煮びたし
たもつ



君が煮びたしをつくっている
キッチンは包まれている
昨日僕が割った皿は
既に片付けられてる
君の右手と
黒子のある左手によって

どこかから漏れてきた西日が
ステンレスに反射している
後姿しかない人のように
君は煮びたしをつくり続け
煮びたしは鍋の中で
少しずつ煮びたされている

やがて夕食の時間になれば
僕らはいつものように
幸せについて語らなければならない
わずかばかりの気恥ずかしさと
罪の意識を
口元に浮かべながら

君の指先に貼られた絆創膏から
血が滲んで
僕らの日々、その一部が
煮びたしの匂いや音と
混ざり合ってる




自由詩 煮びたし Copyright たもつ 2006-03-05 20:24:41
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