きみは
わたしのように怠惰ではないから
ひとりだけ
おとなになってしまった

きみに
あいたくてあいたくてあいたくて
なみだがでるけれど
かりそめに
いきるわたしは
きみの思い出に ....
ゆらりゆれゆく水面に
魚のかげはうつらない
深く沈んだ自転車の
かすかなひびきが ぽつり
雨をよび
あらしを誘う

梅雨の日々は湿っていて
すべてをひらたくさせる
私も 床も 土も
 ....
ころころと
ころがり逃げることばをおいかけて
さかみちをわたしもころがる
わたしとわたしをかたちどるわたしとの境が
あいまいなゆうがた

おさかなもとりも
ちらばりおちるかきの実も
わ ....
ゆびさきから ことばが
ほろほろとながれ
わたしのゆびは
とけてしまった

たいせつなものと
ことばのなかにうまったつめ
すくいあげたくても
ゆびはもうのこらない

あらたにかたち ....
またあした あしたねと
こどもがわらい別れる

砂利をふむ音
みずたまりに跳ねる土
ゆきはふらないけれど
明日は誰にも等しく訪れる

どんなに暗い夜も
窓から東を見ていれば
真っ赤 ....
たとえば空にうかびあがる
手足はばらばらの方角にむき
雲は行き手をはばむ
鍾乳石のように垂れ下がった祈りを
明日のわたしは眠りながらおもう

昼が去り
夜が迎えに来れば
わたしは指先か ....
あなたの
においをかぐ
首筋からあたたかいにおいが
たちのぼる

しずかにほほえんでいてくれれば
それでよかったのに
あなたは私のそばにたっていてくれる

あなたのくちびるは
やわ ....
くらやみのなか
腕をいっぱいにのばしたら
なにかに触れた
それはきっと
ふるい記憶

よどんだ海に
しずむ夜
咳きこめば
のどのおくから
ぷるんとした ことば が
こぼれおちる
 ....
細い道を一人で
ひっそりゆっくりあるいていると
背中をつめたい汗がするりとながれ
自分がほどけていくのがわかるのだ

おだやかにあれ
かぜとともにあれ
朝を生き 夜を生き
かぜのなかに ....
夕方に靴を履く
もちろん 新しい靴ではなくて
ここ三年で履きつぶした夏のもの

そらは虹めいて輝き
不安を風に運ぶ
自転車に乗ると
全て受け止めることになるから
わたしはひとり 川まで ....
ねむるように
愛しはじめたら
指先から
すなが こぼれおちた

これは
何の記憶?

貝の
うねうねとうごく足から
岩に
しがみついたフジツボの悩み
夢はくらくとおく
わたし ....
日が落ちて 暗い川に
すう とよぎる物がある
魚のひれに
背の高い草
それから
釣りのおじいさん
長い棒で
水をかき
橋をくぐる

なにがみえるのか
なにがきこえるのか
波紋と ....
しらない をおいかけたら
からかうように空をすべった
梅雨のあいまの明るい風に
しらない しらないと
はしって逃げた

いつだって
しらない は遠く
つかめそうな距離でも
生卵のよう ....
るら るるら るらら
鼻歌を歌いながら
自転車で駆ける

くすのきの下を
年中赤いかえでを飛び越えて
るらら りりり
きちきちばったをかごに乗せ
あおすじあげはは耳元に
るるる らら ....
霧雨に包まれて
ゆっくりと指を伸ばせば
あたたかく やわらかいものに触れた
眠らない夜に
きみを思う

海まで見渡せない橋の上
雲は川に近づき
思いを告げた
波紋に答えを聞きながら
 ....
誰が すきだなんていったのかな

ただ夢を見ていただけじゃないの?
ちいさな象が湖をはしり
サバンナを抜けて 浜辺まで訪れて
その細い鼻で塩水を吸ってむせたような
かわいそうなことじゃない ....
水平線をながめて
二リットルの水を浴びる
空と海の間の
相容れない一本の線は
わたしたちに にている

つまさきを砂に沈め
光を背にあびる
水はしみこみ
かわき
そして きえる
 ....
チョコレート色の夜が
しずくに溶けて 流れ出す
とろりとろりと
自分ばかり見て
しずかに ひそかに
排水溝へ落ちてゆく

私の足元を
暗い色のしずくが
うずを巻いて とりかこむ
逃 ....
あいしてる なんて
恥ずかしいことをつぶやいたのは
目をとじる一秒前

とけこむように夜になれば
のどの奥から舌をつたって
やわらかなわたしが外へ流れる
うごかない小指だけを
体に残し ....
雨は嫌いだ
なんてうそぶきながら
ちいさな人らが踊り始める
あかやあおやきいろやみどりの
ちいさな傘をくるくる回して
水溜りに波紋をつくる

ステップ ターン ステップ
ちいさな人らの ....
土の匂いに目を覚まし
光の朝に種をまく
爪の先に腐った葉が入り込み
くちゅりと匂う
一緒に植わっていようかな
れんが塀に背を預け
足を埋めて空を仰いだ

となりにはトマト
誰かの植え ....
ゆびさきを闇にひたして
子宮の中に帰ろうとこころみる
背の高いくすのきがわらい
絡まる根でわたしをとらえた

蝉のねごとが聞こえる
綿毛のくしゃみが聞こえる
トマトの放出する酸素が見える ....
むねがくしゅくしゅいたします
キャスケットに薔薇の花をつけて
襟を立てて真っ赤なスカートを膨らまし
人の多いところに行きたい気持ちでございます
右手には金魚
左手には白いパラソルを握り締めて ....
暗くなるまえにはかえってきます
さがさないでください
            ひふみ

電話のとなりのちいさな紙片にしるし
やわらかな革のサンダルをはいて
砂利をふんだ
わたしはこれから ....
わたしにまつわる
もろもろをかなぐりすてて
たびにでよう
ちいさなロディを
だきしめて

月のかたちのポシェットに
ハンドタオルとちりがみと
うすく赤いマニキュアと
それから桃のくち ....
木目の顔はきみ
横になるたび
天井にうつる

深爪のゆびを
きみに伸ばす と
枕元で なぜか
目覚まし時計がなる

きみはどこにいるの
答えず微笑んだままに
人差し指の月に照らさ ....
めにいたい夏のひかり
アスファルトも臭い
おんなのしろい服が
めにつき刺さる
ちぎれた草はかれ
みみずも土にひからびる

ほした服はゆれ
あっというまに乾く
猫よけのみかんも
ぱり ....
ぱちん

がまぐちをひらくと
ごえんだまが三つと
ごじゅうえんだまが二つ
それから ひゃくえんだまがひとつ
奨学金のはいるまえは
それでいっしゅうかんを過ごす

こむぎこと
おこめ ....
となりのとなりのとなりのへやの
めざましどけいがなりやまないので
ゆうがた六時半にそとにでた
まだ日はしずまず
ふだんよりずっと赤いかおで
西のやまの端にキスするようだった

あんがいあ ....
ふと
くらやみの中にきみのてざわり
毛布をかけて
おなかの辺りをぽんぽんたたく
やわらかな毛はふしゅうとへこみ
きみのぬくもりはそこに ない

ねつけないよるに
きみのよんでくれる詩集 ....
竹節一二三(72)
タイトル カテゴリ Point 日付
そっと自由詩112/8/5 23:53
湿った日々自由詩507/7/11 1:04
ころがる自由詩307/6/29 0:03
ながれるように自由詩206/7/21 23:52
日々を自由詩206/1/9 19:36
新年に自由詩106/1/3 10:08
ともにあること自由詩005/12/26 14:56
ことば と自由詩005/12/17 1:52
優しい場所自由詩605/9/30 17:34
憂鬱な日々自由詩005/9/29 18:12
ねむらない自由詩305/9/28 23:54
暗い川自由詩1205/7/13 23:59
しらない自由詩805/7/11 2:29
そらへ自由詩2*05/7/8 0:25
梅雨ときみと自由詩205/7/2 20:57
請う 恋を自由詩305/6/25 23:36
夏のからだ自由詩305/6/25 1:44
雨のあいだに自由詩505/6/21 15:52
ゆめのなか自由詩205/6/4 2:43
ふりつづく夏の雫に自由詩205/6/3 1:08
いきる自由詩3*05/5/30 1:27
ひそやかに自由詩3*05/5/24 2:41
くしゅくしゅのむね未詩・独白204/9/12 23:32
おきてがみ自由詩404/9/12 20:40
ロディにのって自由詩204/8/26 21:20
ねむる自由詩304/8/3 22:11
ひかり自由詩2*04/7/27 14:29
おかいもの自由詩504/7/18 22:07
日がしずむころ自由詩904/7/16 23:47
いなくなる自由詩404/7/15 1:14

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