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十月の空 軽やかに
抜け落ちた天使の羽根
青へ青へと沈んで往った
解かれながら天の淵へと

いっせいに湧きかえる小さな羽虫たち
凝縮された生と死が充満した宇宙 裂くように
歩いて往く 衣 ....
黒曜石は砕かれた
もうずっと昔のこと
何もかも失ってちっぽけな存在だ
もとの自分がどんな形をしていたか
思い出すこともできない
以来 変わらず尖ったまま
今も誰かの指が血を流している

 ....
旅にでよう
おれは空っぽの植木鉢
枯れた川底の石っころ
風の一筆書きなのさ
蜃気楼から現れた古代人が
すべてで触れて 無知のまま
時を違えた恋人を追うように
たった一人 旅をしよう
帰 ....
フェイスブック
ライン
メール
電話も
手紙ですら
もう つながることはない
遠い人

色づくことの葉 散り積もり
掻いて 集めて 徒然に
燃やしてみる その 煙の
立ち振る舞い ....
雨 いつのまにか
静かな吐息のように 
染まりはじめた黄葉から
ひとつ ふたつ しずく おち
{ルビ中空=なかぞら}はしっとりして
往くトンボたち
ゆるやかに すこし乱れて


   ....
朝の光が問いかける
空ろを残して辿る海辺で
初めから抜け落ちた地図が飛ばされる
一日か百年かも分からない始まり 

わたしは呼び起こす わたしを
塵ひとつ動かすこともない精神で
囚われた ....
悪びれることもなく時は捲れ
ゆるゆると確実に老いてゆく
胸に立ち込める冷たい霧
晴れる間もない
季節より早く深まったあなた
色づく言葉が黙々と
忘れ去られた詩人の墓を覆う頃
斜陽に目を細 ....
公園のベンチに座っていた
そよ風が恋人のように寄り添っていた
古いノートの中で
ことばは悶えた
それとも窮屈な服を着せられて
詩がのたうち回っていたのか

その時ひとひらの蝶が
記憶に ....
絵のない絵葉書が届く
ことばのない詩が書かれていた
ピアノソナタが雨に溶けて
コスモスはうつむき顔を覆う
山の精気が少しだけ薄められ
ものごとを前にしてふと
過去からの声に手を止めている
 ....
光と樹木が交差する
あの夏の濃い陰りを抜けて
ヤンマゆくよ

感光した記憶の傷痕なぞり
迷える樹海の鬱蒼を越えて
ヤンマゆくよ

うすい双翅に光彩を弾き
風の流れを遡り
この目が耳 ....
見開いた瞳が何もかも拒む時
舌が千々に裂け石となり果てる時
世界がおまえとおまえ以外に二分される時
おまえの奥深く
開く扉があり
時間の揺蕩う土地があり
虚ろな空があり 明けのような暮れの ....
胸のファスナーを下して
白い綿毛に包まれた
幼い夢の息の根を止めて
そうして入り日の燃え落ちる
血だまりへ
交わることで違え 
意味を失する言葉のように
縺れたまま ひとつの肉塊となり
 ....
物憂い季節の飴玉を
煙る眼で舐めていた

 「印象かもしれない
 塗り潰された貝のように

破れたレースの隙間から
凝らす朝が射竦める

 「人形かもしれない
 あるいは蒼 誰かに ....
風の強い日にも蝶は飛ぶ

気流に乗って巡り

波を越えたり潜ったり

泳ぐようにすり抜けては

喉を潤す 揺れるクローバーに佇んで

ヨットのバーでカクテルでも飲むように

洒 ....
――皿が割れた!
まわす皿はもうない
みんな落として割ってしまった
誰かのせいにしたくても
皿を落として割ったのは自分
落として割れたのは自分の皿
何事も寸分変わらない
仕方がなく
架 ....
光で埋め尽くされて行く影
影で埋め尽くされて行く光

詩で埋め尽くされて行く空白
空白で埋め尽くされて行く詩

沈黙で埋め尽くされて行く会話
会話で埋め尽くされて行く沈黙

過去で埋 ....
春 そよ風の優しい囁きに
夏 肌を滑る熱い眼差しに
秋 想い出の肩を包む腕に
冬 肌の温もりの静けさに

とろけても ながされない
自分のかたちを失くさない
凛としてつめたく だけど 
 ....
スパイスと宝石の匙で
耳を穿られる

《誰の膝が欲しい?――

頭の中から始まる旋回舞踏
透明な花びら 光彩のミスト 
すぐに船内の浴槽が揺れるよう
隠れた海が押し寄せて捲れだし
突 ....
真理を見たのです
燃えて輝く光を
そうして心は石と化し
硬く刻まれて死の使者となりました
冷たい墓石のセールスマンが
来世を高らかに謳うように


ある日ミミズが降ってきて
声のよう ....
木影に影を重ね 静かに見送る 
蟻たちに運ばれて往く
ことば 肉から零れ落ち

    熱い 取っ手を掴んだ

わたしは夏に生まれた
きっと夏に死ぬだろう
光の色彩が教えてくれる

 ....
長い雨のレースを開けて
六月の陽射しが顏を出す
反射して散らばる子供たち
ビー玉みたいに素早く駆けて

ひとり離れて
シロツメクサを編む
首の細い少年

意識されることもなく
満ち ....
霧が湧き 雲は下り
天と地の息吹が交わり合う
噛み合わされた大地 喃語の潤い

ぱせり ぶろっこり やまのみどり

熊や鹿が嗅ぐ土の匂いが知らしめる
地脈の辿り 遠く 深く 息みて

 ....
朝陽から刈り取って食卓に供えられた獅子の首
金色は瞬く間にとけて白い皿に蒼く翳りを残す

あるいは初めから造られなかったニケの頭部
永遠に像を持たない神聖 あらゆる問であり答え

あなたは ....
黄色いシーソーが二つ
同じ方を下げて
ならんで寝ころぶ恋人同士みたい 

ブランコも二つ
風にほんの少しだけこぎ出して
仲睦まじそう

のっぽの滑り台はひとり
空を見上げている 雨が ....
故郷の水産加工場で働き始めて二年になる
腹を裂いて 卵を取り出す
完全な流れ作業
嫌な仕事 本当に
だけどこんな田舎ではまだましな方
特に何ができるでもなく
コネがあるわけでもない
男相 ....
――卵がない!
     よりによって

妻が亡くなってから 
最初の息子の誕生日
わたしは初めてオムライスを作った
息子の大好物
記憶の中の見よう見まねで
決していい出来ではなかった ....
卵はひとつの理想形だ
人間もまた卵から生まれれば
これほど母親との確執に苦しむことはない
乳と血の繋がりはどんな病的恋情より
互いを束縛しその愛は動物並に遠慮がない
その点 卵は完璧だ
無 ....
――風よ 

木の葉をさざめかせ
やさしく掻き乱し

花房にそっと触れ
散り際へと誘う

子猫の背を撫でるよう
湖の面を煌めき立たせ 

風 おお風よ!

おまえが気まぐれに ....
職業は会社員
仕事は数字を殺すこと
会社に入るまで知らなかった
仕事は数字を作ることだと思っていた
ところがそれは間違いで
一年の始まりにはすでに数字が
月の始まりにもやっぱり数字が
山 ....
藤は支えが欲しかった
己が生きて行くための

桜は藤を必要としなかった
だが支える力は持っていた

今では一本の木のように
鬱蒼と密にからみ合うが

異なる性を持つもの同士
時を違 ....
由木名緒美さんのただのみきやさんおすすめリスト(311)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
秋・反羽化- ただのみ ...自由詩17*15-10-7
記憶の怪- ただのみ ...自由詩14+*15-10-3
いざなう声がする- ただのみ ...自由詩15*15-9-27
つながらないあなたへ- ただのみ ...自由詩23*15-9-26
秋・湿傷- ただのみ ...自由詩13*15-9-23
いつかロマンス風の- ただのみ ...自由詩8*15-9-19
秋・滑落- ただのみ ...自由詩19*15-9-16
わたしのメルヘン- ただのみ ...自由詩14*15-9-9
秋・逡巡- ただのみ ...自由詩19*15-9-5
ヤンマゆくよ- ただのみ ...自由詩18*15-8-30
聖域- ただのみ ...自由詩14*15-8-29
闇の恋人たち- ただのみ ...自由詩16*15-8-26
自意識風呂敷- ただのみ ...自由詩10*15-8-23
風の強い日にも蝶は飛ぶ- ただのみ ...自由詩16*15-8-21
皿まわし狂言地獄- ただのみ ...自由詩22*15-8-19
翼に鉛のピアス- ただのみ ...自由詩17*15-8-14
アイスクリーム- ただのみ ...自由詩16*15-8-8
音楽の効能- ただのみ ...自由詩16*15-8-1
律法- ただのみ ...自由詩14*15-7-22
消失の夏術- ただのみ ...自由詩17*15-7-20
六月回廊- ただのみ ...自由詩25*15-7-18
巻き戻されることはない- ただのみ ...自由詩16*15-7-15
わたしが詩の中で掻き抱くあなたは- ただのみ ...自由詩18*15-7-11
雨の日の公園- ただのみ ...自由詩18*15-7-8
『遡上の果て』__卵から始まるはな詩⑥- ただのみ ...自由詩18+*15-7-1
『年中行事』__卵から始まるはな詩⑤- ただのみ ...自由詩15*15-6-27
『エンジェルエッグ』___卵から始まるはな詩①- ただのみ ...自由詩21*15-6-13
風と共に念ず- ただのみ ...自由詩15*15-6-10
殺し屋のパラドックス- ただのみ ...自由詩15*15-6-6
藤と桜- ただのみ ...自由詩17+*15-6-2

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