日常漏泄
木屋 亞万

【寂寥】

ふくろうの骨格をみて少しだけ悲しくなったハイウェイと森

やせこけた我の心の貧しさよ地をはいさまよう腕の細さよ

全身を氷漬けして大砲で発射後すぐに赤く弾ける

憂鬱がおへその栓を抜いて血が一滴残らず流れ出て死ぬ

虚しさに言葉以外の何を持ち挑めと言うのか世の人々は

わたしとて名もなきひとのひとりですだれか名まえをつけてください

ないものを無理に感じる人たちの仰々しさに催す吐き気

今日もまたいろんな人の文字列がいろんな色で踊る液晶

深淵な眠りの底に沈みこむ写真以外は死に絶える僕

泣きそうで吐きそうな日にこみ上げる叫びの衝動しびれと疲れ

にちようびおまへがいつてしまふのがつらいのどかなひびよやすみよ

もう行ってしまうのならば日曜日その前に僕を楽にしてくれ

いきようとせねばならない、しなければならぬ。しなねばならぬのである

真夜中に虫になりたい欲望を叶えるためにバイクを吹かす

「ううううぅ」空気震わせ真夜中に「ううううぅ」またサイレンが行く

言うことに心がこもってないとよく言われるそもそも心などない

おみくじに書かれた通り一年が進んでいるし三日後に死ぬ

ネットには時間泥棒
火の用心
炎上すれば正義の犠牲

疑いは自分の影さえ鬼にする迷わず行けよ気が向いたらな



【四季累々】

たらたらと鼻血が出たらもう春が来たんだなってわかる啓蟄

精密な歯車愛に満ちていて刻み出される時の蜜月

抱きしめてやさしく殺して泣きながら私を燃やして土に埋めてよ

透明に近づく薄着日は長く薄曇る空風はつめたい

そだつたびうしなっていくこぬかあめこいみどりになりなつをまつくさ

青空の遠いところで膨らんだ眩しい白の最高の夏

目の前が見えないくらいの大雨が急にわたしの中に降る夜

イントロが流れた途端ひと気ない冬の夜道が目の前にある



【色欲】

文字通り女神のように美しい女性を崇拝したい童貞

長袖の白い衣服とブラジャーの間に潜む精になりたい

ひたすらにエロいユメへと迷い込む僕のリアルな本気さを知れ

五秒だけ下唇を貸してほしいすぐ返すからそっと一口

おっぱいに触りたくなる欲動をブロンズ像にも禁じ得ないね

巨乳には「ナイスおっぱい」酔ったとき「スケベだね」と言う発作あります

おっぱいの星へ行きたいおっぱいの家に住みたい枕にしたい


【同一化】

たとへば君ガツンと鈍器で殴るように私を救っていってはくれぬか
「このアジが良いね」と君が言ったのに残さず食えよ皿も綺麗に



短歌 日常漏泄 Copyright 木屋 亞万 2014-01-03 23:20:30
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