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日々の営み
食べかけのマンゴー
砂のようにどこまでも
ずれていく少年
手段を知っている僕たちは
まだ本当の悲しみを知らない
日々の営み
食べかけのマンゴー
それが癖であるかのように微笑 ....
雪の真似事が得意だった叔父は
危ない、と言われていたのに
ある日原っぱのようなところで
なくなってしまった
話をする様子がいつも苦しそうだった
幼い私を見ても
たかいたかい、しか
 ....
かつて見送られるもののために
窓はあった
そしていま窓は
残されたもののためにある
窓を開け放ち
潮の匂いのする風を迎え入れる
誰かが忘れていった
化石の海が
ひとつ置かれている

 ....
階段は増え続けた
僕らの知っているところや
知らないところで
やがてこの街は
階段で埋め尽くされてしまう
のではないかと思う
そうしたら君と
階段の無い街に行って
日にあたりながら ....
給湯器のように優しい
考えちゃいけない
考えちゃいけないから
床のタイルを交互に黒く塗ってる
隣に住んでるおじさんの泣く声が
ここまで聞こえてくる

(2006.6.1)
屋根が卵を産んでいる
やがて孵化した屋根は
その下に家をつくる
中では人が
また息を始める

山木の斉藤さんと
いとこにあたる人が訪ねてきたので
午後からわたしたちは
外に出て遊 ....
加瀬さんの実家にイチゴ狩りに行った
シーズンが過ぎると職場の同僚とその家族を呼び
完熟して出荷できなくなったイチゴを取らせてくれるのだ
妻も娘も毎年その行事を楽しみにしている
昨年も一 ....
夜明けの街を
一台のインクジェットプリンターが
走り抜けていく

どこからか受信した文字のようなものを
ありったけの紙に印刷しながら
おそらくそれは全力で
疾走していく

雨上がりな ....
 *

朝起きて色を塗る
テーブルの上にある
野菜ジュースの中を
遠くまで行くことは
とても難しい

 *

虹を壊し
虹に壊されながら
走る子どもたちの足音が
回覧板でまわ ....
きみの睡眠の中を走る
列車の軋む音を聞くと
世界が本当に
平面であることがわかる
ぼくらは座席に並んで腰をかけ
お手製の弁当を食べる
屋根の瓦が一枚落ちかかっているのだ、と
きみはさっき ....
間違っている気がして
冷蔵庫の乳製品を並べることにする
自分に似ているものは右側に
似ていないものは左側に
それ以外のものは
バスタブに順序よく沈めていく
ひとでなし!
口のよう ....
せっかくお風呂に入ったのに
自分のからだがすっかり無くなっていた
どこかに忘れてきたにちがいないけど
いくら思い出そうとしても
ここにいた時には確かにあった
という自信がもてない
 ....
たべかけのくっきいに
ゆうひのはがた
これは いったいぜんたい
こんせいきさいだいの なぞですぞ
そういった はかせのくちもとから
うつくしいゆうひが こぼれてる

*

わ ....
四つの脚をたて
温度の低い床に
椅子が停泊している
いつまでも出航しないのは
その方法を忘れてしまったから
ではなく
航行すべき海が
椅子の内に広がっているからだ
水が溢れ出さ ....
河口のある町に産まれて
背中が痒いことも
何度かあった
自分に似ているものがあれば
それだけで少し嬉しい

昔の知り合いに
夢の中で再開した
春、と呼ばれて
会話をすることなく
 ....
傘にたくさんの
好きな模様を描いて
それからその後
他に無い、の

こんな日は
幸せに
誰ひとり
死ななくていい

美味しい珈琲だ、ね
これはきっと
朝から何も
降りてな ....
(夏)

波音の届きそうにない
部屋でただ
いき過ぎるのを待ってる
テレビにはめ込まれた
冷たいガラスの匂いだけが
わたしに似ている



(秋)

言葉になり損ねて ....
キッチンでは妻の脱皮が始まっていた
手伝われるのを拒むように
かつて僕が愛撫したことのある皮膚を
ゆっくりと丁寧に脱いでいく
新しい箇所は少し湿って
しわしわしているけれど
やがて ....
飲むヨーグルトを飲んだ
飲まないヨーグルトは飲まなかった
食べるヨーグルトは食べた
食べないヨーグルトは
食べなかった

幸せなヨーグルトは
幸せに満ち溢れていた
虹のかかるヨ ....
男は速度を
なくした
それは
止まる
ことだった
男は欲した
口に言葉
手に文字
そして
生きた
自治区
と呼ばれる
区域の
辺境の村で
男が再び速度を
手に入れたと ....
大きな口を開けたワニが
天気の真似をして
すっかり晴れわたってる

魚の数匹は遠ざかり続け
それでもまだ
誰の指にも泳ぎつかない

沢山の羊を乱雑に並べて
さて、どれが正解で ....
君が煮びたしをつくっている
キッチンは包まれている
昨日僕が割った皿は
既に片付けられてる
君の右手と
黒子のある左手によって

どこかから漏れてきた西日が
ステンレスに反射し ....
スーパーのレジで
おつりのコインを数枚受け取ると
「わあ、お金が増えたね」
と娘は目を輝かせる

自動ドアから出るときも
「あのおばさん、きっと親切な人なんだよ」
ふわふわと歌う
 ....
夕暮れ
警察署の壁面が赤く染まる頃
帰宅途中の私はその前に来るといつも
自白する

通勤鞄の底のそこでは
見慣れぬ証拠物件が小さく笑っているが
立番の若い巡査はそ知らぬ顔で
手 ....
濁った色の運河を
僕の手が流れていく
腫れ物に触るように
どこか遠慮がちな様子は
やはり僕の手らしかった

妻を抱き
娘を抱き
椅子の背もたれを掴み
いろいろな手続きをしてき ....
裏庭から
雨音に紛れて
犬が落下していく
音が聞こえる
どこまで落ちていくのか
犬にも僕にもわからないまま
犬は落下し続け
僕は音を聞き続けている
少し傲慢に生きてきて
思い ....
右目がポケットに落ちた
左目を瞑るだけで
見なくて済むものは見えなくなったけれど
溜まっていたゴミや砂が入って
右目からは涙が止まらない
あの人のズボン泣いてるみたいだね
と言う男 ....
風が吹いていた
風のように母は声になった
声のように鳥は空を飛んで
鳥のように私は空腹だった
空腹のように
何も欲するつもりはなかったのに
母についていくつか
願い事をした

 ....
「ショクヨウガエル」という物悲しい名前の蛙がいる
まるで人間に食べられるためだけに生まれてきたかのような名前の
体長十五〜二十cmにもなる巨大な蛙

正式な和名は「ウシガエル」
食用とし ....
一頭の牛が
ブランコを押してくれた
こんなに高くは初めてで
空だけがきれいに見えたけれど
必ず元の場所に戻って
どこにも進むことはなかった
明日食べられるのだ、と
牛は言った
 ....
ルナクさんのたもつさんおすすめリスト(288)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
微笑- たもつ未詩・独白9*06-6-9
たかいたかい- たもつ未詩・独白6*06-6-6
潮風- たもつ未詩・独白17*06-6-4
ひだまり- たもつ未詩・独白706-6-3
底で- たもつ未詩・独白4*06-6-2
屋根- たもつ自由詩606-5-30
僕たちは声を押し殺して手をつなぐ- たもつ自由詩14*06-5-28
夜明けの疾走- たもつ自由詩1006-5-27
朝起きて無題- たもつ自由詩1306-5-23
寝返り- たもつ自由詩2106-5-19
- たもつ自由詩1506-5-7
からだ- たもつ自由詩9*06-5-5
ファザー・グース(3)- たもつ自由詩19*06-4-23
その、平穏- たもつ自由詩2306-4-18
春を見に行く- たもつ自由詩1206-4-14
ひねもす- たもつ自由詩906-4-12
季節- たもつ自由詩1506-4-2
味噌汁- たもつ自由詩606-3-24
飲むヨーグルト- たもつ自由詩906-3-17
はしっこの村- たもつ自由詩806-3-16
ルーツ- たもつ自由詩16*06-3-7
煮びたし- たもつ自由詩906-3-5
おつり- たもつ自由詩54+06-2-26
- たもつ自由詩606-2-24
とげ- たもつ自由詩806-2-20
落下- たもつ自由詩1206-2-18
水分- たもつ自由詩1006-2-15
風のように- たもつ自由詩1006-2-14
ショクヨウガエル- たもつ自由詩906-2-13
明後日- たもつ自由詩22*06-2-6

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