紙魚の眠り
亜樹

図書館へ行くと
いつも
てのひらに
穴が空けばよいのに

思う。

エラリー・クイーン

京極夏彦
に挟まれながら
金子みすゞ

アラン・ポー
に挟まれながら
真新しい紙と
かすかに日焼けした紙が
私を監視している
その前で
私の手に
穴が空けばよいのに、
と。

空いた穴から
ゆっくりと
たくさんの紙魚が
私の体を食い破って
きれいさっぱり
なくしてしまえばいいのに。
と。

紙魚たちは
私のカケラを腹に入れ
何食わぬ顔で
また
各々お気に入りの
ページへはさがって
誰かがそのページを開くまで
ただただ惰眠を貪る
夢のような惰眠を貪る

人気のない図書館で
一生のうちに一度も開かない
数多の本を見つめながら
私はいつも
そんなことを思う。


自由詩 紙魚の眠り Copyright 亜樹 2009-08-11 22:41:14
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