化石
アラガイs


小石には刻まれた文字がある
忘れられた形見
鯨の骨の穴三つ
祖父が死んだ日は知らない
祖母が死んだ日は少し悲しかった
花びらのなかに埋もれて
小粒の涙が乾くのも早かった
遠く拾い集めた愚かなものを
そっと海に還してしまいたい

父が死んで
兄も死んで
妹は帰ってこない
取り残された母と二人が
得体の知れない口縄に巻かれている
真珠に映したジオラマの秘密
収集家は命の終わりを知らずに
砕けた砂の数だけ生きた証が眠る
筋が繋がれた鯨の背骨
収まりきれない
夜に下僕を埋めたなら
わたしもそっと 貝殻になる 。










自由詩 化石 Copyright アラガイs 2011-11-02 06:44:13
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