十月
岡村明子

早朝
のろしが上がり
台所は戦場となる
わが子の出陣
しゃもじもて見送り

子供より早く家を出た父は
休戦ラインのそば
陣地を確保せんと
小競り合い
ロープ際に
三脚の城壁が築かれる

やがて
紅白帽の行進がやってくる
正々堂々と戦うことを誓います
手のひらの先に高い空

鉄砲の音
万国旗
カメラの放列
キャノン砲
平和なれかし運動会

ざわめきは遠く
体育の秋に無関係な
二十五メートルプールの
底に
金魚
弁当箱に残った
紅生姜
のように
群れなして


自由詩 十月 Copyright 岡村明子 2006-10-02 18:10:20
notebook Home 戻る  過去 未来