割れた小窓の向こうに
子供の靴が転がってる
幸せはいつも
シャボンが泡立ったときの
匂いに似て苦しい
どうしてわたしは
名前を書いておかなかったのだろう
指を動かして
桟に父の旧姓 ....
朝
君は 泣いて
朝
戸を閉めて
二人はもう一度夜を創造する
血 を ながして
朝
ひ か り
二人が生んだ夜を
野蛮な 夜を 漂白する ....
ピアノ線で結ばれた
あなたの希望
私の誤解
でたらめに
あなたがはじく
私たちの
無数の意味が
夕暮れの
部屋に満ちる
他愛ないカーテンが
ふたりを
窓から避けてゆく ....
東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉で{ルビ犇=ひしめ}いていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
{ルビ歪=ゆが}んだ顔を映す
冷たい光の反射に
じっと身 ....
手すりのない屋上で
そらをとりもどす、わたしがいる
{ルビ限界線=ちへい}に浮かぶ遠い筋雲の
気流の音に耳をすます
わたしがいる
まぶたの裏に
真昼の月を新月と焼き付け
まぼろしではない ....
{引用=
伝えたいことがないけど帰らない 歌う自由が僕にあるから}
ギロチンが雨の代わりに降る夜に野外ライブは実施されない
陽の当たる時間短いこの国はかいわれ大根生えたス ....
ちっちゃいころ
わたしのおへやはピアノでいっぱい
わたしのすわるばしょなどなくて
ピアノばっかりおおきなおかお
ひきたいうたなどひとつもないのに
なのにいまは
わたしのこころはピア ....
檻の中には
消しゴムがひとつあった
動かなかった
夜行性
と書かれていた
夜まで待ちたい
君は言ったけれど
その前に
閉園時間になってしまった
帰り道、赤信号で止まった
右左よ ....
水仙の花のように
できるかぎりの背伸びをして
星の花びらの中心に開いた
黄色い唇から
恥ずかしげもなく
むじゃきな唄を奏でたい
( 昔々
( 少年ナルシスは
( 自らの ....
上司の心ない一言に火が点いて
職場のちゃぶ台をひっくり返した日
しょんぼり夜道を歩いていると
通り道のボクシングジムから
ばす ばす と
瞳をぎらつかせたぼくさーの
ひたむきな ....
冬の雨が上がって
しっとりと潤った空気に
小さな蕾が目覚め始める
春と呼ぶにはあまりに早く
陽射が弱々しく届いて
蕾の外側だけがほんのり白く染まる
冷酷な北風には
他愛もない出来 ....
にぎってみな
ほら
もうだめだろ
そのタマネギ
切ったら泣くぜ
ぜったい泣くぜ
半分ぐらい
腐ってたって
ぜったい泣くから
まあ座って
二人で剥こう
そうして
....
ブリキのロボットはひとり
旅先の浜辺に{ルビ佇=たたず}んでいた
羽織った黒いマントを
浜辺の風になびかせて
( 振り返れば
( 浜辺には長い足跡
拾った ....
あなたの髪に触れるしずくは
花びらのように
キラキラと咲いて散っていく
あたしもそんなふうに綺麗に映ればいい
住み慣れたはずの町が
やけに他人行儀に感じた
折れた傘が
歩道の脇に ....
愛のような色の
薔薇の花束
無造作に置かれ(無造作なキス)
散る(唇)
花びら(の味)
月光の針
が刺す
がそれは
暖かい
いや
寒い
ダウンする
....
鉛筆を指で回す君
鉛筆に指を回される僕
色の付いた服を着ている先生
お花畑の隣にある工場でつくられた黒板
下手糞なうそ
という言い訳
筆箱を空けると
いつもそこには青い空が広がってい ....
ひまわりが枯れて
バラが枯れて
チューリップがこぼれて
シベリアだけがまだ
咲き誇っている
切られた花の優しさしか
あげられません
あげたくても
あげられません
....
ある朝に、新宿駅東口で待っている
(白くうずくまっている 無音の質量を
回転している(絶叫をとおりこした)声が
雨 のおくへと響いていく
来るのかしら
(いつ?)
遠くはるか遠く
....
あたしのスカートの
端っこを切ったのは あなたでしょう?
羽をばたばたさせて 空に浮かぶ
髪が伸びたので あたしは飛べるようになった
まっさらな夜を
あなたの匂いをたよりに飛んで
....
暮れかかる
陽の手は伸びて
居ならぶ雲を
染めあげる
夜の扉をひらくため
灯された
あかりのように
瞬き、
という行為の
間に間に見える
人と人を結ぶ
曖昧な影
「優しさ」 ....
あなたはためすように
月を詠むのです
椿の花が落ちる夜に
闇から色を分かてるのか
ためすように
あなたは月を詠むのです
くれなゐは
いつぞの契り
くれなゐは
今わにみ ....
そこに
ひめられたもの を
ちから
と よぶ
だいちの ち
わたしの ち
ちえの ち
ち に ひめられたもの
ち から
うまれでるもの
....
昼下がり
雲がぼやぼや流れている
ハラピンが道を歩いてきた
ぼーとしながらふらふらしている
俺を見ると
ダッシュでやってきた
汗でふにゃふにゃした原稿用紙を押し付けてきた
読 ....
おかもと君は
わたしの初めての人に
なってもいいと思ってたのに
夢ばかり語って
てんこーして行ってしまった
手紙を書くよと言ったきり
年賀状もこなかった
おかもと君の夢は
とほうも ....
孤独なんて
なんともなかった
もともとひとりだったから
憎しみには
少し戸惑った
脅かすほど力もないよ
擬態がうまいだけ
やさしさは
うれしかった
返せなくてごめんなさい
....
恋のさめる音は
雨上がりの
透明な
あまがえるによく似てる
あれは
誤解だったのだ
私はうっすら弧を描く
虹を
さかさまにしたような
私の頬に
笑みが射す
愛 ....
僕と同じ温度を保って
こぎ続けられた自転車が
雨を避けておさまってる
一匹の虫がサドルから落ちた
葉っぱしか食べられない虫
それ以外に見当がつかない
貼紙に書かれた
「駐輪場 ....
えのぐのあじがする
と、遠ざけられた皿には
白いドレッシングのかかった
シーザーサラダが
盛られたかたちのままだ
野菜も食べないと大きくなれません
と云われて
娘はふくれている
....
人がなぜ目を持つのか
明確な答えはない
愛するものを見るためか
憎むべき相手を睨むためか
どちらにせよ人は
目に見えるものに縛られる
本当に大切なものは
目に見えるものではないと知りな ....
水平線が夕日を融かすというので
その仕組みを知りたいと
渡し船を探しに海岸づたいを
西に向かう、それが私たち
綺麗なものばかりを
追いかけてはいけないと
釣り人が忠告したが、僕たちは
綺 ....
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