空に、鳥の滑空していく
きん、とした音が響いている
いつも何かが足りない
青いだけの視界を補うように
手のひらはいつも、上を向いている
いつも着地する景色には
逃げ出してしまう色が ....
ユナイデット93と名乗る映画を観た。
徹夜明けで観たので、前半寝かけた。椅子がリクライニングシートだったので余計危なかった。
後半は、凄すぎて体の前で手を組んでた。祈るみたいに ....
一.
戦争を俺は知らないんだと はじめて思い知ったのは
キプロス島に ある朝突然逃げ帰った妻が いつか話した
占領の話 地下室の話 息を殺して
あいつが真似た マシンガンの ....
一.
俺の知らない赤で
雲が光の中で
死んでゆくんだ
今も
おまえの知らない青で
波が砂の上で
壊れてゆくよ
ほら
見ろよ
カモメの親子が今
俺 ....
ビンが 薄いレモン色に 枯れていく
花というものを 残せない
屈折の返る 生真面目な黙殺は
水辺リに 傾けられて寄り添った
青雲への 憧れに空域をなくす
満たされぬ受け口の 外に ....
いつまでも気付かなければ良かった
と思うことがある
熱帯夜の寝苦しさに目をふと覚ますと
わたしの知らないおとこのひとが
わたしの横で寝ていて
二つ並んだお揃いの枕と
ふたりで寝るには狭いベ ....
夏は容易く永遠を擬態するので
僕らの意識の最も敏感な部位は
いつでも眩暈に侵されたままだ
誰もが
しあわせのにおいをさがしている
目隠しの鬼は
手の鳴る方へと
ほんのかすかな予感が
僕らを誘う
どこかにかくれるしあわせの
その端をつかめるように
おぼつかない ....
彼方からの気流にのって 届いたそれを
あのひとは
夏だと言った
わたしにとって
わたしの知らない、どこか
遠い場所で あのひとが
笑ったり、泣いたり、しているということは
あ ....
ずっと遠くの方を、
水平線が見たかったのに
空との区切りがよくわからない
から
少しだけ背中を丸めた
薄い水色のワンピースから
覗く白い腕が
夏には似合わない
から
ただ黙っ ....
口をつぐむ
ちゃんと話を聞いてくれる人いないから
あっちから
こっちから
のびる糸
引っぱってより合せ
不恰好な糸つむぐ
近寄らないから
....
?.
ああ
オルテンシアがほんと楽しそうだ
あんなの日本語だとね、てんこ盛りって言うんだよ。
ひひ、てんこ盛りだって、おかしいね。
まあ、要するに、昨日の俺たちのパスタだ。あれが ....
水が
光のように満ちる
その上に折鶴を浮かべ
はるかなその波紋を数える
海を見たことがなかった
見え隠れする光
あれがそうだ、と無骨な指で示された海は
たいして青くなかった、が
軽トラックが、ギシギシとカーブを曲がるたび
輝きを探して、車窓にしがみついた
....
いつまでもそばに置けない
縫いぐるみは
いつか別れなければ
ならないから
わたしの見ていない場所で
燃してください
お願い
捨てないで
燃してください
お別れは
跡形もなく
#31
言葉は
無力ではない
あなたの
言葉が
無力なのだ
#32
今日は
どこにも行く気がしないし
なんにもしたくないから
携帯電話の電 ....
ついに、越えていかれるのですね。
拝啓、海沿い、立ち並ぶ風車に。ごろんごろんと音をかき混ぜる大きな手に、何でもないことを、挨拶のように振舞うあなたに。ここを、越えていかれるのですね。知ってい ....
明かりのない部屋で
画面の光に群がる私
また生まれるの
そしてまた 日の出前に私は死ぬの
太陽に喰われるの
私 瞼の裏 なんだか妙にスカスカするの
だから仕返しに
喰ってやるの 奴の ....
暗い人をみたら
いつも尊敬しなさい。
父さんはいつもそう言っていた。
南の島へライオンを助けにいったきり、
かえってこなかった父さん。
明るい人がぼくは好きだ。
明るい人はなんてすてき ....
無を抱いて生きる
私の
存在が無で
誰かと笑いあったり
じゃれあったり
先輩のお通夜に行く
病床の彼は
いつも怖がっていた
功とげ財を成し
誰もがうらやむ位置にあってもそれで ....
抱かれるのならホテルがいい。
貴方の部屋は厭。
ああ、このベットでこの人は、今まで私じゃない人を抱いてきたんだな。
と、不意に襲う切なさが貴方の元から私を奪うから。
軋む音は飲み込んだ泣き声の ....
本当の 宇宙は
すぐ 身近なところに
いつも ある
ぼくは生れた時から、
夜にまぎれる術、を、
知っているの。
多くの人たちが、
何事もなかったかの
ように、通り過ぎて
行く。夜道を、
たった一人で歩いて
行けるの。
たくさんの恋 ....
慣れない街では風がうねってて
目まぐるしく僕を迷わせる
どれほど背中を押されようとも
ブレーキを踏んだままなので
なんの意味もなかったんだ
傷だらけの中古車は
駐車場でたそがれて
夕 ....
男が
美しいものだという事を 知った
骨ばった手も
厚い胸も
大きな足も
上着のポケットに突っこんだ手
そのときの肩から背中が
恋人を待って人混みの中を探す視線
そのときの首すじが ....
雨が病んだ午後
嘘を吐いてひとり外に出て
散らばる足音と車輪に跪く
ひとり
熱に浮かされる様に
ひとり
裸足の儘でペダルを踏むんだ
信号無視した無彩色の車が
ハンドルを掠めるひ ....
「ぼくたちは
一言のことばを交わすたびに
一つずつ忘れていって
ゆうべ見た夢も
ゆうべ交わしたさいごの愛も
あなたを愛したということも
ひとつずつ
じわじわと忘れていって
忘れ ....
ヒトラーの「わが闘争」を
いつもポケットに入れていた
まるでサリンジャーの小説の
脇役のようなH君から
十二年ぶりに電話がきたのは
二年まえのことだった
十二年前H君は中国人の留学生に ....
底なしだから絶対に近づいちゃダメだ
あなたはわたしの手をしっかりと握りしめて
沼の縁から大きく距離を置いて
濁った水面に視線を落とした
ときどき
得体のしれない気泡が浮かびあがってきて
....
おれは歩いていた
いつもどおりの海岸沿いを
おれは歩いていた
いつもどおり美しい海岸沿いを歩いているのにおれは
おれは海が見えなかったちっともおれには
おれには唇 ....
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