間に削りとられた
狭い砂浜へと夜は帰る



土 ....
カーテンを少し開けたんだ
今日が晴れなのか、それとも雨なのか
ただそれが気になっただけでして
そのひとつの動作に、はは、いちいち暇だねあなたがたも
とりあえずたんすから事実を取り出して
靴下 ....
ひな鳥の声が
どこまでもまっすぐにのびてゆく
こだまも 霧も
親鳥も知らずに
崖の上の森から
次々と旅立ってゆく



淡く灰色に点滅しながら
世界は世界から離れてゆく ....
きみの睡眠の中を走る
列車の軋む音を聞くと
世界が本当に
平面であることがわかる
ぼくらは座席に並んで腰をかけ
お手製の弁当を食べる
屋根の瓦が一枚落ちかかっているのだ、と
きみはさっき ....
ぼくは詩を書きたい

たとえ自分を見失ったとしても
進むべき道は必ず存在する

今日もまた

朝の散歩をしていると
静寂に出会いました
 
林の中
光をも遮り
薄暗いその空間は ....
風向きは悪くないから
こんな酷い雨でも
窓を開けていられる

国道に何台かの車が
時折行き交っている
その音さえ掻き消すほど

雨足が強くなるほど
1DKの部屋に響くのは
天窓を叩 ....
足りないんだ

なにか

必要なもの?

よくわからない

足りないことはわかってる
だから 内緒で探してみる
だから ついつい拾ってみる
時にそれは枯葉だったり
時にそれはカ ....
朝早く街に出よう
朝日を食べに出かけよう
凍てついた空気を割って出ていくと
背の高い時間がみしみしと音をたてて流れている

きみに見えるだろうか
力づよい足
節くれ立った手
何てったっ ....
カーテンの隙間から
ほほに落ちた
朝の雫

やっぱり明けない夜はなかった
無理やり今日をやり過ごせば
また夜は来るけれど
ねむるとよりそう
あかりのようなことば
浮かびあがるからだ
しなうのは約束を守ったしるし

あのとき
コスモスの園をよこぎったのは
まっしろい服を着た
うたの体ではなかったか

た ....
わたしがナミダチョキンを始めたのはいくつの時だったか。

納得がゆかぬことで父に叱られ泣いて、泣いた事でまた叱られもっと泣いて
その泣き方が悪いとまた叱られナミダ涙の悪循環。
いつしか泣いたら ....
{ルビ故郷=ふるさと}に近づく列車
向かいに座った女性は
首のすわりかけた赤子を
前向きに抱えていた

一瞬、驚いたあと
すぐにうつむく仕草は
内腿の{ルビ痣=あざ}を
男子生徒にから ....
一人で行った交通科学館からの帰り道
環状線で小学生の僕は
財布を落とした

鶴橋駅の連絡改札は
近鉄線の切符が必要で
連絡切符を買っていなかった僕は
家に帰れない

途方に暮れる僕に ....
眠いんだけどなんとか親指を動かして
きみへのメールはとりとめがない
他愛のない
ささやかで
純情で
くすぐったい
支離滅裂な
愛情のつぶつぶ
電波にのって
夜の闇をとぶ
千の書物に埋もれたみずたまりが閃光している。
赤ぶどう酒のかおりが溢れるほど、注がれている、
豊穣なページの眼差しは、街路樹の空虚な、
灰色の輪郭を、水色の気泡の空に浮き上がらせてゆく。
その ....
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