視野に広がる
甘い木材の匂い
棺桶のごとく
その内側にいるかのごとく
死を目前にして
なお続く人生のごとく
狭く暗く細く長い通路を
這っているわたしと
わたしの一団
ひとりは肉親
....
夏の夜
夏の海
砂、砂
そっと手に掬う
一粒、ひとつぶ
祈る、祈るのは
誰のため?誰かのための
作りかけの自分
少し、すこし傷に砂を入れたい
自分が変われるのか
....
石鳴り渡る日々過ごす月下
意思成り噤む日々過ごす晩夏
無我より生まれた自我 人は衰えたか
煩悶を良しとせず あえて振舞う奔放は優か
苦悩の輪廻の中で 膨大な自我が無我になることは?
物言 ....
どこにいるのだろう
時間を記録していた
たくさんの指は
どこへいってしまったのだろう
絵の具の味をした水が
一本の髪の毛から
くちびるへとくちびるへと
終わることなく落ち ....
彼岸 檮瀬チカ
手に仏花を携え
水を張った柄杓の入ったバケツを持ち
土砂の傾斜に崩れそうな石段を
一歩一歩昇ってゆく
快晴のその日に
やっとたどり着いた思いで
墓石の枯れ ....
真っ暗な閉め切った部屋の片隅で白と黒が無秩序に演出する光と闇のコントラストから流れ出す無機質なメロディーが思考を止めたボクの中のレプリカントを愛撫しながらこの狭い小宇宙に光速で進む世界を外から見つめる ....
不安げに緑を歩む鳩の目がふと振り返り鴉になるとき
手のなかの鳥の器に降る震えこぼれゆくままこぼれゆくまま
いつわりの光の模様の窓をゆく姿を持たない鳥たちの列
....
自転車をこぐと水車の音がする流れを馳せる冬と春の背
午後の陽の光と音のお手玉が言葉に変わる冬と春の手
こぼれゆく言葉は道にかがやいて見つめつづける冬と春の目 ....
ビニールが
いきなり君の顔にはりつく
突風にあおられて
(どこから吹く どこに吹く 風)
君の顔面に
呼吸を奪う透明な仮面
ふと見渡すと
群集のひとりひとりに みな
ビニール ....
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=257400
積み上げられて溢れた雲が
いっせいに崩れ
散乱する光
仕入れを忘れ
品薄の空に
また雲を積み上げて
崩れるのを待っている
そんな
春の
活気に ....
まだ時間はある、
燃え尽きるまでには。
おれは長いあいだ炎ではなかった、
静かに灰になっていこうとしていた。
おれは夜に黒く燃える太陽を見た、
重力の暗さを持ったフレアがのた ....
風と鎖の音のむこうに
草木のまばらな原があり
銀と灰のはざまによせて
静かに蒼をしたためている
夜の生きものが見つめあい
互いの光を聴いている
遠く見知らぬ空にまで
....
熊髭bさんの「詩を書くのを忘れてしまうススメ」を読んで感じたこと
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=34372
やはり、「詩を書くのを忘れ ....
私という虚ろよ
未完成という名の陶酔を
響くように生み出しつづける
青白い坩堝と化すがいい
整然と刳り貫かれた窓の間、とびとびに漏れている明かりや疎らに設置された室外機が積み重なって、聳え立つ
黒い水の跡は長く伸びている
その営みの銀河は世界の最果てに向けた巨大なサインに似ていた
....
眼、鼻、耳、口、毛穴
すべての穴に私たちは窓を取り付け続けた
窓に明りが灯ると私たちはそれを街と呼んだ
街が体中に繁茂していく傍ら
明りの消えていく窓がある
その浮力により
私たち ....
ここに花が咲いているとして
その花を咲かせたのは
あなたでした
思い浮かべることで
薄れてしまう色があることを知っている
あなたは現実に咲かせようと
いくつかのきれいな ....
砂丘の頂上にまっ白い紙箱がある。
パチパチととりまいているのは金色の砂粒。
腕を差し込むと自由電子はパチパチと私を阻む。
クーロンは孤独への希求に働きかける阻害の力だ。
蓋を開ければ、高層 ....
春になれば
全てがやさしく物音をたてる
物音は
ところどころにできた透き間を埋める
わたしは幾度となく
春の傾斜に耳を傾けてきた
わたしの骨は
せせらぎで作られている
ころがり ....
地球が転がるのに追いつくよう
わたしはすべり台をつるり
指が焦げるスピード
わたしは銀になる
空気を回して春になるから
わたしは空と呼吸
道が氾濫してるから船を出すわ
わたしはボタンを押 ....
始まりの声に耳をすませば
それは静かでも力強いことに気づく
あなたは
不確かな未来を希望にからめて
堅く結んだ約束を口ずさむ
こぼれたいくつかは落下して砕け散っても
受け止めたいく ....
夜は暗い
夜は寒い
いまこの荒野を
この時間にしか在ることが出来ない騎士が
ひとりゆく
彼は自らの馬を失くした
それは五百年前のこと
彼は自らの体を失くした
それは五百年前のこと
い ....
遠い日の夜
私が目を覚ますと
家には誰もいませんでした。
このとき私のなかで青い虫が鳴きました。
(きいきい)
さらに遠いむかし
最後の氷河期が
始まろうとする夜
私は猿で ....
こんなにも
ひろびろと
あおいかぜのなかで
ぼくらは
とりになれない
だから
くもよ
ぼくらは
こうしてねころんで
かぜをつるのだ
そらのしずくが
ふたつ
いただきにさ ....
南の野原は
みんなあかるく
はやいのです
日と風に
ほされる草たちは
わたしの訪れに
あいさつしますし
ほらあの
草むらから
何かがとうらいするよ と
日と風が
さあ ....
カーテンがにっこりするほどの朝
青空が透けておはよう
今日のわたしにおはよう
リセットされた空気が
太陽から製造されてわたしに届いています
窓ごしでもわかるほどに
すでに言葉ではないものからはじめよう
はじまるまえのはじまりから
もうすぐ鳥がなく
ひとのきざはしに立って埋もれながら
四月が来るというのに雪が降る
路上に垂れた釣糸はみな切れていっ ....
さわれそうなほどの青、空
心音の近くで
水の流れる音がしている
少し、痛い
大気圏の底辺で沸騰している僕ら
水を注いでみると、遮断機が下りて
通過していく何かがある
夕暮れに ....
春まだ浅い日
甘い香りに見上げれば
せつないまでに
まっすぐに
空に心を開く花
その気高い「しろ」の
哀しみに
誰も気づくことはない
永遠の想いを
美しい花びらの中に秘め
....
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