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長らえてふと懐かしい部屋の壁
月曜日、仏壇に蝿が来ている
ひとつだけ秋空に乞う生きる意味
鬱の字で冷えたカルテを陽が包む
詩や歌と同じ濃度の息を吸う
....
繋ぎ蜻蛉の哀しみ憐れ 雨上がりの水溜り 白き車のボンネット
夜が明けて五月の靴はおろしたて
- l'impromptu 自由律
プリペアドピアノ獨り言つ午後の風
琥珀のなかで千年考えても尚
うれし大地の林檎{ルビ黃金=こがね}の林檎 ....
夏祭り彼を見つめる美人妻
宵がかり蛇衣を脱ぐ美人妻
母の日に母を忘れて美人妻
夏浅し白肌見せず美人妻
美人妻頬赤らめる栗の花
走り梅雨ずぶ濡れになる美人妻
美人妻待 ....
風鈴の音夕暮れに死の香り
一人夜の絶望滲む蝉の声
血だらけの亡霊達と盆踊り
睡蓮の紫映る変死体
親殺し傷癒しつつ夕涼み
紫陽花が夢遊病の夜に咲き乱れ
夕立の香り仄か ....
かの靴と梢の春と雑草と
令
月や 文明開化の灯ワ宴 裸体禁止の下知ヲ覧る
菜の花を 朝餉に添えし 散り桜
音の鳴る部屋で春猫着席す
誰も知らない部屋からの春の歌
パルティータに託す春一つ屋根の下
わたくしのいのちはたかだかすみれぐさ
今朝は風の音で起きた
国道のガードレールが雨で洗われている
桃色の傘をまわしてビル街を歩く
汚れたこころも洗顔したいけど
小指を ....
夕市の瓶きらきらと冬の詩
生きるため生まれてきたね春の猫
そろそろと痛み出した肉背負う
嘘はない肉は本音を吐き出して
冷え切った肉にお前なと問いかける