ときどき風も停滞して、さ
いかにもなんか考えてるふうに
....
50億年前
宇宙が出来
45億年前
生物が誕生
ポンと叩かれ
ふっと生きはじめ
夢中で生きて
死んでも生きる為
生殖した
いつも疑っていた
誰がポンと叩いたか
それは解か ....
その本を手に取るたびに
同じページばかり開いていたから
今では机に置くだけで
パラパラと そこへたどり着く
私の心の傾きが
そのまま しおりになっている
午前二時
街もとっくに寝静まり
街の灯りも全て消え
まるでこの世に
自分しかいないような
恐怖
窓を開け
月を眺める
この月を今
どこかで見ているあなたと
いつか出会ってしまう ....
海
闇の海
闇の海のなやみ
闇の海のなやみの意味
いみ
意味のなやみ
あらゆる意味のなやみをのみこみ
海の波にたゆとう色好み
いろごのみの酒呑み
酒呑みのねたみの厭味
....
声を出してはいけない、喉が貼り付きそうになるから
何本もの針が、くまなく全身を突き刺しているかのようだ
指先が麻痺してきた、足を棒にするという諺は
この国にこそ、ピッタリなのかもしれない
ソリ ....
この線なあに?
それはでんわ線だよ
ふうん、
でんわっていうと、あの、ニンゲンが「もしもし」ってやってるやつ?
そうそう、
ニンゲンが描いたんだよ、この線
やってみようか
....
白黒はっきりつけろよ、
ウェッデルアザラシに急に言われた。
こまったように首を捻り
黒いせなかと白いおなかを見比べた。
つめたい床に寝そべった。
目を閉じてみて、それから起き上がった。
そ ....
火星の人類学者は、毎日毎日「お断り」ばかり繰り返している。「珈琲に砂糖は?」「いりません、ブラックです」「クリームは?」「いりません、ブラックだと言ったでしょ」というたぐいの「お断り」だ。甘いのが嫌い ....
烙印を押してくれ
この世でもっとも繊細な風力計にも
触知されない樹木の呼気を ....
言葉の王国には
言葉の王様が住んでいて
ある時は
言葉の災いや悲しみに弄ばれ
時には言葉の民や王妃が
言葉の命を落とし
またある時は
言葉の試練が押しよせ
みんなで言葉の手を取りあ ....
夕焼けは赤いばかりではない
夕焼けは時々青く見える
悲しい夕焼け 青い夕焼け
はっきりとでなく ぼんやりと
はるか遠い夢は輝く
悲しい夕焼け 冷たく輝く
流れた涙は過去へと消えていく
....
暗がりのなか
細い光に照らされて
一匹の蛇が泣いていた
目を閉じたまま
わずかに汚れた白色に
かがやきながら泣いていた
蛇から少し離れた場所に
ひとりの少女 ....
古い写真
同じ年の子供たちが
いっせいにポーズをとって
こちらを見ている
覗き返す
私と
唯一
目が合わなかった
十歳の私
偏屈な子供
いつもみんなが
ガラスの向こうにいるよ ....
ねむれ。
胎児のように、ねむるがよい。
せいけつなみなれた風景の、
すこしばかりの変化など気にせずに。
あわれなものだ。
マルチメディヤとかいうものに
おかされてゆく母胎の中では、 ....
ワイパーを身体につけたんだよ
ネジでさ、おへその穴に固定してね
勤続十五周年だもの
いろいろな人が去っていったもの
自分へのせめてものご褒美だもの
憧れていたんだ、ワイパーのある ....
五月に入ると
死んだ詩人のことを思いだす
いつもへんに悪ぶっていたな
「ユリシーズはどこにもいないね」
そう言って
はなやかに降りだした雨の街路に
出て行ったきり
忘れたのか 置いていっ ....
全然違ってしまったときには
炭酸のような音楽を
太陽が間近の窓で
メッセージを少しだけ受信する先の
光って白くなってしまって
見えないのは
ただの 気のせいさ
....
雨季のタレーがなみだつ。かなしみをたたえて、
すぎさってゆく時間をつらぬいて、
浮世のゆれつづける、虚実のいろがみえる。
とおい、タレーのかなたの国へ、ぼくはかえる。
すぐそこにきてい ....
思いがけず、出逢った頃
わたしたちはいっぱいしゃべったね
お互いの知りたい部分を埋めたね
時間が足りないと思ったの
自分が何故生まれてきたか分かったから
これからもよ ....
犀川の河原
しゃがみ込んだらあ
対岸の
浴衣色が滲んでるげん
うちの気持ち
いっくら解いても
解いても
頑固に
縺れていくじい
いじっかしい
こんな
うちの気持 ....
生臭い肉体を焼きすて
骨と ....
ひとは背中の遠い国の
風のおだまき ほどいてくらす
だから誰も変わる自分を
知ることがないのは
腐りやすい肉体をもったぼくらの幸福
空の一滴救い上げ
海に返してみたいのだ
昔海には空が住み
お互いを敬っていたのだと
角の家の老人が話しているのを聞いた
今ではもう
空は太陽に引き寄せられてしまっているし
海は地 ....
天使のびいだまが
空から{ルビ宇宙=そら}へおっこちて
浮かんで 止まって
まわって とばされ
青い地球になりました
青い地球になりました
記憶の中の森で
一羽の鳥が巣立ちする
遙かな大陸に向かって
記憶の中の街で
柔らかい雨が舗道を濡らす
恋人たちを祝福して
あの火曜日の朝
私たちの街は一瞬で崩れ去った
あの日か ....
1
ある男がいた。彼の名は大山昭雄(おおやま あきお)。有名人であり、その独特の職業で成功。莫大な財を成し、人々の尊敬の念を集めた男。
彼は、占い師だった。
彼が脚光を浴び始めたのは、と ....
窓枠の向こう側に海溝が寝転がっている
紺碧が逆立ちした午後
ぼくは物語と煙草を携えて
ゆらり生える象鼻の先に
時をぶらさげた
路地裏の化石にチャイを注ぎ
....
火を固めて作った花びら
一つ一つ
悪びれずに
真っ赤に燃えていればいいはず
蝶も蜂も
独り占めに
褪せていく定めのものたち
それはそれ
季節がお前を嫌 ....
起きたら
三島由紀夫だった
下唇を噛んだら血が出て
三島由紀夫の血はこんな味なのか とか
白くて小さめの歯は けっこう硬いのだ とか
会ったことないのに懐かしむ
せっかくだから ....
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