落日
蜃気楼のよう
だけど蜃気楼じゃない
焼かれるのは
空じゃなく
今日という日の末路
果てるような
限界線
焼かれるのは空
じゃなく
君の残した想い出は
遥か遠く浜茄子咲く北の国で
いつも優しく眩しいほどに輝いて
ここまでおいでと僕の名を呼んでいた
君の残した思い出を
僕は今超えようとしている
越えることなんて考 ....
よく晴れた日の午後
逃げ場の無い闘いに疲れた僕は
ベッドに寝転がり
重い日常に汚れた翼を休めていた
ラジオのスイッチを入れると
君の{ルビ唄声=うたごえ}が流れていた
窓の外に ....
悲しみにくれるとき
いつも夕焼けを見つめていた
悲しくて涙が止まらないとき
いつも月が輝いていた
夕焼けの向こう側や
輝く月の世界に行きたくて
行けない自分がまた
やりきれなくて
....
悪いのは手
あなたの
私を抱きしめた
悪いのは手
私の
背中を探しあて
ことばとは
たぶん違う生き物が
私の中で
惑う
戸惑う
力強く
さみしく
やさしい
....
ぴちゃぴちゃと
水の跳ねる音がして
君が
夜に頷いて
時間
我慢した方が
いいけど
月が
助手席で
背中を折って
ぴちゃぴちゃと
水の跳ねる音がして ....
奪われていくだけで
体の細い先っぽから熱
低い空に流れていく
雲に穿たれた青空
なくなってから知るのだと
ひとは言うけれど
得てすらいないのだ
失う事すらできないのだ
小舟 ....
右目がポケットに落ちた
左目を瞑るだけで
見なくて済むものは見えなくなったけれど
溜まっていたゴミや砂が入って
右目からは涙が止まらない
あの人のズボン泣いてるみたいだね
と言う男 ....
屈めた背中を ゆっくりと伸ばすように
季節は移り変わる
それは水指に潜む 小梅の性
三寒四温の質感を受けいれては ひとり悦に入る
(ああ 春は素敵な季節
(水指の渇望は
(滴り ....
ブランコから見た空は海に似ていた
悲しみに揺れるように
君はぎりぎりの角度で空を見る
浮かべた涙をこぼさぬように
近づく地面を遠ざけて
君はぎりぎりの角度で
懸命にこら ....
名前のあるものを信じない
だからまず、二人
名前を捨てた
形のあるものを信じない
美しさだけを模倣する
{ルビ仄=ほの}かな{ルビ星行灯=プラネタリウム}をとざして
境界をつく ....
背なか 背なか
もたれかかった珪藻土の壁には
真昼の温みが宿り
後ろから
春の衣をふうわり掛ける
あし
足もと
埃だらけのズックの下で
蒲公英は蹲り
カタバミが少し緑を思 ....
風が吹いていた
風のように母は声になった
声のように鳥は空を飛んで
鳥のように私は空腹だった
空腹のように
何も欲するつもりはなかったのに
母についていくつか
願い事をした
....
切り絵(題材)
「少女」
ただ真っ白い紙でした 私たち
切り絵師は 無を有にする
柄に美しい細工を施した
銀色の先端鋭いハサミで
すんなりと手足の伸びた
可 ....
日は{ルビ翳=かげ}り
見上げた月は幾分か{ルビ朧=おぼろ}で
乳白色の湯船から浮き上がる手は
もう
あなたの手か 私の手か
わからないくらいに
溶けていた
わからないだ ....
( あさ )
おきてかおをあらってかがみをみて
「きょうも1にちがんばろう
できのいいにんげんにならねば」
てにしたドライバーで
からだじゅうのねじをしめた
こわばった ....
白日の世界に跪くわたしに
昏々と降り注ぐ言の葉は
もう
何も見なくてすむようにと
眩く光る
泣きたくはない
あの人の笑顔を焼き付けるため
でも
言の葉も 涙も
それを許してはく ....
「ショクヨウガエル」という物悲しい名前の蛙がいる
まるで人間に食べられるためだけに生まれてきたかのような名前の
体長十五〜二十cmにもなる巨大な蛙
正式な和名は「ウシガエル」
食用とし ....
アルコールと 朝が
溶けあって 光って
カーテンです
そこへ向かう明るい少女は
睫毛です カーテンに
きらきら きらきら向かう 明るい少女は
瞬きのたび ....
叙情の彼方を探るように この岸辺にて
翼を休めるものよ 優しげな日差しと
聞こえ来る 春の訪れを告げる歌声
地に生けしもの総て 目覚めの刹那を夢想する
巡る季節の旋律は いつにもまして ....
聖母のようになり尽くせたなら
もっと楽になれるのだろうか
醜い自分など知りたくはない
なのに そうでなければ生きられない
そんな仕組みらしい
貴方は綺麗ね
戸惑う姿も ムキになる癖 ....
私をかたちつくる
わたしのかたち
私はわたしのなかにあって
手を持ち指を持ち唇を持って
君を抱きしめる
でも
私を入れたわたしを
あたしが包み隠して
誰かとの距離を調節もする
....
ぽかぽかのひだまりに
大好きなキミと2人でぽつり
不思議と音が流れてくるの
たらたらのボクと
ほわほわのキミと
冬の太陽で
酷くなったアスファルトにて
克明に、枯れ切った、細枝
その黒い輪郭がさらに
冬の太陽で静かに激化する
前景に過ぎぬ。
前景に過ぎぬ。
痛み ....
恋とは
自分にないものを
求めることなら
愛とは
自分にあるものを
抱きしめることでしょうか
「愛し合う」とは
言うけど
「恋し合う」とは
....
会いたくて
ただ会いたくて
夜の底
雨降るそこで
声をからして
あなたはね嘘をつくのが上手よね
ホントはみんな騙されてるフリ
『どうしても』『今日だけだから』と君は言ったね
たぶん明日もおんなじセリフ
『ごめんね』と言われることがなにより辛い
お ....
『どうしても,というなら今宵
あなたに未来を見せてあげよう』
あの場所で
あたたかくもないベッドに腰掛けて
いつも手を繋ぎたいと思っていたよ
気まぐれな貴方とわたしは
眠たくなったら眠 ....
ある人が君に言った
愛というものはダイヤの原石
諦めずに磨き上げなさい
今投げ出せば
唯の石ころ
と
そして君は
僕にこう言った
愛は綺麗で美しくなければ
誰も価値を見出さない ....
陽炎ゆらめく金の砂子
彩雲は海風に吹き乱れ
てのひらに燃え立つストレリッチア
放った水際 横なぎにさらわれる
あの辺を転がってく
サクラ紙みたいな柔らかいの
さっき2人で食べた
カッ ....
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