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{ルビ微睡=まどろ}んで、乗り過ごすうちに
春まで来てしまった

0番線から広がる風景は
いつかの記憶と曖昧につながっていて
舞いあがる風のぬくもりが
薄紅の小路や
石造りの橋や
覗き ....
鳥は
自由に羽ばたく姿こそ美しい
私如きが
その軽やかな{ルビ踝=くるぶし}に絡みついて
ともに堕ちてはならない
いつか
大きな空になりたい
そんな、さよなら


相反する不確かな ....
朝起きるとボスだった
眉間に深い皺が刻まれていたが
特に不満があるわけではなかった

煙草をつまんで深々と吸い込む
ブラインドはない
のでカーテンから覗く
何ということのない休日の朝が広 ....
夕焼けは決して終わらない
さっき、オレンジのストローで
おもいっきり膨らませておいたから
輝く小石たちのいるポケットの輪郭
指先の土は、もう、乾いた


工事現場の重機の群れは
拳を打 ....
八角形の小箱は
ブルーウォーターで満ちていて
覗き込めば
ぶちの鞠が回転している

それは
滑らかな哺乳類の群れだ
あるいは
みるく色の
貝類の
ひとかたまりに
溶けて


 ....
あいかわらず武士だった
参代する日でもなかろうに
女房殿に渡された温かい包みを抱えて
坂を下ってゆく

*

何やら人垣ができていて
たいそうな{ルビ賑=にぎ}わいである
隣の女房が ....
西日のうちよせる窓辺に
幼い貝がひとつ
もぞもぞと動く白い靴下を
つん、とつけば、また{ルビ蹲=うずくま}る

どうしてこの子は
こんなに静かな遊びを
思いついてしまったのだろう
座り ....
朝起きると武士だった
(拙者、もうしばらく眠るでござる
と、布団を被ったが
あっさり古女房に引き剥がされた
長葱を{ルビ購=あがな}ってこいという
女房殿はいつからあんなに強くなったのだろう ....
幼子が堅く握った手を
僅かにゆるませるように
朝の光を浴びた梅の木が
真白い花を孵化させている

豪華さはないが
身の丈に咲く、その慎ましき花に
頬を寄せれば
まだ淡い春が香る

 ....
透明と漆黒の間
無限階調の青い温度を
滑らかにはばたく
マンタ
重力は知らない
裏返り、途絶えてゆく
浮力の哀しみだけを
白い腹に秘めて

辿りついた系譜は
争い合う知識ではなく
 ....
東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉で{ルビ犇=ひしめ}いていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
{ルビ歪=ゆが}んだ顔を映す

冷たい光の反射に
じっと身 ....
えのぐのあじがする
と、遠ざけられた皿には
白いドレッシングのかかった
シーザーサラダが
盛られたかたちのままだ
野菜も食べないと大きくなれません
と云われて
娘はふくれている


 ....
具合はどう?
と問い掛けられても
よくわからないのだ
何か喉の奥につかえているようでもあり
ただ疲れているだけのようでもあり
それでいて急に、胸のあたりが苦しくなったりする

こうして
 ....
街をみていた
貴方の街を

白々と染まる朝の底から
浮上する軒先の陰影
心配するなと云ってくれた
おまえの街だと

しずかな春の空を斜めに切った直線
落ちてきた羽ばたきの伸ばす
細 ....
幹に巻きつけられた
青白い麦球は
今年も
明滅を繰り返す
流れる光は
高い空に昇って
どこへ

すれ違う流れに
爪先を探す男は
今年も
うずくまる
染みだらけのジャンバーを
 ....
山になった洗濯ものの回りで
君は
春のような
スキップを踏む
  {引用=おうちを買わなければ、よかったね
だって、お金持ちだったんでしょ?
たた、たたん}
ちいさな袖をそろえて
重 ....
新幹線の方が楽だろうに
母はいつも
鈍行列車にゆられてやってくる
孫娘の成長のたびに
少ないけど
と、袋を差し出す指先は
黄色く乾いている

風邪ひいてないか、とか
おまえは季節の変 ....
両手のひらに
こっそり書いた「冷」の文字
僕は忘れん坊だから

冷え性対策の頁を見てたから
布団からはみだした足先が
とっても冷たかったから
今日は帰りに
ちょっと入りづらいあの店で
 ....
遠ざかる二段ロケットの軌道
静寂に浮かぶ銀のカプセル
どちらが動いているのか、は
もはや問題ではない
ただ、離れてゆく
    {引用=
(お腹空いたかい、ラナ
(大丈夫、ピザを持ってき ....
見渡せば、{ルビ紅=あか}のパノラマ
岩肌の背を辿り
風紋の営みに耳を澄ませば
褐色の陰影、陽炎の揺らぎ

彷徨えば、蒼のカルデラ
火照った靴を脱ぎ
静寂の層流に{ルビ踝=くるぶし}を垂 ....
亀、知りませんか?
背中に「さ、の」って書いてあります
それは、自分自身です
こんくらいのやつです
かたちは日々変わるんです
生きものですから

お腹を押すと泣きます
水曜日の午後だけ ....
  冷たい雨が染み込んでゆく{ルビ苔=こけ}の
  やさしい沈黙に
  身体を重ねたくなる夜は

  窓ガラスに青いセロファンを貼りつけて
  閉じ込めた気泡の膨らみを
  指先でなぞって ....
まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる

こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
なだらかな野辺に{ルビ錨=いかり}をおろせば
緑色の秋がふりそそぐ

やわらかな雲の群れを辿れば
まぶたは風にまどろむ

じっとしていなければ
追いつけない季節

木漏れ日を新呼吸し ....
まだしっかり帽子をかぶった黄緑の
君の大切なたからもの
やわらかい手が両方ふくらんで
哀しそうに助けを求める
ひとつも手放したくないんだね

小さなポッケを教えると
手の隙間から零れない ....
水色のキャンパス
白い花びら、ふたつ、みつ
風の描いたような君の唄
軽く手をふるハロー、ハロー


 鉛筆画の微笑みは
 鉛色の雫でできてるの
 はじめから
 うまくのれてなかった、 ....
いつだって遥か遠くを
見つめていた、正太
本当はそんな名前じゃないのに
誰もがそう呼んでいた

*

学校へ行く途中
平然と菓子パンを買った、正太
朝飯なのだと、悪びれず
無造作に ....
  あなた、ルリツグミのヒナと
  お昼寝をしたことはあって?



風を確かめるように浮かべた
少女の白いあご、のライン
穏やかな微笑みに
たたまれてゆく{ルビ睫=まつげ}


 ....
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
 (なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して

僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
 ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた

神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
ルナクさんの佐野権太さんおすすめリスト(74)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
春のホログラム- 佐野権太自由詩34*07-2-28
鳥の唄- 佐野権太自由詩17*07-2-23
ボスのブルース- 佐野権太自由詩15*07-2-20
夕焼けの小瓶- 佐野権太自由詩18+*07-2-19
レモン海- 佐野権太自由詩26*07-2-16
武士と猫- 佐野権太自由詩21*07-2-9
貝あそび- 佐野権太自由詩29*07-2-7
武士のつかい- 佐野権太自由詩58*07-2-6
春の歩み- 佐野権太自由詩27*07-2-5
ホバリング- 佐野権太自由詩19*07-2-2
東京パーラー- 佐野権太自由詩31*07-1-19
ファミリーレストラン- 佐野権太自由詩36*07-1-15
寝正月- 佐野権太自由詩21*07-1-11
ふるえる梢- 佐野権太自由詩21*06-12-23
いつくしみ深く- 佐野権太自由詩18*06-11-30
はだかんぼう- 佐野権太自由詩45*06-11-28
おつり- 佐野権太自由詩28*06-11-17
冷え性対策- 佐野権太自由詩18*06-11-1
衛星クーピー- 佐野権太自由詩19*06-10-27
心象探訪- 佐野権太自由詩19*06-10-25
さ、の- 佐野権太自由詩15*06-10-20
そして、いつか猫になる- 佐野権太自由詩18*06-10-6
クジラになった少年- 佐野権太自由詩43*06-10-3
添い寝する秋- 佐野権太携帯写真+ ...16*06-9-25
ドングリ拾い- 佐野権太自由詩28*06-9-22
秋空のシルエット- 佐野権太自由詩20*06-9-12
俺たちの風、syota- 佐野権太自由詩21*06-9-5
回遊する少女2_(ルリツグミ)- 佐野権太自由詩24*06-9-1
檸檬色の夏- 佐野権太自由詩39*06-8-24
支え続けるもの- 佐野権太自由詩44*06-8-9

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