君は歩いてゆく
お気に入りのハットをかぶって
お気に入りの傘を片手に
街の路を 野辺の道を 森の径を

誰かに出会うと
とまどったような ためらったような
微笑みと共に挨拶を交わす
そ ....
銀の三角形の頂点から
菫の花が
咲く

波打つ白鍵と黒鍵の上を
踊るのは
かすかに虹色を帯びた
透明な球体たち

回転木馬のまわりを
ほの甘い唇たちが
はばたく

真珠色の円 ....
冬菫に
ささやく想いは
遠い日の

    夢のおとした
    かそけき影は
    ひそやかな紫

冷たい風のなか
冬菫に
ささやく想いは

    遠い日の
    夢 ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
中空の細い運河を
小さな郵便船が遡ってゆきます
あれには僕の手紙も乗っている筈です
誰に書いたのか 何を書いたのか
とうに忘れてしまいましたけれど

ひんやりとした透明な砂漠を
彷徨って ....
冬の薄灰色の空に
硝子の太陽
私が歩む通り沿いの柵には
光沢のない有刺鉄線
遠くに鉄塔群

私の今のこの歩みは
自分の部屋へと帰るためだが
それでいて
どこへ向かっているのでもない! ....
ひとり夜を歩く
頭上には
ペガススの天窓

自分の足音が
なぜかしら胸に迫る
何を思えばいい
何を どう思えばいい

道は暗くしずかに続いている
心をどこに置けばいい
心をどこに ....
分光器の憂鬱
天象儀の退屈

を あざやかにうちやぶる角度で
挑むようにひらり舞い込む
あやうい好奇心

極光のように繊細な予感を追いかけて
けれど焦れても
いちばん深い記号は
そ ....
明けの空は大きな真珠
忘れてしまいたいことだけのために
忘れきれず虚ろにゆらめいてたたずむ

彼方からさびしく冷気はながれ
明けの空は大きな真珠
ほのかに
虹いろの明るみを見せながら
 ....
身のまわりの色彩が不思議と淡くなる夜
胸のうちに浮かぶ
いくつかの
花の名

鍵盤をやわらかに歌わせる指たちの幻

夢のうちを
あるいは予感のうちを
あえかにかすめていった 星のよう ....
マリオネットたちの仮想的革命が
左心房をよぎる
窓の外では夜の街が
書き割りのように翻る
カレイドスコープの中で廻転するのは
天使たちの落とした翼が
あまりにも降りしきっていた日々だ
知 ....
屋上の青空

風向風速計

一日にいくたびも南中した

僕らの無邪気な太陽
憂鬱色の瞼のような
夕暮れが降りる頃
うすい光をまとった
ひと群れの唇が窓のそとを過ぎる
観測所には誰が居るんだ?
あの夜に僕らがはじめて気づいた
色とりどりの破綻は
今もまだつづいているんだ
君のあるいは君たちのともした火
砂漠の向こうから送られるシグナル
忘れられた庭園の扉 ....
けれども胸は 青く傾斜してゆく 怯える意識には
透明なふりをする思惟が 蔓草のようにからみつく
窓の外では 涙のように 果実の落下がとめどなく
そのさらに遠く 地平の丘の上では 二つの白い塔が
 ....
 杭
 重い空から
 雨のように降ってくる杭
 黒い杭
 枯れた大地に次々と突き刺さってゆく

 私はそれを
 何処から眺めているのか
 目を閉じれば
 瞼の裏に火花が還流する
  ....
ほの甘い色の胞子が降りしきる午後
小さな昏い紫の遊星の影が
君の瞼をよぎってゆくのを見る

チェス盤のうえ
気まぐれに並べられた駒たちのあいだを
七角形の記憶がすり抜けるように踊っている
 ....
増幅
エーテル?

夕暮れ

観測
葉脈
カスケード

飛沫!
関数
カーテン
稜線
意識

アトリエ
攪拌
サイレン
褶曲……

帽子
飛行船

座標 ....
僕の黒い革靴と
君の銀のパンプスとが
白黒市松模様のなめらかな床の上を
並んで踏んでゆく
とうとう此処まで来たんだね

誰も居ない 此の世の果てのバルコニー
数メートル先 白い手すりの向 ....
(チューリップが 咲いたよ)

君は少しずつ
透きとおって消えていった
虹色の血液をめぐらせる
心臓と血管だけは
しばらく其処に残っていたが
やがてそれらも
透きとおって消えてしまった ....
骨格だけの春が
幾体もおどっているよ
薄桃と薄青が
まじりあうあのあたり

もういないはずのひとと
話をしたんだ
そうだよ それは夢だった
けれど

粒子状に還元されてゆく情景
 ....
この身に深く刻み込まれた位相――

どこまでも融け合いながら
どこまでも引き裂かれつづける二体
輻輳しながら
拡散しつづける幾条もの光線

交錯する遊離と帰還 上昇と墜落

このうえ ....
沈黙をファイルしつづけた理性は

つぶらな意識をふとまたたかせ

早春の空にくりひろげられる

光のハープを聴いている
わたしたちは 底悲しく
わらいあう
そして指をつなぎあい
小径をゆく

菫の花がそこかしこに
ふるえるように咲いている

わたしたちは 歩きながら
優しげに 言葉を交わす
でも気づ ....
時折天井から記号が滴る

灰色の水槽の中には青白い都市が浮遊している

祭壇めいた台の上で
少年はくる日もくる日も
華奢な実験をくりかえす
時々淡いひとりごとを呟きながら

ほのかに ....
いちばん旧い校舎の
さらにその裏
もう誰も見に行くこともない百葉箱
そのそばに菫が咲いている と
君が云ったのが
はじまりだった

ふたりはそれからそこで
いくつかの秘密をかさねた
 ....
すべての数が
奇数であればいい
あるいは
すべての多角形が
三角形であればいい
それもできれば正三角形で

そんなことを思ってしまう朝はおそらく
何かをあるいは誰かを
探す夢を見てか ....
しんえん と呟きながら
浅瀬をえらんで 辿ってゆく
夢をつたうひんやりとした風が
時折 うなじに触れてゆく
誰かが指をつないでくれているような
そうでないような気がする

深淵
踏み込 ....
やわらかな午後の風が吹きこむ窓のそばの

薔薇色の安楽椅子でまどろんでいる地球に

影をもたない人がひとり そっと近づいて

あえかな接吻をひとつ 残して立ち去った


 ....
暗示は歩いてゆく
眠りをめぐる回廊を
重ねられた便箋のあいだを
どこかためらいがちな
静かな足どりで

誰ひとり知り合いのないような
それでいて誰もに挨拶をしているような身ぶりで
暗示 ....
塔野夏子(471)
タイトル カテゴリ Point 日付
歩行者自由詩4*09/2/21 11:15
早春断章[group]自由詩1*09/2/11 18:23
冬 菫自由詩4*09/1/25 11:18
四行連詩 独吟 <樹>の巻[group]自由詩4*09/1/9 11:16
忘却プロトコル自由詩7*08/12/27 11:38
硝子の太陽自由詩3*08/12/17 11:04
ペガススの天窓自由詩6*08/12/5 11:08
点在の火自由詩9*08/11/29 11:44
明けの空自由詩2*08/11/19 10:45
ひそやかに自由詩9*08/11/9 11:02
夜の観察者自由詩4*08/10/27 11:25
夏の記録帳[group]自由詩2*08/10/11 11:29
六月間奏自由詩7*08/6/23 20:05
きらびやかな兆候自由詩8*08/6/13 20:51
月のない夜自由詩20*08/6/1 16:22
杭・火花自由詩4*08/5/25 10:14
春の桟橋[group]自由詩7*08/5/11 10:37
練習曲自由詩0*08/5/7 17:47
此の世の果てのバルコニー(Last Dance)自由詩4*08/4/13 11:18
春の窓辺で[group]自由詩7*08/4/5 11:21
春の骨格[group]自由詩6*08/3/23 12:29
syzygy自由詩4*08/3/15 17:16
透 過[group]自由詩10*08/3/7 20:00
菫の小径[group]自由詩9*08/2/21 20:27
実験室37−C自由詩16*08/2/11 13:12
菫と百葉箱[group]自由詩5*08/2/1 21:28
あるいは自由詩8*08/1/25 20:20
拡 散自由詩12*08/1/13 11:09
淡い神話自由詩7*08/1/1 10:14
暗示は歩いてゆく自由詩11*07/12/11 21:39

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