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お袋が危篤
数年に及ぶ認知症の果てに
俺を産んだ女
俺を育てたかも知れない女
ほんとうはほとんどほったらかしだった
親父の母親に任せっきりで
自分は金を稼ぐのに一生懸命だった
....
愛しく思う感情に
唯一の心を込めて
知らない色が付いたように錆び始めた指輪のこと
あなたは気づいてる?
夏と冬が交互に戯れているような日々
手を繋いでる暇なんてなかっ ....
或る秋
切り取られた空が
造り酒屋の軒先にひつかかつて
はたはた ゆれてゐる
おかつぱの姉さんと
坊主頭の弟が
口をまんまるにして
それを見つ ....
ほんとうなら、あの夜は
晴れて、きれいに星が見えるはずだった
それで、ほんのりと酔っぱらって
ふたりむかしみたいに、仲良くなれるはずだった
けれど降った雨を
うらんでなんかいない
傘を ....
潮の匂いが染みついたレストラン
周りに民家などは全くない
レストランの前は国道
その前は瀬戸内海
風光明媚な場所にある
雑誌やテレビの取材などで
いつの間にか人気のレストランになっ ....
なにも変わらないはずの
空の、海の、青が
島嶼からのやさしい風で洗われたようで
風の谷の風と
潮の香りの風が
あらかじめ決められた
死を遠くへ運び出してくれる
海の旅の ....
ざわざわざわざわ、声の森
黒くうごめくたくさんの声が
あちらこちらと私を招く
ねぇ、ほら、こっちだよ
違う違う、あっちへおいき
さぁ、よく来た、いい子だね
声はよしよしと頭を撫でて ....
心は数にはあまり似ていない。
どちらかといえば、数と数をつなぐ、演算のほうに似ている。
その演算が、僕らを突き動かし、無数の鮮やかな数式を描いていく。
その式の出す結果に、救われたことも、
傷 ....
電気ケトルと時計の間に住む老婆が教えてくれた。「お前が眠っている間に雲から女の腕が伸びてきて、窓をすり抜けてお前の顔に透明な手形をつけていったよ。その手形は洗っても落ちないだろう。もう逃げられないよ」 ....
(10(テン)月4(シ)日は、てんしの日だって?ふーん)
天使の日
闇の清廉さを
剥がされつつある
このゴミだめの街に
夜明け前
タワーマンションに灯る明かりへ
....
それは偶然ではない
幾年もの月日を私は棒に振り
自分の事に精一杯でもない日常は
惰性や言い訳にまみれ
耳を澄ますことすらしなかった、
その結果です
おば ....
朝
おはようございます
と挨拶をして
おはようございます
を
返さない人は
おはようの嫌いな人なんだろう
馬鹿馬鹿しいから
そんな人は
素っ気なく通りすぎる
馬鹿馬鹿しいから
....
うそみたいな
ねいきを立てて
みるく色の
おひさまのはーぷに
なでられて
しずかなおとが
きこえます
とおい とおい
そらの つまさきまで
「こんにちは」
....
羽は
触れれば汚れそうです
羽は
天使の落し物だと
思いますか?
天使は
飛べるから
私は
天使に
憧れています
ただ
水辺に天使はちかよれないのです
祈る神 ....
何処にも届かなくていい
誰にも関わらなくて
何の問いもないが
ただ在ることを想う
ダーウィニズムがもたらした
革命にしたがおうとおもう
忙しい自分は本当なのだろうか
ぼくはい ....
── 女が女の話をするときは注意した方がいい
会議室の黒い椅子たちが話し合っていた夕暮れ時
誰かが誰かに差し出したヨーグルトの白いスプーンが
雨の交差点の真ん中で シャベルのように ....
星の上で、星のように僕たちは出会った。
お互いの心へと、まるで流星のように恋に落ちた。
だけど、僕たちは変わっていく。
僕が君を好きだって気持ちも、君が僕を好きだと思ってくれていたことも、季 ....
瞬きするたびに肌を刻んで、わたしは大人になっていく。昔よりもぼやけた視界のどこかで、この街では星が見えないと舌打ちが聞こえた。ここも誰かの故郷なのだと、わたしたちは時々忘れてしまうね。この目が誰の輪郭 ....
あなたは眠ってしまった
湖に浮かぶ 浮島の
深い眠りは ここちよく
夜闇に薄く黄色く光る
あなたの横顔を包み込んだ
砂漠の上で寝転んで
わたしたちが
白くなってしまった後
小さくな ....
秋というだけで 物悲しい
青空というだけで 晴れ晴れとしてくる
恋人というだけで なつかしい
愛というだけで 燃えてくる
秋の夜長の 想いの庭に
いとしい言葉たちを
....
家から見える瀬戸内海
時間、時間で変わる
その景色を見て育った
瀬戸内海の周りだけが
その場所特有の時間の流れがある
潮風の香りを感じると
何故か思い出が浮かび上がる
子供の ....
お月見
少女は青い服を着て
ひと晩ぢゆう恋文をかかずにゐた
姉さんの形見のコーヒーカツプに
月をうかべて
{引用=(二〇一八年九月二十五日)}
....
白いクルマに乗って
知らない町に着いた
知らない人に会って
知らないうたを歌った
そのまますべて流れて
暗くなったら波音
ああ
知らない人になりたい
その人は
一生の間に六匹の猫に出会うのだという
わたしが知っているのは
九回生まれ変わるという言い伝え
あなたに会いたくて
も一度生まれてきたんだろうか?
昔死んだしろちゃんに
....
ここは高層マンションの上の階で
地面より空の方が近い
お気に入りの窓辺で何時も
ビルと空と飛行機を眺めていた
風がカーテンを揺らす度
私の心の羽が少しずつ伸び
ビルをすり抜けて
街を飛び ....
波長が合わない音楽に
置いていかれた気がして
落とした涙が
トンボの羽根の
動きを止めていると
思ったのに
ちっとも動かずに
死体だと
気付いたせいで
そこには触れずに
....
駆けていく星が流星というなら
命のきらめきも同じだけ流星といえるんだ
わたしの星のはなしをしよう
夜明けが見えない遠くの星月
ここから先、指じゃないよ、あれを見て
暗闇を切り続ける君の粒子が ....
秋の、早朝の、爽やかなころ、
あえて、徹夜で、詩を書いてみたら、
こぼれおちた、言葉たちは、まるで、
珊瑚礁のように、真っ白なノートの、
深海で、輝いて、希望を、照らしている
あ ....
秋の雨はしとしとと降る
仄かな月明かりを纏い
冷たい風を誘う
闇がじわじわと迫り来るのを
背後に感じながら
長靴を履いて
せめて足取りを軽くして
色づく落ち葉が降り積もる
....
ひたすら憧れて
螺旋階段を昇っていく降りていく
根無し草の宙吊りで
呼ばれるように拒まれるように
(何一つ叶えられることはないのだと)
遠い遠い鐘の音を追いかけながら
ただひたすら憧れて
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