初めて履いた運動靴で
私たちはどこへでも行けた
リュックサックを背負い水筒を持ち
少しのお金と自転車のペダルに乗せたその足で
行きたい所へとハンドルを切れた
時間は私たちの足の後から付 ....
今日高曇りの空の下、
肉を引き摺り歩いている
春という大切を
明るみながら覚えていく
妙に浮わついた魂を
押し留めながら、押し留めながら
離れていかないように
剥がれていかないように ....
見上げた冬の夜空に図星が一つ輝いている。
あの星だけが、僕の小さな悪事を見抜いている。
電飾が外された夜に
一層輝くイルミネーションが
虚実入り混じる世界に
一つの答えを教える
冷えきった世界を精一杯に彩り
幸福を志した夜は過去のこと
暖色の光に温められたつぼみは
....
兎色の
小鉢にヌタ
白みそに
いかと
わけぎとを
あえた
もの
味見の
母の手が
ぴょんと
わらう
また夜が来て
うつらうつら
いつしか夢見の一人床、
深層心理が物語る
映像群に終わりなく
私ははっと目覚めては
ぼうっと天井仰ぎ見る
〉遠い遠い異郷の地
〉父母と歩む未知の道
....
寒い窓みとったら
みとったばかりの
顔が浮かんでくる
ずる ずる
おうどん おいしいかぁ
ええ音だして
ずる ずる
いわせやんなあかんで
泣く子も
泣き止み
すう すう
寝入 ....
{引用=梯子}
高く伸びた梯子があった
青い空の真中に突き刺さり梯子は行き止まる
果て無きものに接した微かな上澄み
触れていることすら定かでなはない
その虚無の厚みの中
降り立つ場所もなく ....
アタシは衰弱を否定する老人を哀れむ
アタシは革命を嘲笑する若者を哀れむ
アタシは現実を拒絶する大衆を哀れむ
アタシは服従を肯定する個人を哀れむ
今や傲慢さを隠そうともしない奴らに
踊らさ ....
平面を二つに折りこめば空間が立ち上がり
さらに折り重ねれば世界は分断され
照らされた片方の裏側
深呼吸
蒸発に
いくつもの言葉たちが生まれ ....
よる
あふれる
かなしい
ゆめだけ
あさ
こぼれる
かわいそう
ことばだけ
ひる
みちる
うれしい
ひかりだけ
空間に貼り付いた言葉
人差し指ひとつで文字は消える
腸内視鏡/素描
それが私の詩
仮に詩人というカタチが図表に存在するならば
喜んでわたしは詩人を受け入れよう
何故ならば詩人と ....
坂の下は霊魂の溜まり場だった
降りて行ってはいけない と彼女に言われた
彼女は二十四の歳に逝ったままの若さだった
その代わりにある家を見て欲しいと言う
二階に八畳間が二つ在るのだけれど何か変な ....
固まった雪の中の
アスファルトは、なぜか、あたたかくて
歩道に車を乗りあげ
樹氷を断ち割ったあとの、氷雪を、踏み固め
青空を信じて、いく
白雪を撫でて、いく
世界を変える青 ....
紙に巻いた夜闇を吸い込むと
久々なので立ちくらみを起こす
街灯もない田舎
そこはもう「世界」ではない
こんな季節では虫も鳴かない
夏に気が滅入るあのざわめきも
今はない
じっとりとし ....
たしかレイモンドとかいう
古臭いペンネームの小説家の女が
205の明かりを消したところで
向かいのマンションは奇跡的なビンゴゲームの
結果みたいに真っ暗になった
午前二時には珍しいことさ ....
れんこんは
穴があるからサクサクと
音たてて
食べられるんだと思うんだ
わたしなら
すぐ暗くなるのに表情筋を
鍛えてない
手抜きがダメだと思うんだ
サーカスは
いちばんじょう ....
灰色の街道沿いの
深く暗い井戸の底、
白く円かな女の顔が
微細に揺れ動きながら
切れ長の目を閉じ
浮かんでいる
死んでしまった死んでしまった!
わたしは戦慄のうちそう悟り
隣で無表 ....
夕闇迫る川沿いの道、
君と並んで歩いた道、
一人は一人を置き去りにして
一人は一人で立ち去って
今頃裏庭に降り積もる
雪を静かに眺めている
)孤独なのはわかっていたさ
)どんなに身を ....
西の空が
赤銅色に燃え残り
薄暮が辺りを包む頃
俺は拳を握りしめ
一心不乱に進んでいく
胸の辺りに蟠る
抑えがたい不安感に
鼓動激しく息を継ぎ
夕闇の道を進んでいく
西の空が
....
戸外にいる気分を味わいたくって、
セブンイレブンから缶コーヒーを買ってきた。
ああ、街中には僕たちが一息つけるところなんでもうわずかしかない。
(そうでない人たちもいるのだろう)
君は君自 ....
私が喫茶店の一隅に座ると
非人称の意識が渦を巻き始めた
)眼前のアイスコーヒーはシャリシャリ音を立てて波打ち
)ガラス張りの向こうは久々の晴天で
)遠くで笑う老人の顔はとても幸せそうだ
....
私が大嫌いなお正月を
母がどんなに楽しみにしていたか
考えると涙が出てくる
少しボケたせいか
鯛のお頭が二つ買ってあった
どれだけ着込んでも
どれだけ暖房を強くしても
寒さを凌ぐ方法をぼくはまだ知らない
寒いのは冬だからじゃない
寒いのは一人だからじゃない
氷点下を感じているのは
身体ではなくぼくの心
....
波間で
花びらを
持とうとする
すごい 忘却の速さで
水のように
貴方の部屋にいた
そのことのすべてを
分かろうとするけれど
とても ....
掌からすり抜ける水
砂の中の骨
早送りで咲いて散る花
骨に彫られた文字
一枚の夜の被い
火にくべられる絵画
壺の中の菓子
家から出ない女
表紙の千切れた古い詩集
頭を割られた男
鏡 ....
パンはもうすぐ焼けると思う
夜が来たり
雨が降ったりする
人間の気持ちを傷つけたくて仕方がないときがあり
着替えて
街を廻る
そんなふうに
蓋をして
砂みたいになっていく
....
眼が在り映り凝視し続ける眼に
脳裏の戦場の消えない殺し合いか
眼前の草むらの子供らの激しい絡み合いか
展開され焼き付けられるその光景
草むらの草いきれも
左足にぐるぐる巻かれた包帯の ....
お寿司のネタは常にネタバレをしている。
シャリの上にて堂々とネタバレをしている。
蒼い夜底の真ん中
白壁の沈黙、ふと途絶え
薄い格子戸開ける女の白手
手招き三度、ゆらゆら揺れる
傷だらけの幼子の抱擁
骨組み晒し、癒されぬまま
格子戸の向こうに開ける界
二体 ....
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