めったにないことだが、仕事で都市部にでなければならないことがある。そんなとき交差点を歩いていると、あまりの人の多さに眩暈がするのだが、同時に誰かがつけていた甘い香水の匂いに触り、私は先輩を思いだす。 ....  それは遠い夏の日の話である。
 
 それが正確にいつのことなのか、もはや敬三には思い出せない。その程度には昔の話だった。
 ただそれが夏の日だと確信できるのは、あの日の太陽がぎらぎらと輝いてい ....
 あの小さな赤い魚が
 どうしようもなくイラつくので
 近頃はもう
 祭には行かないことにした。

『可愛い』
ということだけが
存在意義の
小さな魚に
子どもたちが群がって
頼り ....
図書館へ行くと
いつも
てのひらに
穴が空けばよいのに

思う。

エラリー・クイーン

京極夏彦
に挟まれながら
金子みすゞ

アラン・ポー
に挟まれながら
真新 ....
あなたの
手が
あんまりに
つめたいので
わたしは
なんだかこわくなって
その手を
きつくきつく
にぎりしめたのですが
わたしのねつは
すこしもあなたに
うつらなく、て
いつま ....
教室の隅にピーターパンがいる。
誰もそれを見ないふりをする。
寂しいピータパンはおどけて踊る。
すると漸く何人か
彼のほうを見て笑う。

教室の隅にピーターパンがいる。
もう誰もそれが見 ....
ポピーが手をふる
あの頼りない花が
赤いてのひらを
ひらひらさせて

生ぬるく上がる気温に
山の空気が差し込む
一瞬の冷気が
五月の雨になる
吹き降ろす風と
じりじり上がる気温に
 ....
 生乾きの芥子の花が
 白い煙をもくもく出して
 修行僧のように黙り込んだまま
 燃えているときに
 わたしはただ
 真新しい注射器のことを思った
 腕に針が刺さるとき
 いつもわたしは ....
青い水の中
赤い鯉が泳ぎ
緑の藻が浮いている

 その脇で紫陽花は
 自分の色を決めかねている

青い空の下
赤い蝶が飛び
緑の蛙が鳴いている

 その脇で紫陽花は
 自分の色 ....
じりじりとあがる気温に耐えかねて
とうとう藤はにげてしまった
山の中に
まだどうにか残っている
冷ややかな空気と
無口な水を引き連れて

 5月の山の青です
 より一層涼やかな青です
 ....
雛が巣から落ちた。
高い軒から、コンクリートに叩きつけられた一羽は
ぴくぴくと口を開き、その奥の赤さを私に見せ付けてから
そのまま動かなくなる。
私がただ馬鹿のように立ち尽くしていると
巣か ....
あなたは不誠実な人ですねと
言うかわりに
庭先の牡丹は
見る見るうちにしおれるのです

其れを見ながら
あなたは今日も
手の内の地球儀を
つまらなそうに
弄繰り回している

あな ....
神様哀しいね
なんだっていつも僕たちはこう
目をつぶることでしか逃げられないの
 チョコレートは好きだけど
 チョコレートケーキは嫌いなあの子の
 公告を貼り付けた電車は
 今日もがたんご ....
若草を踏みながら山に入ると唐草が伸びて手足に絡まりそれが目玉を突くので金の目をした子鬼は泣いています。

{引用=
竹林がきいきいと
竹林がきいきいと
竹林がきいきいと}
春の夜の行列です
やわらかい新芽を踏んで進む
無表情な行進です

一歩二歩と踏みしめるたびに
つま先からそろりそろりと熱が逃げます
だので皆
のたりのたりとあるくのです

冷たくなれ ....
ほこりくさく薄ぐらい部屋の隅っこで
{注孤独なジョージ=ガラパゴス諸島に生息するガラパゴスゾウガメの亜種の最後の生き残りの1頭の愛称。英語だとLonesome George}がキャベツを食む音がする ....
あばら骨一つの欠けもない体凡人という心の安らぎ

さらばさらばはじめから散るここちぞと春は往くなり

サラダバーお好きにどうぞと差し出される葉の青さ苦さ春の冷たさ
冷え切った水が緩み
地球の表面に蟲が蠢きだす
そんな時
不意に腐臭がする
今年もまた
春が甦ってしまった。



通勤路の途中のうち棄てられた畑に
めい一杯オオイヌノフグリは茂る
 ....
「海に行ったら蛙は死ぬんだよ」と
彼女は泣いた
電車の到着まであと五分
彼女の目からほろほろと
零れる真水が愛おしい

{引用=行こうか行くまいか
行こうか行くまいか
行こうか行くまい ....
河原で石を拾う

 黒いの白いの茶色いの
 丸いの尖つたの小さいの
 堅いの脆いのあとそれから?

両手一杯引っつかんで
胸に押し込む
そうしてどぼんッ

 水の中は静かです
  ....
紺碧の空・黄色い太陽・煩い蝉時雨。
八月に雪が降る。
眩暈がする。
前頭部が酷く痛む。
仕方なく、私は暗がりを探す。

私の目玉は欠陥品だ。生まれつき、水晶体に無数の細かな凹凸がある。
 ....
始まりの音はいつも
水面に落ちた一滴
442Hzの{ルビA=アー}
完全な調和
人は昔から
その中に神を見る

終わりの音はいつも
Z型の{ルビ雷=イカズチ}
442Hzの{ルビA= ....
胃が痛いので、胃薬を飲む。
ほとんど毎日飲んでいる。
先日それが母親にばれて、病院にいけと煩い。
だので、それからは隠れて飲んでいる。

 ねえ、かあさん。
 どうしてわからないんですか。 ....
息苦しさに耐えられず
今日も午前零時
バスタブに水を張って
顔を浸けて数を数える

(一、二、三、四)

ああもう何もかも
煩わしいことばかり
もう何も話したくない
もう何も話した ....
ブランコを漕ぐ
浮ぶ
ブランコを漕ぐ
沈む

一瞬の浮遊感
刹那の堕落
でも本当はドコへも向かってないのです。

ブランコを漕ぐ
進む
ブランコを漕ぐ
戻る

永遠の躍動感 ....
深夜のコンビニで10年前の友情が
丁寧に陳列されているのを発見して
戯れに一つ買ってみる。
にこやかに笑う店員が
「あっためますか?」と聞いてきて
そのまま電子レンジにIN
くるくる30秒 ....
タルルル・タルナは 虎を 飼いたかった。
だので、タルルル・タルナは たんじょう日に 虎を ねだった。
けれども、タルルル・タルナのおとうさんは タルルル・タルナに 虎を 買ってはくれなかった。
 ....
 昔から、ずっと絵を描くのが好きだった。一番描いていた中学校のときは美術の時間に支給されたスケッチブックを一人だけ使い切って、それでもまだ描ききれず、友達から紙を分けてもらって、ちびまくった6Bの鉛筆 .... りんと張り詰めた冬の朝を
切り裂きながらとんびは飛ぶので
わたしは腹立たしくってしょうがない。

庭に下りた霜が
椿の赤を焼いている。
やめてください、どうか、どうか後生ですから。
どう ....
 悦子は小学5年生である。
 悦子の通う小学校は、とても小さい。全校生徒は、100人にも満たない。
 悦子の家は、学校から3キロばかし離れている。悦子は入学したときから、小さな足でその距離を歩いて ....
亜樹(241)
タイトル カテゴリ Point 日付
花は女の匂いがする散文(批評 ...409/10/13 23:18
鰻の行方散文(批評 ...109/8/18 23:44
金魚救い自由詩2+09/8/16 23:44
紙魚の眠り自由詩609/8/11 22:41
あなたの手自由詩409/8/10 23:05
教室の隅にピーターパンがいた自由詩109/6/9 22:25
ポピーが手をふる自由詩109/5/25 23:14
なつのこどもはやかれてしまった自由詩209/5/17 23:13
迷う花自由詩409/5/16 21:30
初夏の逃げ道自由詩309/5/15 23:33
雛の赤自由詩109/5/6 23:02
あなたは不誠実な人ですね自由詩109/5/1 0:54
神様哀しいね自由詩309/4/21 23:50
小鬼自由詩209/4/17 22:49
春の夜の行列自由詩009/4/14 22:18
孤独なジョージ自由詩1*09/4/5 2:47
あばらさらばさらだ短歌109/3/25 0:53
春のゾンビ自由詩209/3/18 0:16
井ノ中ノ蛙自由詩109/3/15 0:10
どぼん自由詩009/3/11 22:50
幽霊の心地散文(批評 ...1+09/3/7 22:34
442自由詩309/3/2 21:14
ははおや散文(批評 ...1*09/2/25 22:53
過呼吸人魚【パート2】自由詩1+*09/2/25 21:55
ぶらんこ自由詩109/2/15 0:41
コンビニ飯自由詩209/2/6 21:19
椿と虎とタルルル・タルナ散文(批評 ...209/1/31 19:27
挫折の青散文(批評 ...309/1/30 21:35
哀傷自由詩109/1/26 20:33
山葡萄の血散文(批評 ...0+09/1/24 21:55

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