すべてのおすすめ
タクシーに乗って
道を歩く
こんな時間までお仕事ですか?
運転手が尋ねるので
ええ、まあ
と答える
今日は暑かったですね
暑かったですね
本当に暑かったのだろうか
....
朝日影にふくまれた わたくしの陰影が
ありのままの白い骨格で
よるべなく
この家に嫁いで来たのです。
その
わたくしが、
わたくしであるが故に、
わたくしを焼べねばなりません。
そ ....
北の北の大みそか
美香子はおこたでうす茶色の玉ねぎ一つ見つめてた
小さなめんこい玉ねぎを
電気きれた ガスもとまった お水もとまった
おさいふには一円玉が2つだけ 石油を買いにいけない ....
ー盲目ー
まだ陽の上らぬ未明の朝
風紋が鮮やかに浮き出る灰色の砂丘を
暁の月へとむかう 黒烏
凄絶な月の海に至る道は
煌々と白い光に照らされて
泥だらけの足で踏みこんで ....
2007/06/05
かりんとうを
長万部で買う
駅の待合室には
仕事にあぶれた人たちが
冷えた弁当をストーブに載せて
暖めている
ヤカンから湯気が出てい ....
水たまり
シロツメクサ 浮く
かがむ肌 薄く
おちる髪 黒く
むね
百合のようにかぐわしくは
なく
シロツメクサの、浮く
水たまりに
これからめぐりゆくだ ....
水平線に帽子を被せている人を見た
世界と対等に向き合うということは
それほど
難しいことではないのかもしれない
子供たちに蹴飛ばされた波が
海の向こうで
砂浜に描かれた絵を消している
....
お父さんが紙をつくってる
つくった紙を僕が並べていく
それがお父さんの廊下
なんだか淋しいところだね、と言うと
お父さんは土を持ってくる
足りないので
何回かに分けて持ってくる
だからお ....
遅れて響く真昼の音が
午後をゆらりと追いかける
畏れのかたち
雲に去られた
空のかたち
緑と金が
ひらいては呼ぶ
空の端 地の辺に
呼び覚ます
呼び覚ます 火
....
帰宅する途中
コーンスープの匂いがする
家の前を通りかかる
中から男女の諍いの声が聞こえてくる
少年が一人
玄関の外に立っている
ドアにもたれてただうつむいている
どうかあの少年が
私 ....
はばたく度に
世界は変わる
窓を重ねる
まぶた手のひら
グラス フォーク スプーン ナイフ
午後を切り取る宴の先に
波のように繰り返される
拙い夕べの唱がある
....
お前の母さんだよと恐竜が言う
地下室の扉はひんやりしている
地下室の天井から縄が一本降りている
恐竜が肩を抱き、母さんに会いに行こうと言う
恐竜の皮膚はざらざらしている
....
思い出し笑いしてる花びらの話
目があって目が散って
隠そうとしたら吹き出した
晴れた空の草むらで
花びらはまだ続いてる
散らばった四本の足に巻き付いた
始まりと終わりはいつも仲良し ....
新しい町で
食料品を買う
就寝の手順について
思いをめぐらす
建物はどこかに
年輪を隠し持っている
タンポポの茎が
配管されている
新しい町への食欲と
昼時の食欲と
どちらが本 ....
寒い、と言うと
あなたはわたしの肩に
そっと
うなぎをかけてくれた
ぬるぬるして
うなぎも鳴くのだと
初めて知った
うなぎのさばき方を
教わったのも初めて
大人の恋は
....
知らぬ盛り場の暗闇で
合金が茹だり少女の吐息を赤く待つ今夜
古い毛皮を人毛と取り違え
それは
それでも良いのだと電灯の下で上手くくすむ古母
切れた人毛から吹き出す液体を照らす太陽は
常 ....
自らのベッドで夜が襲ってくる日
雨はかなしいという詩人と
孤独はさびしいという詩人の
穴という穴にキューピーマヨネーズを
入れたくなってしまった自分は
果たして自らが望んだ本当の自分なのだろ ....
道端に表札が突っ立っていた
YAMASITA、とだけあった
YAMASITAさんとはぐれて
困っているようだった
家までの道順を教えてあげたが
わかりにくいところもあったので
いっしょに行 ....
木曜日の朝の雫が絶叫をあげている。
尖った街頭の佇まい。
通勤の熱気をはおったDNAのひかる螺旋の群は、
わたしの散漫な視覚のなかに、
同じ足音、同じ顔を描いていく。
振子のようなまなざ ....
{引用=
***
}
ashley's ashes
黙々と浜辺で流木をひろい、こわきに抱える
あるく
波打ちぎわが
日没の汀が
潮騒のざざわざわ
降るまえにあれを灰にせね ....
山道を左に入って
舗装されていない砂利道を1キロくらい
そこに
わたしとあなたの
思い出が
白っぽい蜃気楼になって
佇んでいる
わたしは怖いから行かない
たぶんあなたも
....
{引用=
きみがとなりにいて、まつげの
触れるくらいとなりにいて それは
おどろくほど退屈で いとおしい
午後で}
きのう、オジギソウが発芽して
日記にそのことは書かなかっ ....
朝起きると、
夫の蟹を食べる。
水のきれいな土地で生まれ育った夫の蟹は、
沢蟹に似た味がして、
なかなかの珍味である。
蟹は大抵、
夫が寝ている間に、
湧 ....
朝、自転車に侵入された
ちょうど起きようとしているところだった
カロロと卑猥なペダルの音を耳元でさせ
とても恥ずかしかったが
俺は初春のように勃ち
自転車は器用に車輪をたたみ侵入してきたのだ ....
私たちは互いを必要としながら
それぞれの場所で夕陽を眺め
明日の湿度を欲しがり飲み込む振りをする
あなたと私は
埋もれてしまったいつかの夏に
栞を置いたままかもしれない
そ ....
男は体育館の裏に
女の歳の数だけ
星を埋めた
女は男のために残しておいた
夏の一番柔らかいところを
まだ寄木細工の箱にしまってある
詐欺師の家では
換気扇がゆっくりと壊れて
ま ....
Ser immortal es baladi;
menos el hombre, todas las criaturas lo son, pues ignoran la muerte;
lo ....
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ひかりは、不思議な佇まいをしている。
向かい合うと、わたしを拒絶して、
鮮血のにおいを焚いて、
茨のような白い闇にいざなう。
反対に、背を向ければ、向けるほど、
やわ ....
酒がキレた俺とアンちゃんは
「大きな砂浜のある」駅にあてもなく降りる
行商のオッさんはしゃべり好きで
列車の走るあいだ ずっと
ハマグリが夢をみる話とか
食べられる星を手に入れた話とか
....
駅前に
都会が落ちていた
命のように
きれいだった
なくさないように
拾って
ポケットにしまった
そして
三年振りの待ち合わせに
僕は現れなかった
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