瓦屋根白黒雨粒てんてんてん
夕立のみぞおち満たす涙かな
右折してまた右折右折片思い
山消ゆる入梅とともに君までも
紫陽花の涙雨に浮かぶ薄紫
窓ガラス雨だれ落ちては指で追い
天文学の本には
その距離が
記されている
地球上で
彼女に向かって
全速力で
走ってみても
その距離は
縮むこともなく
遠ざかることさえない
38万km
....
まどろみの限界の中私たちは生きている
崖を踏みはずしては根っこにつかまり
そこから養分を得て私たちは生きているのだと言う
真下を見下ろせばなにもない暗闇とも言えない
だだっぴろい空間だけが ....
彼は とても深い 土の中にいた
どちらが 上か下か 右か左か
わからず 長いこと 過ごした
熱 を 感じた ある日
それが すべてを 決定した
確信した 意思のまま
夢中で ....
散ることを知らずに咲けぬ霞草
この皿は一人暮らしの味がする
万華鏡最初の絵柄はよかったのに
一輪挿し咲いているのは違う花
地下鉄の窓の鏡が怖いだけ
あくる朝アドレス帳 ....
真夜中に公園で遊ぶ
親子がありました
今日は久しぶりに
お父さんが仕事を休みました
夜十時に起きました
夜十二時にコンビニで買ってきた昼食を食べました
夜二時に公園に遊びにいきまし ....
とおい記憶の
ちいさな電車
だいすきな
祖母といっしょに
がたんごとん
たんぼと空
いい空気
おひさまの光
まぶしさに
目をつむる
みっつかぞえて
目をひら ....
一人暮らしの アパートに
大きな箱が とどいたよ
野菜 果物 地場産品
お米 お茶っ葉 お手紙と
意味不明なる ふるさとの
町の指定ゴミ袋
でも なによりも うれしいは
....
夕陽がしぼんでゆきます砂時計
冷凍庫いつかの恋がフリーズドライ
夜景はね化粧が下手ねとすっぴんで
片恋はまた雲となり俄雨
言いそびれし言葉のジュラ紀の地層調査
またあした ....
引けば開く扉は押します開かぬよう
開かずの間あの鍵はもう壊れてます
ねえあなたこの車窓の絵は買えないの
蜂の顔同級生の小林さん
生活感だけを散らかし夏の庭
引けば開く扉と ....
「百万円といったら、大金じゃないですか。」
驚く私に、老女は、落ち着いた様子で笑いながら言う。
「ふつうだったら、そう思うかもしれません。でもこれで人生、やっと清算できた思いなのです。」
電 ....
つぼみですあなたの前では枯れるまで
曖昧は曖昧だからやさしいの
恋列車整備不良で停止せず
さいたま港そんな港は知りませぬ
残された飛行機雲を撃ち落とす
あなたといふ三文字 ....
愛されてアイスクリームは溶けるまで
生きるため乗りこむ船よ浮草よ
ふろしきに包まれしものの声を聞く
地図になき地を吹く風との対話あり
野に蒔いた手品の種の発芽待つ
アラー ....
桜散りすでに秋の風たちぬ
にせもののあなたと過ごした月見草
朝顔のつるに巻かれし夏の園
脱皮した蝉のぬけがら捨てられず
キセルしてまでも行きたい終着駅
靴底に見つけた春の ....
人がだめになっていく様は美しい。悲劇のヒーロー、ヒロインには涙し、身近の悲劇には鈍感な仕合せ者の、ものごとの真理を見抜けない盲目に、わたしは辟易する。現実の退廃には目を伏し、幻影の希望だけを見つめ、 ....
誰かを見つめることが
好きなひとは
その誰かを失うと
失った誰かと
おなじ背中をさがす
誰かに見つめられることが
好きなひとは
その誰かを失うと
失った誰かと
おなじ眼差しをさが ....
世界は
ビリジアンの森
流れる
コバルトの川底
私は
クリームのカゲロウ
立ちつくし
バーントシェンナの岩
見上げてばかりの
マーマレードの木漏れ日
どっかで聞いた名前だな
とだけ言って
すでにその名前を思い出している
どっかで聞いた名前だな
とだけ言って
相手の今の暮らしぶりを想像している
どっかで聞いた名前だな
....
泳ぐ空どこまで行っても泳ぐ空
水平線こえた世界が知りたくて
木漏れ日よそこに私はおりませぬ
麦藁帽編み目の数の夕まぐれ
思い出に暮らすが我が生きた証
いつの日か小さい緋鯉 ....
王子よ
今夜が最後の晩餐と思え
私は王子を
最初で最後かもしれない
戦いへ導いた
勝てるのか負けるのかは
わからない
しかしこのような経験をせずに
いずれ王位を継ぐことは困 ....
夢は 走る
清らかに 鮮やかに
初々しく 若さにまかせ
たくましく 力強く
加速度を上げていき
速く 速く
地球を 一秒間に 七まわり半の
スピードで やがて
夢は ....
二日続けて
カレーを食べた
やっぱりカレーが
うまいな
ふいに
だれかの
口癖が出た
明日もカレーを
食べるかもしれない
信号が
青になって
恋は
はじまる
青の喜びは
ひとときの
幸せ
やがて
黄色になって
危険信号
赤になって
恋は
終わる
右から
左から
いくつもの
....
通夜の式場に行くと
亡くなったそのひとが
よく来たね
と、待ってくれているような
気がしてくる
式を終えて会食していると
亡くなったそのひとが
まあ飲めや
と、ビールをついでくれそ ....
田んぼの お空に グライダー
さぞかし 気持ち よいだろな
田んぼの お空に グライダー
田んぼは どのよに 見えるかな
湖みたいに 見えるかな
小さく かがんで 田植えする ....
さよなら言わずに引っ越した
あの子のおうちのお庭には
たんぽぽみっつ咲いてるの
さよなら言わずにたんぽぽも
綿毛になってとんでくの
古家の壁かすかなためいき風と化しこの手触りに思い伝えし
今日あなたが
髪型を変えていたので
私の胸はときめいた
土星の輪っかみたいな髪型
こっけいでなつかしい髪型
無垢で可愛らしい髪型
愛していた髪型
最近惑星から除名された
冥王星 ....
店内の
モーツアルトのBGMが
私の聴覚を虜にして
友人の言葉が耳に入らない
窓の外の
通りを歩く人々の営みが
私の視覚を虜にして
友人の顔が目に入らない
いま目の前にある
....
捨てられた公園の
捨てられたベンチに座っている
捨てられたひと
捨てられた思い出の
捨てられた世界に生きている
捨てられたひと
かくれんぼの時
最後の最後までみつからなくて
つ ....
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