空飛ぶ家の 群れのなかに棲み
扉から一歩を踏み出せずに
眼下にひろがる風と原
飛び交う家々を見つめていた


街 クレーター 街
人と原は円く分けられ
薄い緑に吹かれて ....
目のなかを
突っ切っていくものは
刃に似た針の先
それは誰も何も寄せつけない
冷たさを持つ三日月

それは私の角膜を突き破り
網膜を切り裂いた
何も見えなくなった私は
かつて見えてい ....
音楽が辺りを小刻みに震わせる時
からだが先に踊り出す人
静かなうねり 心地よい慣性
グラスの中のブランデーのように
心は 甘く揺らめいて


音楽が辺りを小刻みに震わせる時
暗い片隅に ....
白い羽根のような雲がゆっくりとほどけ
ひとつの比喩が影を失う
意味からやっと自由になった娘らを
解釈は再び鍵をかけ閉じ込めようとする


ああ自己愛
鏡の中にしか咲かない薔薇よ
瑞々し ....
そしてゆっくりと
身体から夏が剥がれ落ち
空虚するための九月がやってくる

白を纏う
夏のように
眩しさを反射するための白ではなく
とり残されるための 白

とり残されて
空虚する ....
花がしづかに揺れてゐる。

その横に小さな言葉がおちてゐる。

姉さんがそれをひろつて、お皿にのせた。


子供たちは外であそんでゐる。

まぶしいほど白いお皿に ....
薄曇りの空を浴び
錆びたトタンが発色する
剥げかけた というよりも
薄い金属の表面を
浸食している赤ペンキ

腐蝕しながら
守るべきものを阻害していく

かつては輝きそのものであり
 ....
影かすめ
   ふり返り  だれも


――夏よ
荒ぶる生の飽食に晒された{ルビ石女=うまずめ}よ
あの高く流れる河を渡る前に
刺せ わたしを
最後に残った一片の閃光をいま
仰向けに ....
まわり続けていれば
倒れずに
ほそい息を繋ぎ
うたうことさえできそうで

こころなくして
忙しくまわり続けていられさえすれば
支えてくれた背骨の芯も
とうに抜け落ち
まぼろしだけだと ....
ガラスのように光るその蛇は
青草の影を躰に映し
すべらかに移動していた
怖くはなかった
わたしを無視して
まっすぐ母屋に向かっていくので
なんとか向きを変えさせようと
木の枝で
行く手 ....
{ルビ蛇=わたし}は脱皮した
相変わらず{ルビ蛇=わたし}のままだったが
少しだけ清々しい
肌感覚で世界を捉えている


かつて外界と接し敏感に反応した
主観的感覚と一体だったものが
 ....
黒焦げのアカツメクサを労うように
レースフラワーが風に揺れ
夏が終わると歌っている
排気ガスまみれの分離帯にも
芽吹いた種は繁らせた
波打つ夏の色

色褪せた空のキャンバスに
ぽたりと ....
{引用=夜明けのこない夜はないさ
あなたがぽつりいう}

懐かしい歌が
あの頃の私を連れてきた
そして今の私が唄うのを
遠い窓枠にもたれて
聞くともなく聞いている
夜のはてない深さと距 ....
ああ なんていい風だろう

みんみん蝉が緑の木立に鳴いて
大きな鳥が素早く飛び立ち
鬱々とした気分が
涼やかに洗い落とされていく

この高曇りの八月十一日

[目を閉じれば未だ
橙 ....
台所の窓辺に
葱だけが青々と伸びている
ほかの葉っぱたちは項垂れて
もう死にますと言わんばかり
葱だけが青く真っすぐ伸びて
葱好きではないけれど
すこし 
刻んでみたくなり 
ぱらりと ....
飲み込んだ言葉が
胸にわだかまりの
どろりとした沼を作る

沼の中で
人に見捨てられ大きくなった亀が
悠々と泳いでいる
よく見ると
子どもを食ってふくれた金魚の尾が
ひらりひらり
 ....
                
父、母からの生に自立して
もう己自身がひとつの風土だ
と書いた北の国の詩人がいた
東京育ちのわたしにとって
風土とはどのような意味をもつのだろう
解体され ....
水に嫌われ
水で追われる
隠れることもできず
すぎてゆく日々


飛ばされそうになりながら
どこへ帰るともなく進みゆく
すれちがう花も
すれちがう蝶もわからない

 ....

からだじゅうのあなたを摘みとりながら
指はあおく湿っている
記憶はうすくひきのばされて
ところどころやぶけながら
いつまでも種を蒔きつづける

おもたい夢を湯舟に投げこんで ....
だめだ
もうだめだと思いながら
それでもまだ生きながらえている

この鼓動は止まることがなく
呼吸が止むことなく
陽の光を浴びて幸せを噛みしめる

気を失ってしまいたいと切望し
なに ....
発つ朝に
白い燕の飛ぶ夢を見た
と君は云った
そして窓辺の水栽培の
青いヒアシンスを
はじめて見るもののように見つめていた

この季節が来ると
ことに青いヒアシンスを見ると
 ....
雪の冷たさの青の空
桜のつぼみに咲くなとわめいてる
私を殺していたあのころ

なんで

好きな人は働かなかった 家事もしなかった 絵だけ描いてた
絵は息をのむようなやさしさだったのに
 ....
インスタントラーメンと目玉焼きぐらいしかつくれなかったが
いつしか肉ジャガが美味しくつくれるようになってしまった
かぼちゃの煮物と筑前煮と筍の土佐煮にきんぴら

変化は世の常ではあるが妻と離別 ....
水になってひそむ
死んだ者たちの{ルビ通=とお}ったこのほそい水系に
官能の色彩はすでにない
光りの粒子のように時は流れ
序章のように生誕の時は流れ
星が囲んだ戦場につめたい炎の舌がみえ ....
 愛を囁くと梢が揺れた。
 協奏楽の流れる部屋に人は無口で
 病人の枕元に一輪の花をかざした。
 今在る優しさに皆耳を澄ませた。

 枯草の美に共感出来た時、私は和的な幸せを得た。
  ....
舌先で像を結ばない
時代の陰りの不安漠然とした
――漏出か
灰に灰よりも濃く灰を溶き混ぜた
ような雲
 も 時折 
    裂 け
息苦しい断絶の青さ遠くかもめのように過る
無垢のまま ....
色の無い花が咲きました

香りも無ければ
命を繋ぐ力も持たない
少しだけ
孤独に見える花です


  花はただ
  『生きられたらそれで十分だ』と
  私につぶやきます ....
息をしている
すべてのものたちが
息という名の
うたをうたう
うたという名の
命を

深く
息を吸いこみ
ふくらんだ分だけの
息を吐く
そのあと
わたしのうたは
誰かの肺の中 ....
光を打つものの影が
空に映り揺らめいている
二本の穂の墓
影が影に寄り添ううた


切り落とされても切り落とされても
見えない部位は羽ばたきつづけ
音の無い風が生ま ....
この夜に目が覚め
この夜底に触れる
私にはもはや
親兄弟家族親族はなく
現世的無縁仏だ
円やかな現世孤児だ

そこでは
 私という存在が剥き出しで
そこでは
 私という存在が真っ裸 ....
鷲田さんのおすすめリスト(306)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
白と白- 木立 悟自由詩818-2-1
三日月- あおい満 ...自由詩618-1-14
音楽が辺りを- ただのみ ...自由詩12*17-9-23
さてどうしよう- ただのみ ...自由詩9*17-9-2
空虚するための九月- 塔野夏子自由詩8*17-9-1
草色- 石村自由詩19*17-8-31
ページ- Lucy自由詩10*17-8-31
夏石女- ただのみ ...自由詩14*17-8-30
独楽_―_立原道造「逝く昼の歌」に寄せて_―- Lucy自由詩5*17-8-28
優しい人- Lucy自由詩18*17-8-26
脱皮- ただのみ ...自由詩10*17-8-23
労い- Lucy自由詩18*17-8-21
夏の終わりに- そらの珊 ...自由詩20*17-8-21
今日の午前に- ひだかた ...自由詩12*17-8-11
- ただのみ ...自由詩18*17-4-26
みどりの沼にひそむ- 田中修子自由詩13*17-4-14
風土- 白島真自由詩12*17-4-14
夜に至る夜- 木立 悟自由詩817-4-6
- はるな自由詩1217-4-5
生きてゆく- 坂本瞳子自由詩10*17-4-1
白い燕- 塔野夏子自由詩6*17-3-31
なんで- 田中修子自由詩11*17-3-29
Love&Peace&Kitchen- 梅昆布茶自由詩23*17-2-27
くにの記憶- 白島真自由詩27*17-2-26
愛の囁き- ヒヤシン ...自由詩18*17-2-25
ある朝こぼれ- ただのみ ...自由詩14*16-11-16
『透明な花の一生』- 葉月 祐自由詩7*16-11-16
星とうたう- そらの珊 ...自由詩26*16-11-16
ふたつ_冬野- 木立 悟自由詩1716-11-14
脱出- ひだかた ...自由詩11*16-11-10

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