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疲れ切った身体に
染みる歌が
寒さよりも早く
こっちに座る

使い古した
勇気のチャンネルを
一人でずっと
回して来たんだ

生きるために
タイマーをかけること
この先も続く
 ....
人の力ではどうしようもない出来事に
さらわれた
行方不明の親族の亡骸が
骨だけになってしまったけれど
見つけた
帰宅した
そのように 見ていた
私は

七日間の旅立ちに巣立ちに ....
美しい本と空と地面があった
あるいてあるいて
夜空や
咲いている花を
吸い込んでいくと かさかさになったこころが
嬉しがっているのを 感じた
雨の日には 本を読んだ
子どもらのあそぶ
 ....
はじめて書いた文字は
まどかの「ま」だった
うれしかった
母がほめてくれたから

不思議の国のアリスを読んでもらって
気に入った言葉を
画用紙に集めて色を塗った

コタツに入 ....
水面の雲がながれるように
素足で湖の上を歩きたい 
つめたく 人をさす ひとさしゆびのことは 忘れてしまいたい
わたしは くつしたをぬいで はっとする

わたしの あしのひとさしゆびは  ....
あのころまだ

ふたりは人生一回目だったから

ぶこつだった

ぎこちなかった

ぼくはピンクいろの布団を

蹴とばしたし

あたしはあなたが寝るのに

電気を消さなかった ....
まぼろしである
しとどに濡れる街が
明滅する赤信号が
交差点にあふれた人びとが
舗装された道路の窪みが
まぼろしである
底のすりへった靴が
歩道橋の一段目が
つらなった改札の狭 ....
 

群れを離れたコヨーテなら
後足の
仕留め損ねた獲物に嚙まれ
血を流し続ける傷など舐めるな

私はお前の獲物ではない
まして谷底の
河原の土に掘られた巣穴に
敷かれた生暖かい毛 ....
人が息を引き取る瞬間と
息を吹き込まれる瞬間との
繰り返しが続いているのは間違いのない事実

夜更けの産院
もうすぐ我が子が産まれてくるのに実感がわかない
渇いている自分の喉を癒す方法がな ....
海は
海でしかなく
ひとは
ひとでしかないはずなのに
定期船に乗って
航路に出ると
なにもかも
忘れ物したみたいで
空っぽになったわたしは
地球ではない地球のどこかへと
まっすぐ
 ....
世界で一番
小さな空港からは
一番遠くまで飛ぶ
飛行機が出るという

帰りの便はない
行ったきりそれでおしまい

だから飛行機も
使い古されて廃棄するだけの
年老いた機体ばかり集め ....
一月一日、お正月。軒さきを小さな人がとほつた。

岬の根元にある町の上に、夏の海のやうな空がひろがつてゐる。

中学校の音楽室で、若い先生がバッハのオルガン曲をひいてゐる。
春には結婚す ....
けれども雲はいつも太陽を仰いでいる
暗雲だから項垂れて地を見下ろしているとは思うな
幸福を見つけた者が全てを置き去りにするように
地のことなど顧みはしない
どれだけ雨が降ろうが雪が積もろうが
 ....
夕陽を抱いた木々の裸は細く炭化して
鳥籠の心臓を想わせるゆっくりと
いくつもの白い死を積み冬は誰を眠らせたのか
追って追われる季節の加速する瞬きの中
ゆっくりと確かになって往く単純なカラクリに ....
聖書をよく焚いてから飴玉を投げ上げてください。
反転します。


 落下しない
 林檎
 蜜柑
 それから
 檸檬。


安物です、この宇宙は。

{引用=( ....
夕暮れという輝きが街を流したのは
言葉が言葉になるよりも、ずっと前のこと。

地平から幾筋にも分岐した時間は
人びとの膝下で、打ち寄っては引いて……。

わたしは誘われている。
どこ ....
机の上の
真っ白な
紙に向かい
詩を書こうと
意識を集中していると
部屋の左側から
異様な冷気
立ち上がり
彼方の界が
現を圧して
滲み出す


部屋の外では
稲妻物凄く荒 ....
スポーツで一人の勝者が嬉しそうです



発明した一人の人間が嬉しそうです



空前の高収益を上げた一人の起業家が嬉しそうです。



そんなもん もうやめようや 真面 ....
夢の蝶、舞う
遠去かる
宇宙の縁に触れ 燃えあがり
忽然と消え また現れ

あらゆる現の美をよろめかせ
その軌跡のおぼろな輪郭を
響かせて 響かせて
あの日
骨ごと断つ勢いで斬りつけた左手首に
病院のベッドの上であなたは
切り取った雲一つない青空を
私の傷口に深く埋めてくれた

重い曇天に覆われてる毎日の
奇跡的に雲が途切れた瞬間の
 ....
観念といのちが混じりあう

人工は自然人による作だ

どこかにあるだろう決定的なもの

そんなものあるはずもないのに

あるように振る舞ってしまう


言葉で掴みそこねている
 ....
くらい 翼をひろげて
古い調べから とほく紡がれ
凍てついた 水を恋ふ
しづかな もの

ひとの姿を 失つた日
ひとの心を おそれた日
雪を待つ 地へと降り立ち
ひそや ....
内にある暴力的なものに屈して
もう自分の味方ではいられなくなって
人生を投げようと
ただ思っただけであった
自分には甘い
気休めの漢方薬とインターネット
腑抜けた鏡像
怒りの拳を振り上げ ....
離れると 音もなく
落ちた 花びらは
ひとつひとつ 冷たく発光して
私たちは 消失のただなかで
不釣り合いな接続詞を
あてがい 続ける

たくさんの繊細な 傷を
指でなぞり 再生して
 ....
太陽がとおく大洋の彼方を翔ぶ。
あらゆる波には
千々の銀箔が散りばめられていた。

不滅の翼などはない。
宙に驕った罰であろうか、
この黄金には蒸発さえ赦されない。

落日。

あ ....
風になびく
ススキの穂が
水面を滑る
 
 眼差す太陽にギラリと光り
       
到来した冬は
情け容赦なく
すべてを裸にし
覚醒の輪郭を
与えていく
 
 透徹として刄の ....
透明なビニール袋に夜闇を包んで抱きすくめたい。耳梁から泡になって消えていく音楽のように、この部屋に息をしている形容しがたいもの/ほら、私の爪先に侵入していながら体温は南極の氷に閉ざされてしまう。いくら .... 母に愛を頂戴と 両手を差し出すと
母は遠い所を見るように 私を見つめる

朝 白い大きなお皿の上に
母の首が置いてあった
寝室の机の上にある手が握っていたのは
((少しでも足しになれば…、 ....
月にいきてえんだよ

息ができねえとか
華がないとか
雲がうかんでねえとか
音がないんだとか

そうかいそうかい、
どうでもいいんだって!

おれも男だからさあ、穴が
あった ....
(慟哭)

世界に影を落とした優しい諦めを知らないで惨めな豆腐の角はたいせつに磨いたアクアの舌。はもうないけど人狼の夜は深く更けゆくばかり火の鳥を知らない?

(うそ。知っている。)

悲 ....
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