私はいちおうセミプロ書評屋である。書評屋の仕事は、おえらい批評家の仕事と大きく違う。書評屋というより、紹介屋と言うほうが近い。紹介屋は、だいたいにおいて「この本は面白いんだから読め!」「この本はくだらんから買うな!」などの簡単な評価や、「この本はコレコレこーゆー内容です」などの紹介を仕事にしている。微々たるものだが金もらって書くので、仕事であることは間違いない。そして仕事であるからにはきっちりこなさなければならない。文字数厳守、〆切厳守。不快な表現や難しすぎる言葉は使わないこと。もちろん差別用語をつかうなんて論外。筆者に無断の直しも覚悟。あるていど無理な要望を出されてもできる限り対応。それが仕事とゆーもので、紹介するひと、依頼するひと、お互いいくらか利益を得て、経済はまわってゆく。
それに較べて詩を書くひとたちは……なんて愚痴を書く気はない。私がここで言いたいのは、詩の世界には詩の紹介屋が少なすぎるんじゃないか、しかもその数少ない紹介屋は充分な評価を受けてないんじゃないか?ってことだ。詩の紹介屋であって、批評家じゃありませんよ、単なる紹介をするひと。読者と作者を結ぶ仲人みたいなもん。詩本文の引用なし(か、ごく少なめ)で、まだその詩を読んでないヒトを誘うような文面で、ネタばれ厳禁で、詩を紹介。こういうの、けっこう難しいのか、やってるひとをあんまり見ない。ネットだと、私の考える「紹介」にいちばん近いことをやってるのは、「ちま情報」(
http://www.hat.hi-ho.ne.jp/nao404/)か。「触発する批評」(
http://www.poetcrit.com/modules/news/)にも紹介的な記事がある。または詩人ギルド(
http://www17.big.or.jp/~kinro/index.shtml)の「推薦詩集」。ただし、「ちま情報」の紹介はあくまでHPの更新状況紹介であって、詩の内容にまではあまり言及がない。詩人ギルドのほうは、あまり活発でなく、更新が遅い。ギルドの方には私も参加しようとした時期があったが、だんだんやる気がなくなってしまった。
私は、それでも、「紹介」を重要なものだと考えている。私たちは、紹介―――情報がなければ、偶然をたよりに詩と出会うしかない。作者自身による自己紹介でもよいといえばよいのだが、第三者による情報の方が客観的であてにできる。読者にとってみれば、自分好みの詩と確実に出逢うために、確かな情報が必要だ。作者にとってみれば、自分の詩を宣伝してもらえ、ふさわしい読者に自分の詩を届ける機会が増える。読者にも作者にも利益がある。
しかし、紹介屋にはほとんど利益がない。ネット詩の世界では経済がまわってないのでいたしかたないんだが、労力に見合うだけの報酬がないのはあまりにむなしい。交流と感想は、やりたいからやってることだと言い切れる。しかし、紹介となると無償ボランティアのような気がしてくる。「ちま情報」の奈緒さんや、ギルド推薦詩集のかのっぴさんや渦巻二三五さん、「触発する批評」での原口くんなどは、実によくやっていると思う。ああいう紹介は「仕事」と言ってさしつかえないものであり、もっと評価されるべきだ。できれば金銭で報酬が支払われるべきだ。私が大金持ちだったら、彼等に正当な労働報酬として原稿料を支払いたい。
でも私は、実に実にビンボーでありまして、とてもじゃないけど原稿料なんて支払えない。自分が生きてくのに必死なんであった。詩に時間を費やしすぎているので、労働時間短くて時給が高い仕事を探して、工場できっつい夜勤の日々……セミプロ書評屋だか、生産現場労働者だか、最近ではよくわからなくなってきて、ふと気が付くと12時間連続で携帯電話部品をハンダ付けしていたりする。これじゃ詩を読むヒマも書くヒマもないじゃないかー? おっかしいなあ、なんでこんなことになったんだろう。そうだ、金がねーから悪いのだ。詩の世界で経済がまわってないからわりーのだ。せめては正当な労働報酬をよこせ! 金だあっ、金!!!!!!
失礼。執筆者佐々宝砂がまたまた取り乱したため、少々ノイズが混じりました。簡潔に結論を述べて、この小文を終わらせていただきます。
「詩の紹介は批評より軽んじられる傾向にあるが、紹介の仕事はもっと評価されるべきである。」
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