休みの朝に昼過ぎに目を覚ます
ねぼすけは世界の外側にいるし
自分の内側にいる
父がなくなって
その後祖母がなくなった
なくなり続けていく
消えていったんだろ
それが誰にでもある不 ....
あなたの鍵を青く塗って海に投げた
波の泡が飲み込んで
見えなくなった
別れた日だった
わたしが泣くとあなたも泣いた
玄関に、台所に、ふたりの部屋に
あなたとわたしのYESとNOが
....
昔、死んだジィちゃんがよく言ってた
満州の飯は美味かったと
関東軍の青写真
お国の為にと開国し続けた
進軍を進める日本
退避を続ける蒋介石
日本は強いと豪語した
進軍するその ....
はるの海が
すべてを呑み込んだ日
わたしは目眩でしかなかった
はるの苦さというにはあまりにも
多くの命が失われた日
応えぬ名
帰らぬ瞳
待ち続けた背中
遠ざかってい ....
白い孤独が風上に立つ
悲しみの花弁が吹かれ、落ち
さらさらとした別れが
ひかりを増してゆく
異国の地を歩くとき
誰もわたしに似ていない
そのような寂寞が
どうしようもなく白い ....
そらいろのくるま
にのって
あさがたの
やわらかな
ひのひかりのなか
ぼくたちはいこう
ぼんねっとにひかる
きのうのあめつぶが
さわやかな
くうきのなか
う ....
お爺ちゃん
真っ昼間
海辺の無人駅に一人座った
何のために来たのかも分からないまま
海が見渡せる方の端っこの古びたベンチで昼寝をした
陽が傾いて折れたような首元に柔らかい光が当 ....
ひるま雨にふられたふくろうの視線の中
森に刺す月光は乾いた笑い声をこらえた
さやさやと流れる雪どけの小川冷たく
小枝ゆらす風の軽い諦めが
病んだ湖を照らす真白な光と交わるところで ....
雨上がりの夜空に吹く風は、
どれほど孤独で寂しくなっても、
けっしてお前なんかは呼ばないだろう。
ってね。
なら、
なぜ時は止まらないのだろう?
嘘みたい、
このままなん ....
高台に古い教会が見える
海辺の街を見下ろしている
結婚式でよく使われている教会
華やかなエネルギーが流れて
街全体が愛で潤う
私もあなたも
生まれ育ったこの街が好き
愛のある ....
巡る季節の儚さは闇夜に隠れた月のよう。
一人娘の待つ家に抱える苦悩の薄化粧。
橋の欄干飛び越えてその身を投げる決心も
ひと時待てば揺らぐもの。
支えはあるか?いや、ない。 ....
月までは案外近い
いつか行き来できる日もくるかも、と
あなたはいうけれど
それが明日ではないことくらい
知っている
人は間に合わない時間が在ることを知っていて
間に合う時間だけを生きてゆく ....
シンプルな夜明けだ
明白な空の色
みつめる視線
とりあえず旅に出よう
あまり太りたくない脳細胞。
わかりやすい風景の片隅
細身のわたし
きれのいい動き
飛ぼう 宙に。
....
柔らかく温度のない雪が降り積もっていく
地面の上 僅か数ミリの湿った土を粉白粉で薄化粧でもしたかのようなそれは
僅かに立ち昇る薄絹のような柔しい蒸気で一瞬にして煮溶けていく
子供とは何なのか ....
それは 悲鳴だったか
夜、星空に流れた
気づけば消えてしまうかすかな夢の中の笑い声
少し枯れてしまったシマリスの森の中で
ささやかな それでいて生真面目なそよ風に
生活を鵜呑みに ....
「悲しみって 日替りね」
少し軽めの春の陽気がつぶやく
金色の教室で新しいサヨウナラを見つけた
無人の机は古びた傷を刻んでいた
君の挨拶もサヨウナラとつぶやいていた
悲しみの言 ....
すこしまえのわたしは、やっぱり今よりも数倍甘ちゃんで
きっとなにもわかっていなかった
今になってそれを思う
すこしまえのわたしは、いまよりもまだ、まだ、希望を抱えていたんだ
本当は ....
まぶたの裏に咲く桜
遠くまでいけなかった足さきが
ようやく幹に触れる
よいのやみ
想い出を負ってしなる腕から
にじみだしていくほの白いあかりは
去っていった人のみちすじを辿るように
....
半透明なガラスのような水の膜
その向こうから覗いているのは、わたしの目
何故生きているのですか
そう尋ねているわたし
未来とか将来とか一生添い遂げる人とか家族とか
そこにはそれら ....
日は衰え
葉は彩を変える
季節は中年を迎えた
最も長い中年という季節
これまでに蓄積した疲労を
すべて養分として生かし
褪せていく美しさに
自らも加わろうとする
中年は始まった ....
いつの間にか空気が軽くなり
空も星もそれもまた然り
季節の変わり目は人の心もうつろいやすいけど
あぜ道に咲いた彼岸花の赤がやたらと
まぶしくて
君が残したものはとても多くて
私一人では ....
りーりー
りりり と
鳴いている
耳を澄ますと
少しずつ違う音色で
合奏している
パソコンの中から
聞こえるようで
二階の窓から
見てみると
明るい夜空に
透明な羽根 ....
白い羽根のような雲がゆっくりとほどけ
ひとつの比喩が影を失う
意味からやっと自由になった娘らを
解釈は再び鍵をかけ閉じ込めようとする
ああ自己愛
鏡の中にしか咲かない薔薇よ
瑞々し ....
嵐の予感が心をざわつかせるから
淹れかけたコーヒーはそのままにして
字面を追うだけの本も閉じて
蝋燭に火を灯して動かずにいよう
気持ちを巡らせて翼を広げ
黒ずんだ雲が早く流れ行く空へ ....
この部屋には何も聞こえてこない
何も聞こえてこない
物音ひとつ聞こえてこない
静寂に包まれた朝
庭の向日葵は干からびている
こっそりと命の種を宿したまま
死に果てぼろぼろに
静寂 ....
勉強が原因なら
勉強を捨てなさい
友だちが原因なら
友だちを捨てなさい
勝ち負けが原因なら
勝ち負けを捨てなさい
「死ぬよりも捨てるほうを
選びなさい」
仕事が原因なら
仕事を捨 ....
熱を嫌う午睡の肌に
蜘蛛は幾度も近づいてゆく
夏も冬も 獲物はいない
巣だけが 巣だけが増えてゆく
時の網目に掛かる埃
壁を覆う飾りの埃
彩りの無い彩りに
霞ん ....
そしてゆっくりと
身体から夏が剥がれ落ち
空虚するための九月がやってくる
白を纏う
夏のように
眩しさを反射するための白ではなく
とり残されるための 白
とり残されて
空虚する ....
午前二時 水溶星の アルタイル ガラスの海に
沈んでいく それを追いかけて 閉じていく私
*
教科書が雨降りの学校が 影が黒板に差して
私は鉄棒の下 花を胸に挿して
先生が絶望を黒板 ....
しらないうちに
ふくらんでいた
さよならの風船が
やぶれて
きみはとつぜん
さよならをいった
夏のあいだじゅう
さがしても
おいかけても
たどり着け ....
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