あのね。
ときどきね。
なりたいと想うのさ、
ふにゃらくにゃに。
そしたらさ、
やわらかくなって、
ゆるくなれそうなね。
そんな感じがするのさ。
....
焦げた胡椒が口の中ではじける
味が悲鳴にならなければいい
僕は想像するよ
ひび割れた指先
産毛を撫でるハサミ
頭頂部が気になる父親
その全てが 君の物になることを
君の中 ....
誰も知らない顔をして
通り過ぎていく君の強さ
夏の制服の薄いシャツから伝わる
淡い匂い 淡い声 淡い想い
すべてが溶け込んだような
プールの塩素の匂い
もう過ぎてしまった七夕は ....
どうしてだろうか
こんなにも居心地が悪いのは
君にも僕にも
ここじゃない
どこでもない
もっと違う場所があるはずだ
そう思いながら
ずっとずっとうずくまってる
うずくまりな ....
一歩前に踏み出した足
一歩後ろに下がる地面
たぷんと揺れる水
とぽんと跳ねる金魚
ほらご覧と覗き込む僕
あら綺麗と覗き込む君
うつむくしかなくて
うつむくしかなくて
....
精神科に通い続けて一年半ば
毎月高い薬を得て生きている
入院を勧める医者
入院を拒む僕
それが病気の一種
境界性人格障害を抱えている
関わりを持つ人を傷付けて舐めて癒す
写り ....
今日は楽しかったね
そういって振り返ると
君は改札の外
静かに手をふって
さようなら
のばすほどに
ゆわえられた 微々
遠ざけて
きつく 咎めた
まつげ
のせられて
こぼれ 破れ
仕返しに なれない
切る たびに
つつみ くるまれる 微々
私がどれだけあなたを憎んでも、
すべてを閉ざしたあなたには
何もかも 拒まれるだけで。
それは酷く不快な、
死 よりも悲しい、灼熱のうつつ。
それは、
それは 果たして、
きみを見ているだけで幸せになれる僕は
なんて幸せ者なんだろう
きみと同じ時間を生きている僕は
なんて幸せ者なんだろう
きみと同じ場所にいられる僕は
なんて幸せ者なんだろう ....
いのちは
ことばのかこい
かこわれていない
どこかひろいところを
ゆめみている
こころも
ことばのかこい
なにもかも
ちいさく ちぎりわけて
ぜんぶかこうことを
ゆめみている
....
わざとらしい
会話なら捨てて
いっそ言葉は
剥ぎ取って
伝わらないのを
当たり前とするなら
解り合ってる
二人だよ
どちらかといえば
無口で喋ると早口に
なっちゃう小心者けど
言葉が 詩が
誰かに伝われば良い
上の前歯が無くて
入れ歯が無いと
アナウンサーや声優や俳優
みたいに上手く朗読で ....
暑い影の中で佇む夕日
どこかへ行けば
きっと遠いものが近くなる
見えるものなど何もない
時と想いは近づけるもの
流されるような心も
スピーカーのように
キリ ....
くやしいよ
絶対この種目では負けないって
心の底では思ってたんだよ?
くやしいよ
相手の前で泣き顔作ったなんて
僕は一応男だよ?
くやしいよ
それが子供をあやすようなものだったな ....
スイッチひとつ
切れない
切らない?
眠れない
孤独のひとつ
抱けない
抱かない?
寂しくて
パジャマのボタン
かけちがえたまま
ヨルの浅瀬で
上手に溺れて
湖に子供
静かに波打っている
湖に子供
もう
息をしていないのだろうか
塩水ではない水に
もうすぐ浸される
からだは大きくて
頬はまだ
赤い
もう息をしていないのだろうか
だれが ....
子供のころは簡単だった
青いクレヨンで雲のかたちをくりぬけば
それが空だと言えたけど
いま僕が描こうとしてる
この空には青が足りない
たくさんのことを知ると
たくさんのこと ....
僕は名前が欲しかった
「僕は名前が欲しいんだ」
「うーん、君は『白』にはなれないね」
目の前にまぶしい色があらわれた
「だって『白』はこれだから」
「他に名前はあ ....
炎天下の中
デパートの屋上で
僕はピエロになって働いている
何度も同じことを繰り返すだけの
つまらない芸でも子供たちは
大きな笑いと拍手をくれる
夕方になり人気が減ると
急に悲し ....
夜の喧騒を引き摺るサイレンが
眠りかけの街に時折響き渡り
僕はマイドキュメントをクリックする
そこは船虫どもの巣窟
座礁したテキストの影そこかしこに
船虫どもが蠢いている
僕はそい ....
苦労を取り戻す日々
網戸に半日も止まったセミをみる
見られている
セミの鳴き声に囲まれてそのセミは哭かない
なぜだろう
なぜ止まっているんだろう
網戸ごしにつついてみる。
死んでいな ....
まるで空に手を伸ばすように
咲いている
マーガレット
欲しいものはなんだろう
太陽も
土も
暖かな空気も
すべてあるのに
色を重ねました
あの人に合うように
あれに合うように
あそこに合うように
そもそも その 最初は白かった 紙に
はじめに 鉛筆で 何の輪郭を描いたのか
下書きを
覚えて ....
私はやはり、と
言わざるを得ない
やはりあの{ルビ畦道=あぜみち}を
脇目も振らず
私は歩いていたのだと
炎天、真昼、陽炎
夏が侵攻していた
それはいつも匂いから始まる
濃厚な ....
落下してゆく世界の欠片を
拾い集めても足りないほど
争いの無い世界とやらを求めてたけど
僕は平和な世界を知らなかった
崩れた壁の向こうで
銃撃はいつも続いていたし
やめてくれと叫ぶだけで終 ....
あなたの その一言で
泣いたり 笑ったり
私は 踊らされている
大きな あなたの 手のひらの上
鋳型工場に運びこまれてゆく
材料の僕ら
造形美術士たちの手で
流し込まれ
平凡な固形物と化す
一ミリの狂いも許されない
より美しい顔は皮膚を剥がされ
より醜い顔は化粧を施され
大人 ....
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