あっちとこっち
ららばい
精神科のスタッフルームで、
あっち側にはいきたくないと、
面接を終えた上司が呟く。
あっちとこっち
異常と正常
障害者と健常者
病人と医者
クライエントとセラピスト
助けてもらう人と助けてあげる人
それなら私は限りなく、
あっち側に近いのではないかと、
私は独り苦笑する。
あっちとこっちは誰の中にも確かに在る。
今こっちに居るのはただの偶然で、
明日の朝、目覚めた瞬間からあっちに居ることだって。
その事実に気づいていないことは、
幸せだけれど、
とても怖いこと。
少なくとも私は、
こっち側からあっち側を、
遠い目をして眺めるつもりは、
毛頭ない。