レモン
A道化





曇天とは無関係に翳った夢の後
ぎゅっと
その翳り残るこめかみを圧する
スピーカーからの果汁


光みたいな酸味、沁み
やっとのことで
鈍すぎた朝に気がついたのは
昼になってからのこと


低温で
手遅れ、と、呟いて
笑って歪むことが出来ます
冷蔵庫で忘れられた果実とは違って
わたし自発的に冷える生体だから


素敵なはずなのにどうしてかしら
体が押し潰している私の影がレモンの影ではないことに落胆します
それなのに、それなのに、どうしてかしら
それでも知り過ぎるということは過ぎてから知ることよりは、ずっと
ずっと素敵だと言い張ります


ああそしてその言葉の中のレモン作用で
こめかみの翳りを綺麗に分解して、そっと
生ぬるい目蓋絞ることだって可能です
冷蔵庫から除かれ水滴を強いられた果実とは違って
だって、わたし内側から濡れる生体だから



2004.4.15.


自由詩 レモン Copyright A道化 2004-04-15 12:57:39
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