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山からはキンチョール
海からはフマキラー

虫は震えている
足場の悪い磯辺で

蚊取り線香の煙は揺らいで
遠く乱れ雲が重い

わたしの足元で
虫はつぶれている
信号を抜けると駅が小さな口を開け
その口の中にざぶざぶと雨が流れる
その口の中をしきりと鴉が覗き込み
鴉が入っては抜け 入っては抜けして
鋭利な風が立つ

風の中
おんなが頭を垂れて
 ....
片道切符で揺れる電車に
もう引き返せないと決めた心の
熱い塊がトンネルの中で
燃料となって明日を照らす

言いたいことなら溢れ出していく
後から先へと繋ぐ虹のよう

黒く光る長靴に詰め ....
はらはらと 降る粉雪に ハラハラと
シャッターチャンス 見逃しはせず

チャンスのみ ギュッと握って 離さずに
ぼやけた姿 画面の向こう

ふわふわの 着ぐるみよりも 見たくれは
 ....
夕べのそらの木の下で
かぜふくしげみにひざをかかえた
おれの顔のちいさい一人がすわっている
きまじめな面つきの
むかしのテレビドラマのような
ひどく地味なふうていで
(なあに 貧しいだけさ ....
優しさの、
止まらない疾走に
目が回る

こころの上で掬い取られた
優しさはまるで
枯れ果てて茶色の種をバラまくまえの
向日葵の花びらを枯らした姿で
花としては終わり果ててい ....
月夜
そのまんげつの
スーパーマーケットみたいなかなしさ
まるく あかるく
孤独で 遠い

タクシー
今すぐに運んで
わたしの足が濡れていても
乗せてくれますか?
雲の声を聴こう
生誕40分の
白さしか知らない真っ平らな愛情のような
幼なさをかたちにした

雲の声が聴こえる
はずもないのに
いつのまにか助けてくださいと言いたかった
約束の時間 ....
海にしずむ夕日が見たいと
思いつくままの終着
さびれた干潟の防波堤に
ぶら下がった
 足と あし

 秋の薄い日なたに
 両手をついたコンクリートは温む

(私のつま先は冷たく)
 ....
あんなに輝いてたあなたの笑顔が

徐々にぼやけていく

あんなに心地よかったあなたの声が

段々小さくなる

あんなに締め付けられたあなたの言葉が

遠ざかっていく


それ ....
漆黒の羽を広げ
詳しく私の望まれない欲を
聞かせてよ

『バサバサ』と
言いたかったのでしょう?
曇りの空からは
希望のひとかけらも作られないから

誰にも抱きしめられず ....
いつぽんの川がながれてゐる。

川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。

川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ

太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたち ....
明るい昼間に歩く僕の内臓は重い
死と夢がいっぱいに詰まった袋を持たされて
パトカーの脇を過ぎていく
残像を曳いて
どこまでも行けると信じている
誰が無理と言おうとも
自分でさえ思いもよらぬ ....
赤い線が
皮膚の上に浮かび上がる
今朝
バラのとげが作った傷が


わたしのからだの中の
赤いこびとたちが
あたふたと
いっせいに傷をめざして
走っていることだろう

猫を飼 ....
羽が落ちている
本体は見当たらないから
誰かが食べてしまったんだろう
羽は食べてもおいしくないだろうし
さしたる栄養もなさそうな
だけど
錆ひとつない
無垢な部品

ない、みたいに軽 ....
うねる雲を見ていたら
わたしは私でなくなっていた
わたしは流出して溶けてしまい
涼風とともに雲をかき混ぜていた
昔々ある山の麓に、綺麗な水を湛えた大きな湖がありました。
水際には雪のように真っ白な小さな花が咲き乱れ、いつも、きらきらと揺れながら、囁くように唄っていました。

いまは昼。 のちに夜。
 ....
久し振りに見た友は
額の正面の髪の毛を白い塊にして
少し垂れ下がった目尻には
細かい皺を溜めていた

よう !!

お互いが働き盛りたっだ頃に
道を分かった友は
なんと逞しく生きて来 ....
汗ばむ身体
あなたが振り向いた瞬間
色褪せた夏がぼやけて見えた

積み重なった夏の記憶
重みはなくまだ足りないくらい

終わりゆく夏の
後ろ姿を見つめて
寂しさを感じさせる影

 ....
つめたい身体をおしあてて
かたちを図ろうとしている

空白 不在 「想像上の」
まるで動く点みたいやな
ひとつの過去もゆるせない身体って

そうでないもの を積み上げて
それを見つ ....
この黒く暗いものは
誰にも話す必要がないものなのに
私の精神を形成している中心部に位置している

いらないよいらない
そんなものいらない
と思い込もうとしている ....
決まり文句のような言葉

諦められないのですよ、言葉を、
はだかのいろをした、
ピンクっぽい恥じらいを。

おひさまが死んだと思われなくて
悲しみの原色を体験した
ただ、心地 ....
街が明かりを失った夜
星々は本当の輝きを見せた
どんなに悲しい理由でも
それは純粋に美しかった
便利さと引き替えに
手放してしまったものが
便利さを失った時に
わたしたちを慰めてくれた
 ....
病院へ行く途中 雪が降り出した
胸のつかえを下すように 真っ白な雪が舞う
そういえばおふくろにとって この冬は災難だった
命と迎え合わせの病棟で 時を刻んできた

病棟の真ん中にある い ....
その死刑囚の首に
縄をかけたのは
何を隠そう
僕たちだったんだ
そして彼は
吊るされ命途絶えた
まっ赤な血を
吹きながら命途絶えた
彼の
首の縄には
仕掛けがあって
首をすり ....
鶴橋の町で五〇年 湯を炊いてきた
百草湯の源田のおやじが 今年亡くなった
あれは夏の午後
「湯を炊く」と言い残して赤十字病院で息を引きとった
おやじは享年七七歳
銭湯が寂れる中 おやじは ....
「正治、俺は天皇陛下殺しに行くで」と
僕に話しかけてきた
そのおじいちゃんの話を聞き
「今は警備が厳しいから
警備が緩くなったら教えるわ」と答えた
おじいちゃんは
「わかった、正治」と言っ ....
時の流れなど感じていないかのような
安古いこのモーテルは中も狭い
下着もつけないままで
君はテレビを黙って見ている
やる気のない企画物が垂れ流れている
俺はベッドに座り煙草をくゆらせる
君 ....
ジャズ、ありがと、えりまき、水槽、私の胸
ピンクのくまとか、くまの、意味とか
スプーンをまるめた指輪してたね。
あと覚えてるのはドア
しまるときに音がしなかったから
君が来たんだと思った ....
まち中で、突然込み上げた。

恥ずかしい。人がたくさんいる。
ひとつの木。が朱く色付き照れてる。

まち中で、込み上げた。

苦渋。隠しきらなきゃ崩れる。
あと1ヶ月で去れ。去れ!
 ....
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