ベランダに出た
思えば何度
満月を一緒にみたのか
変わったのは私
それにしても
遠すぎる
会うたび口と口の接触を求めて
幼少の感傷を口にして
汗ばんだ手で身体を撫でて
生物らしい声は遺伝子を震わせて
女は原始に戻った、と思った。
握った手を決して離さないでください。
そこに初めて僕はあなたを感じる事が出来るのです。
握った手を決して離さないでください。
それはゆらゆらと僕を子供に戻すのです。
握った手を決し ....
辺境とは文明のセンターではないところ
ひじょうに身勝手な定義とおもう
一律の価値観でかたられるが
離島にもひとは生きている
あるいはかれらには
シンプルで必要なもの以外もたない自由が ....
入り口の方にあなたが立っていたが
出口の方にも同じようにあなたが立っていた
べつに邪魔をしているわけでなくただ立っているだけのこと
そういえばそのような薬物をわたしはどこ ....
嘘をつくのなら
貝殻がごとく
言葉にしても
言葉にしなくても
おなじ結果なら
貝殻がごとく
傷つくことには、もう慣れた
冷たいことにも、もう慣れた
....
『鋏』
月が、
夜に噛まれる。
欠けていく姿は
溶けて海となった
残り少ない流氷
その上に、
この足は立つ
諸手は木の柱に括られて
身動きができない。
足 ....
夏にさよならを
今年は雨が連なりますね。雷師も人格が変わってきたようです。
と、お天気お姉さんが言っていました。
それはそれで構いません。
カレンダーを丸めたような手紙をバトンにして
....
海の匂いがする風が
過ぎていく時に
光と
圧と
匂いと
音で
描く
飛ぶ
鳥は
海風に向かい
まるで静止しているように飛ぶ
鳥は
生きる ....
とても
とほうもなくとても
すてきな小説を読んだ夜
手放してしまうのが惜しくて
胸のなかで
それを抱きしめつつ眠れば
冬由来のゼラチンは
純粋な水によって
隅々までふやけ
迎えた ....
金属製の留め金は
時折きしむ
わたしを
ここに
留めておくもの
家族とか
四季咲きの薔薇だとか
増えていくばかりの本棚とか
愛すべきものたちばかりなのに
長雨のあと
造成地 ....
見上げてごらん夜の星ををききながら見上げてみる
梅雨の狭間の夜空を見上げてみる
あなたも見上げてはらっしゃらないかと、見上げてみる
*YouTube 見上げてごらん夜の ....
三丁目の植え込みに
神様が捨てられてました
薄汚れてハエが集っていました
拾って帰って
洗濯機で洗濯しました
乾燥機の中で蘇りました
何か願い事を聞いてあげよう
そう言われたので
....
夜
服の白さにつまさきが
ギュッと縮んで歩けなくなる
大事な人にさよならを言いたくなってしまう
わたしを包みこんでいる
美しい勘違いのすべてが
いつの日か明るみに曝されて
間違いさがしを ....
終わらせたいあなたと
終わらせたくないあなたが
今も戦っていることを
わたしは知っている
ここのところ よく
昨日の続きの夢を見る
昨日の続きは
明日なのに
そのあいだにもう一日
....
小林峠の近くで
狐が轢かれて死んでいた
珍しいことではない
狐も 狸も 猫だって
だけど道路の端の方で
轢かれたばかりらしく
まだ そのままの姿で
顏だけが歪んで血まみれで
瞬間の ....
悲しみの深さは
ずっと後になって
分かるもの
今は感情の欠片すら
なくなった
空っぽの胸に
風に似た風が吹き抜けるだけ
もし風に表情があるのなら
微笑んだように見えたのは
あ ....
精神科のスタッフルームで、
あっち側にはいきたくないと、
面接を終えた上司が呟く。
あっちとこっち
異常と正常
障害者と健常者
病人と医者
クライエントとセラピスト
助けてもらう人 ....
樫の実ひろって、晒して食べた。
樫の実ドングリ、渋くて苦い
樫の実ドングリ、渋くて苦い
森の獣しか食べられない。
けれども、食べたい
食べなきゃ飢える
晒して晒して白くして
....
彼女は一定の周期で死にたがる。
もともと、際立って明るい訳でもないが、その時は特に著しい。
長い髪を垂らして顔を隠し、カーテンを閉め切り、人との接触や、彼女が好んで集めた可愛らしい物ですら拒む ....
この世界はとても窮屈で
両手を広げると色々な物に触れてしまう
人や建物や空気
私は何も触れる事のない世界で
眠りたい
九月も末だというのにまだ汗はとまらない
車の冷房は下げたままだ
最後にどうしてもあの海辺が見たかった
親父の入院中きまって立ち寄った、
、あの海水浴場へ
市街を抜け、15分も走ると左手に ....
午後六時十五分頃の
日に焼けた街のことをきみは歌いたかった
八月……
その燻すんだ終わりにむけて
けれどもきみの細い首で
ネックレスが曲がっている
飴色 ....
言葉なんて要らない
あんなにも人を動かす言葉なんて要らない
街のさびれた一角の
小さな自転車屋の店内で
カンカン音を立てながら工具で自転車を直す
あのおじさんの鋭い技術が欲しい
....
櫓が曇天を衝き
提灯を揺らす矢来を抜けた夏の風
私の売った腎臓が
二度と郷里を求めずに
祭りの後は火薬のにおい
祭りの後は寝台車のにおい
何かになった私は
私になった何かにな ....
雑草にみえるやまから
綺麗な花をみつけるひとは
私のきらいなひと
きらいという
気持ちに負けてなんとなく
花から目をそらす
かえりみち
男にも連れ去って欲しい夜がある
日々の習慣こそ愛おしい
扉を開けてただいま、と言う
杖は手摺に立て掛ける
靴を脱いで右端に寄せる
一人前の惣菜を冷蔵庫に入れる
白い手拭いを
四つ折りにして
赤い糸で等間隔で縫う ....
青いオートモビル
湖の岸に沿った道を
わたしたちの青い車は走る
空は澄み、とっても暑い日が
ずっと続いている
西武百貨店で
妻がワンピースを買った
黒い布に白の細かい模様
七 ....
この悲しみに負けない。
そうやって生きる
そうやってずっと生かされてきたから
負けない
怒りに変えたり
憎しみに変えたりしたけど
そうじゃな ....
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