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休日の朝、西野は8時ぴったりに目を覚ました。
「なんてことだ! 8時ぴったりに目を覚ますなんて! きっとこれは、俺が幼い頃母親に欲望を抱いていたから罰が当たったにちがいない。時間のやつが、世の中の ....
降れば泣き濡れる弱虫の彼女は
大雨の通知表に耐えられない。―
リッツのヴァイオリン弾きの彼女、
今日も目を反らし、聴かせてくれる。
黒い雨傘は、これは僕のためのものだ。
孤独を繕う句読点を無造作に並べて
線でつなぎとめただけの街
意味のない言葉は
空白を満たし
ちからなく溢れた
(思いのほか冷たい。)
それから
未消化の確執のように
近づいて
近づい ....
ちらつかず
そ、と留まっている、あれは
振り払えぬ外灯を振り払わず
硝子に帯びたままの、あれは
蛾だよ
その在り処では
既にひとつの夏が締めくくられている
夏ではない今となっ ....
遊ぶために生まれてきたんだ
それだけだ
それが人間だ
仲良くみんなで遊べばいい
それなのに俺はここ最近
とらわれてる
檻の中に
自分の模様に
なあ月が
見え ....
かかとが脱げちゃう
つま先が脱げちゃう
溶けそうな足の付け根
そっと触れてみたんだよ
小指が脱げちゃう
親指が脱げちゃう
ほんのりカラメルいいにおい
外で野良猫鳴いてるよ
....
ムーンは名犬ではなかった
おれが不良にからまれたとき
まっさきに逃げた
のびているおれのそばにきて
目のよこの傷をなめた
ムーンは名犬ではなかった
堀内と土井と高田の
サインの入った ....
Is that a banana?
No,it isn't.It's a gorilla.
あれはバナナですか?
いいえ あれはゴリラです。
俗にいう一人の少年が英語を見限った瞬間を
....
※ 頭が痛くなったり、具合が悪くなる場合があります。
※ another あなたは12月生まれですか? Yes/No
※ another あなたは11月生まれですか? Yes/No
※ an ....
眼科で診察中
次 眼を洗うから そこに座って待ってて
と 看護婦さんに言われて
長いすのはじに腰かけ
緑内障の眼の見える範囲などかかれた
ポスターをみる
すぐ 隣りに 杖をついた ....
1
西野は佐川透あてに手紙を書いていた。佐川は西野の年来の友人である。
「……先日はお招きいただきありがとうございました。佐川君の知的刺激にあふれた話を聞けてとても楽しかったです……私はと ....
空を行く
風ほどに軽く満ちていたい
鳥の翼を
ささえ得るほどに
空に吹く
風ほどに軽く満ちていたい
様々な音を
伝え得るほどに
何かあるように見えなくて
それでいい
雲はた ....
正常な者は立ち去れ 死の言葉を目撃してはならない 幸福を求めるものは立ち去れ
二十二時二十二分二十二秒二十二二十二二二イコールイコール類コール胃胃袋増増殖食食
ああ、気持ちええ。きもちいい。 ....
丸い生きもの
閉じかけた
小さく細いまなざし
右よりも左が大きい
風で傷んだ
艶の無い肉体
自分のための四肢を失い
うるおいだけがあふれんばかりの
何も感じず
何も見 ....
あれは忘れもしない
一年前の8月6日
仕事を終えて
家に帰ると
あなたは待っていた
フリルのお母さんエプロンを
ひらひらさせて
おかえりなさい
待ってたよ
ばんごはんの支度が ....
石灰岩を持ち出すと秘密が暴かれる
理科室の白衣はいつもハンガーにかけてあって生きてるみたい
夜十時にすべての生徒がその話を思い出し
目を覚ます時のテレパシー
放射状に伸びてちらばる色付き針金
....
パンダの毛皮のコートが欲しいの
と、彼女は言い、おれは上野動物園を襲撃した
帰りは
おれと弟のふたりで
パンダが抱きついたままのタイヤを物干し竿にぶら下げ、
それぞれの端を肩に担いで走 ....
濡れている地面を
数を数えながら一歩ずつはじいていく
はじくたびに足の裏がわから波紋がでてくる
地上という大きなかがみの湖にどこまでもひろがっていくどこまでも
やるかやられるかみたいな ....
痛いとかかゆいとか
間抜けな人は嘘でもいいやと
マルをつけた
早く治るといいね
ピンクが好きだと言ったのね
そんなのもう
鳴り響かない
ずっと弾いてないから
静電気を放った
早く ....
カタカナの文字をでたらめに選んで
並べてみる
見たこともない言葉ができあがる
けれどたいていは
どこか遠い国の言葉を探せば
なにがしかの意味が見つかるだろうし
ネットで検索すれ ....
辛抱堪らんな溜まったまんまだったわ私、ラッカーでも浴びたかのようにして息苦し、
ほら空!
見ててね、荒れてる雲の鱗粉が乱交してんだわ正午っから馬ッ鹿。
ずりい、ずりいのね。
で、
痺れた豪雨 ....
※この詩は、下の行から上の行へと読んでください。
人間というものを。
私たちは知らなかったのです。
私たちアンドロイドは、母の葬式で涙を流しませんでした。
だから私たちアン ....
毎度のことながら、
女にふられたので、
ラブホへ行って死のうと思った。
どうしてラブホかといえば、
情死かと思われるかもしれないからだ。
死んだ後のことなどどうでもよいかと思えば、
にんげ ....
暴力的なラフランス
狂ってごらんなさい
もともと腐った友達と
一センチの三枚刃
氷砕いて乳首の前でひるんだ夕べ
焦げつく匂いが屋敷の合図
ジュマペール黒のJ
歌っていたら泡吹いて倒 ....
寝起きは、不機嫌
な ぼくなので、
世界の終わりの
ような顔をして、
何もかも、どうでも
よくなっている。
なので、
ぎゅ ぎゅっと 後ろ
から だ きしめて、
さらりと キ ....
傾いて
その周囲に小さな
豊穣を張り巡らせながら
季節の同調を軽んじてゆく
絵の中の成果
熟れすぎたくだもの
(あるいは くだくもの)
裂かれるために実る
歯のいのちの前でおびえるもの ....
夜明けの街を
一台のインクジェットプリンターが
走り抜けていく
どこからか受信した文字のようなものを
ありったけの紙に印刷しながら
おそらくそれは全力で
疾走していく
雨上がりな ....
カレーライスが食べたかった
あなたと通った高田馬場早稲田通り
夕食にはちょっと早すぎたけど
なにげにカレーライスが食べたくなった
あなたの好きな福神漬けをたっぷり乗せて
おひやをスプーンでか ....
{引用= あのひとの記憶がしずむ海は、いつしか防砂林で見えなくなった
越えられない高さに、すこし安心した}
砂が、降って
深く深く沈んで 底まで
皮膚 ....
1.
手紙は書きかけのままテーブルの上で黴びてゆく。
青黴、赤黴、黴の色ってそんなに単純だったかしら。
ふくりと黴が起きあがる、
まき散らされる胞子は常に薄い紫で、
私の部屋はすっかり煙 ....
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