一年間ご苦労さん
会社は黒字経営、そうだね

黒縁めがねの経理がうなづく
「黒子ながら経費節減に努力させていただきました。
昨今日本経済をマクロ経済学的に俯瞰すると・・・」

その御説は ....
京急線高架の下に
救急車が止まっていた
それだけなら
人通りの多いこの界隈で
不思議なことは
何もないのだが
そこには二人の
警官がいた
警官の後ろ
あしもとに
くの字に曲がった
 ....
早朝
のろしが上がり
台所は戦場となる
わが子の出陣
しゃもじもて見送り

子供より早く家を出た父は
休戦ラインのそば
陣地を確保せんと
小競り合い
ロープ際に
三脚の城壁が築か ....
キリンが疾走する
大都会 夜の東京
一頭の巨大なキリンが
闇雲に
走る
走る

第一京浜 渋滞中
銀座和光の時計を見上げ
レインボーブリッヂ 観覧車を横目に
紅い車列を
蹴散らし ....
ついに
黒い大群となって
見下ろすか

カラスめ

言ってみてもしかたがない
伝わらない言葉は
黒い羽根に遮られ

傍らに
ただ
人の
眠っている
つきぬけるような青空だ
天国の存在も許さぬほどに

旧年度の引き継ぎが終わり
神様は後任のために天を掃除した
きっぱりと片付いた空に満足し
目を細めれば

見よ 地上には桜の煙り
赤 ....
ほどけた靴紐を結びながら走った
朝はいつも苦手で
腕組みしている先生の顔を見ないように
校門を駆け抜ける

一時間目から六時間目まで
机に突っ伏して眠り
部活だけはさぼらなかった
そん ....
茨木のり子さんが、亡くなった。


高校生のとき読み始めた詩は茨木のり子、谷川俊太郎、吉野弘、川崎洋、大岡信・・・みな「櫂」の同人であるということをあとで知った。その「櫂」を茨木のり子氏とともに ....
独り言が止まらない

にやってくる


全身のけだるさを乗せ
仰向けに寝たならば
月の光が眩しくて
私は私への質問が止められない
私は私への回答で忙しい

滔滔と
滔滔と
 ....
誰かを待って

ソファにもたせかけた
首が
想/重い
口はぱかんと天を向いて

カレンダーはためく
冬の午後
窓は
開け放し

空ろに過ぎる
時の
縦横に

テレビ
 ....
良いお年を
良いお年を
と言って三日が過ぎた

年はただ
明けただけでめでたく
かたちだけでも年賀状では
皆笑顔だから
本気の諍いは
まだまだ
先の話だ

しかし
軒先には
 ....
今年最後の海を見に行った

午後六時
駅から海までは住宅街の中をしばらく歩く
にぎやかな町ではないので夜は早い
ビルディングの間からは見えない星座がたくさん瞬いている

海岸沿いの国道に ....
白い壁にまたたく
ニュース映像の


無音
の部屋で
テレビの人間はいつも忙しくしている

何かを攻め
何らかを責め
居心地の悪さを拭いてまわるように
忙しく
口を動かしてい ....
つるつると
つるつると

言葉が
見ている端から
頭上を滑り

相手は
張り付いた笑顔のまま

透明な
大きな
風船の中で

飛散した唾の天井
語る言葉はひとつも
届か ....
分厚い本を閉じて
黴臭いじゅうたんに横たわる

天井に時がうつっている
そうだ
君は正しい

はためくカーテンの向こうに
君のいる世間がある

誰とも会わないので
自分がひとりか ....
剥がれ落ちた
黄色の点描
掃いた先から
人だかり

異臭にまみれた種子
壮麗に枯れていく大木
足元に塗り込められた果肉

光が空気になる
空はだだっ広く
伸ばした枝の先に
カラ ....
語る言葉を失ったとき
心に入ってくるのは
天使か
悪魔か

脳内から蜜のようにとろけだす
他人はただ見てうなずいている
私の言葉でない
何かに

流れ出した言葉は
時流という川に ....
人の灯りが
山間に星空のようにまたたいている
地上の星という流行り歌があった
高台を走る田舎の高速道路から盆地を見下ろすと
それは星の吹き溜まりのように見えるのだった

星座には見えないが ....
戒められた過去
犬が鎖をつながれて
インドの山奥で僧が吼える
今を捕まえることの
いまいましさ
いらだたしさ
いじらしさ
いいさ
厭わずに
生きていくこと
居住まいのつつましさ
 ....
十年日記をもらった
はじめる日が見つからず
十年過ぎた

色あせた表紙の中身は真っ白だが
ニュースはたくさんあった
書き留めておくべきことだったかもしれない
あのときの一大事も
三年後 ....
くだらないやつが寝て居る
小便くさい空に寝て居る

 サラリーマンが行き過ぎる
 労働の汗がワイシャツの下に張り付いている

終の棲家を持たぬ半端者
住むべきところに住めず
食べるべき ....
複雑
というところだけ聞き取れた
二人しかいないホテルの部屋で
あなたが自分の言葉で何を言おうとしているのか
Complicated
何が

人生はときに難しい
だが
ときに易しい
 ....
雨をゆるやかにまとった女の
影だけがゆきすぎる
せつない女は雨を吸収し
湿気た影がゆきすぎる

足跡は砂浜に続く
カラスがついて歩く
にごった海の中で
魚たちは地上のせつなさを知らない ....
梅雨の酒
コンクリートのベランダ
救急車は走り去る
建物はてんでに光る
がらくたを運ぶ音がする
空で泡が溶けていく
抜け殻を運ぶ男の
重い足取り
なめくじのように
軌跡を描きながら
 ....
さつきに許されないうちは
五月をさつきと呼ばない
ことに決めた
さっき

しどけ
ぼんな
あいこ
こごみ

その不思議な名前の来歴は
山に入る者だけが知っている
雪解け
呪文 ....
風の暖かくなった
空から鳥が落ちてきた
インフィオラータを知っているか
無数の花びらで地上に大きな絵を描くのだ
極楽鳥や孔雀は空から落ちてこない
カラスとハトの
いつのまにか 大雨だ

 ....
いちょうのにおいをかぎわけるころに
どちらからともなく手をつないだゆうぐれ
言葉を待っているでもなく
色づいた葉が落ちていくのが
コマ送りのように目に焼きついて

図書館前の噴水は
夏を ....
あきらかな
あたたかな
あなたとわたしの
いっときの
うんどう

えんどれす

おともたてずに

かなしいよる
かたつむりがはう



きりのなか

ください
く ....
赤ん坊の頬をなぜるように
水蜜桃の皮をむいていく
あなたの指が
汁にまみれて
窓から差し込む光に包まれている
甘い水が
赤ん坊の膚のような
産毛の柔らかい皮をはぐたび
したたる
した ....
なんだろう、風がすずしいのは
どこまでも突き抜けていくんだ
水色のベールに覆われているということを
空は気づかせない
視界良好
闇はまとわりつくが
空は遠くにあるだけだ
どんな風にあるの ....
岡村明子(100)
タイトル カテゴリ Point 日付
黒尽くし忘年会自由詩4*06/12/25 10:15
紫煙自由詩206/10/2 18:15
十月自由詩106/10/2 18:10
キリン自由詩606/7/24 10:51
なきごえ自由詩206/7/21 0:28
天国自由詩106/5/11 14:02
卒業自由詩906/3/11 19:04
千の風になって—茨木のり子氏死去散文(批評 ...906/2/21 21:30
とめどない思考自由詩406/1/9 23:33
冬酔自由詩106/1/4 23:28
新年自由詩306/1/4 0:26
今年最後の海自由詩405/12/28 9:42
テレビ自由詩305/12/21 0:24
共有自由詩3*05/12/14 22:12
行き場自由詩3*05/12/12 1:28
冬の点描自由詩305/12/11 13:28
自由詩205/12/5 19:02
盆地自由詩905/10/6 9:17
イギョウ自由詩305/9/8 0:30
一生日記自由詩105/9/5 19:26
駅前自由詩205/8/24 11:10
連作(3/3) Life is自由詩105/7/4 18:16
連作(2/3) せつない女の湿った影自由詩005/7/4 18:14
連作(1/3)  酒自由詩105/7/4 18:13
さつき自由詩205/5/16 19:10
インフィオラータ自由詩8*05/3/18 1:24
秋の日の感傷自由詩7*04/10/4 0:23
あいうえんどれす自由詩4*04/9/18 0:21
水蜜桃自由詩9*04/9/17 21:18
自由詩204/9/17 0:02

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