パスタを食べる手を止めて
とめどなくおしゃべりをつづけるミサキちゃんの隣で
無秩序に放り出された言葉たちが
ひっそりと息をひそめている
深夜のファミレス
心の扉からあふれでた
言葉の行 ....
やさしみの
さかなが
しずかに
みなもをおよぐ
やわらかな
さざなみは
しあわせなきおくを
みたそうとする
やきつくされたあさ
さいれんがなりひびく
しきはまた ....
さよなら、さよなら、
記憶を解き放って
遠ざかる夏の
四角く切り取られた 空
枠からはみだした場所では
かなしみによく似た顔の
ぼくたちが
今も、酸欠になっている
....
夕暮れに一緒に歩く帰り道 二人並んだ長い影見る
目の端に映る紅、桃に白。君が好きだと言った秋桜
棘刺さる胸の痛みを誰や知る ムクドリのように色には出難きに
外にいて見るともる灯の暖か ....
皿をかさねる
どんな料理でも
皿が汚れる
皿をかさねる
指先に祈りを込めて
汚れを落とす
蒸気があがる
床下に壁の中に
張り巡らされた水道管から
私は皿 ....
暑苦しい部屋の中で
ぼくはひとり
蓋を開けたばかりのコーラの
二酸化炭素の泡のように
空気中に溶けてしまいたい
みんみんみん
だれかがないてる
....
さらさら、と流れる時間。
アナタと話をしましょう。
永遠などないから。
流れる間。
話をしましょう。
ひっくり返さずに、さらさら流れ落ちたら。
お別れです。
....
目から水を飲み
花になり
やがて言葉に
うたになる
数歩のぼる風の音
ひとつひとつの段の上に
しずくを含んだしずくが震え
空を囲む樹を映している
触れてはこ ....
『シッコ』だってゲラゲラおもしろーい訃報を伝える手紙も増える
ロボットだから、といじめ続けていたら死んでしまって学会大騒ぎ
1m50のバーを跳び越えてそのまま自分のベンチに戻る ....
無気力な日々を過ごした助手席で明ける夜から逃げ続けていた
草むらに仔猫のように丸まったビニール袋が孤独をくるむ
光無き音の世界の悪夢なら早く醒めてと手を震わせて
口走る言 ....
天気図に愚妹押し当て銅線引く
鞄に灰詰め旅人塔遠くから見る
時が止まれる木を育てている砂漠の真ん中
零時着現地解散十九頭
立ちすくむ響きの行き止まりの野原
月にあるという ....
「蒼い旋律」
記憶の中から抜けて舞う譜面一枚奏でてみれは゛半音の思い出
セロを抱え閉じた目の中咲く花の絡む紫苑は夕闇の弦
放課後の音楽室でくちづけを交わ ....
窓の外を見ると
宇宙だった
宇宙船に乗った船員が
私の姿をして
窓ガラスに映っていた
どうしようもなく
地球が恋しくなった
この景色を君に見せたくて
写真付きメールを
ここから送るよ
積乱雲を夕刻に照らし
今日の終わりの貌
南南東に流れてゆく
身代わりの月は
時々かすみ
雲よりも遠くで
私を笑っている
またたく稲妻が呼ぶ
....
過去も現在も未来も
灰色うさぎを抱きしめて
この空の下でジャンプ
日常という名のステレオタイプ
要らなくなったものは環境にやさしく
フリーマーケットで ....
奪われた約束までの昇階段 枷を片{ルビ瞳=め}に数え続ける
君の名を叫ぶ周波にふらついて砕けた硝子は星の模細工
慰めで引き剥がされた青のフェイク{ルビ鎖状=さじょう ....
紙飛行機の届く距離メールで飛ばす「さっきはごめんいいすぎた。」
ひまわりの背を追い抜いた彼を息子と呼べないもどかしい夏。
夜ごは ....
声高に客呼ぶ声に客は無く
山の如くに蟹を売る店
降りそうな空を支へて木蓮は
仁和寺の庭に煙るごと咲く
尼寺はどうだんつうじに囲まれて
静かな一角春陽をまとふ
雑踏はめっきり ....
こう見えて意外と貪欲なんですあたし
なんてセリフを
後ろのボックス席で女が歌うように言う
大阪
アメリカ村
マクドナルド
午後2時
朝の天気予報での降水確率は80%で
その ....
てのなかにこっぷ
すこしあつでのあおい
そうだがらす
とじこめられたちいさいきほうは
えいきゅうとうどのなかのきぼう
みどりのゆめをみる
てのなかのこっぷ
やわらかでかたいえきたいの ....
DIVA
響きのないところに唄は産まれ
伝えようとしている。
幾つかはこぼれ
すでに無くなったのだとして、
ひとつひとつ、
朝日に撫でられて ....
心配そうに見つめる 君 「大丈夫だって」
言い聞かせるように繰り返していた あのとき
なんで 素直に 「ありがとう」って言えなかったのかな
隠してばかりだった 隠していれば強くなれると思って ....
うめぼしのソファーに座って
染み付いたズボンを僕ひとりだけで舐めた
醒めながら 醒めないよう
従順なイルカの飛沫の上で
一緒に眠ろうって誘い込んだけど 君は黙ったまま
いっそのこと抱 ....
薄く目を開き
ぼんやりと霞む
蛍光灯に
壁や
柱は
照らされて
土壁に
生まれた
生きた
死んだ生物の
擂りつぶれた亡骸が
ジッ と
燐光を放っては
塗り固められているの ....
滲んだ肌に香水が匂う、
視覚からこぼれた淡い影たちが
発せられない声とともに
音もなく、永遠へとむかう
冷たい未来の交じった
柔らかな過去の感触がまだある
つい今しがたも、
昨日も、 ....
猿が落とした果実も猿もやわらかい
蔓草ピタリと止まり中二階のある家
連呼して草原の上を吹きわたる
老人生き存え殺風景をかくのみ
霞破る舌なめずりに継ぎ目なし
近眼に花火打 ....
「ツイン・ブルー」
エヴァー・ブルー恋に名前を付けるなら見つめあい回す地球儀の色
夏休み残りの日々を数えつつ青ばかり塗る絵日記の色
「おやす ....
「海恋し潮の遠鳴り・・・」
瑠璃の雨洗いざらしのシャツを染め忘れえぬ日の海へ誘(いざな)う
夏座敷懐かし祖母の生家にて薄き格子のかげとまどろむ
逆光に揺れる向 ....
ほかの季節は
ただうつろいやがて消え去るのみだが
夏だけは
爛れ朽ち果てそして亡び去るのだ
あの日
あっというまに難破した僕らは
流木にもなれずに
世界中の海に散らばった
絶え間なく打ち寄せるくらやみの音色に
安心してしまいそうな
ちいさな木片
ほんの少しの誤り
いく ....
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