高く空に刺さる 木の 黒い
黒い樹たちの隙間から
降る音 来る音
その向こうに棲む おと
冴え冴えと
地に降り積んでは
ゆる、と めぐる
発した声は
....
秋のこがねに
ざざめく山の
ざんざと落ちる
もみじ葉に
分けいりたくもないわと
言うに
うでを掴みし
指の強きに
あゆみ とふとふ
ついて ま ....
忘れてください
それで忘れられようものか
諦めてください
それで諦められようものか
許してください
それで片付けられようものか
まだ まだある
言葉以上の何か
それが弾 ....
生まれたときの高熱でわたしは光を奪われ
音がわたしの全てとなった
新生児室
こどもたちは
わたしと同じで
暗闇が怖いから
泣いてるいるの?
鳴り止まぬ大合奏
三歳
....
リビドーをひらく夜の帳が下りる
渇くからだが水を欲しがって熱を感じるの
つかんだ手はもうあたしのもの
二度と離さないこのままくれて
水も甘い果実も飲み干してあげるわ
独り寝れば枕が濡れる ....
言葉にならない不安が
言葉にできない不安が
からだ中を駆け巡る
自信なんて持てなくて
自信がどこから来るのかなんて
分からなくて
喧嘩もしたくなくて
嫌われたくもなくて
何も言えな ....
朝の くもり
4時 15 分
ほろほろ 酔ふ
鷺の 跳びをる
収束し また
拡散する
音の ひびきを
臓に 包んで
窓か ....
たとえば
おおきな海があったとしたら
底には何を置きましょう
昨日忘れた風のうた
話せなかったほんとうのこと
のみ込んだ鉛の心
たとえば
そこにゆけたとし ....
電子の気配に
目覚め
点滅する記憶を再生する
あれは 5月だったね
細く開けた小さな窓から
ふたりして夕暮れを眺めながら
またこの季節が巡ってくるといい、と
小声で話した ....
3月だったか4月だったかに死んだ親戚の家を片づけに行った。
特に付き合いのなかった人で幾度か喧嘩腰の電話を受けたぐらいしか記憶がない。そんなもので片付けは事務的に淡々と進む。所帯道具一式、服、 ....
東京より来たる夫のたこ焼きを返す手つきもあざやかになり
年少の子の足下に犬伏せる晩飯時の特等席なり
形だけの詫びにと届くふた箱のいちごが黒くなってく野菜庫
さっき ....
俺の人生22年
何があったのかとふと思い返せば
何もなかったような気がする
ナニモカモが中途半端な自分
夢中でやったサッカーは悲惨な記憶
何をしても怒られけなされ罵られ
見かけはかっこ ....
矛先にロックする
闇雲にタックルする
永久(とこしえ)にリリックする
眼旗魚(めかじき)はジャンプする
古今東西コラージュする
死屍(しし)煌々とタップ踏む
鬼気猛進と詩いあげる
....
世界に対する僕の存在なんてものは
とてもちっぽけなもので
ゴールデンウィークにどんなに
汗だくになって働こうとも
その大変さをわかってくれるのは
ほんの一握りの人間でしかいない
朝マッ ....
手を結び子どもの顔して軽々と瓦礫の丘を越えるものらよ
君が見るわすれな草のみずいろが欠けたる空の隙間を埋める
散りさくらアスファルトの上なお走り側溝に飛び込みようよう息絶う
....
君と手をつないで見てる赤い空 春の毒皿どこまで喰らおか
満ちてゆく月を恨みつその日まで素知らぬふりで花摘む逢瀬
かの人を心で百度斬ったとて力なき手は髪を梳くだけ
つい ....
リアシートの女が
もたれかかる窓には
人々の行き交う街の喧騒がうつり
それが音もなく流れてゆく
目を閉じても
ネオンの原色が
まぶたの裏に繰り返し焼きつく
鼓膜を揺らすウッドベースの心地 ....
それは薔薇の花
かもしれない
鼻孔の記憶を痛いほど締めあげながら
目の奥に唐草を描く
たゆたう紫は
いくらもいくらもはいってきて
それは空白のノート
なのかもしれない
サフランの香 ....
にんげん
だけど
くだもの
にんげん
なのに
くだもの
せめて
くだものにんげん
とか
しょくぶつにんげんなら
まだしも
ざんねんながら
にんげんくだもの
ど ....
風に揺られていたね
僕らはなにも選べずに
別れの言葉を強いるのは夕風
信じることも疑うことも
選べずにいた
僕らを置き去りにして
地球 ....
やりたいようにやるだけ
誰が見てるか、なんて関係ない
ただ、やりたいようにやるだけよ
あおいの野に吹く風を追いかけて
転ばぬ 先 へ
君は風になり するり 水面の音に
消ゆ
そばだて て
それだけを拾おうとして 風は
流る る
おなじ空の下
姿は見えないけど
声も聞こえないけれど
おなじように息をしてると言うだけで
生きていると思うだけで
なんだか
とてもうれしい
あなたは今
何を思ってるの?
触れ ....
指先であそぶ旋律がピアノの鍵盤の上を流れて
部屋に溢れるやさしい音階のすきまに
天球図は青くひろがってゆく
東のかなたの
さそりの心臓は自ら発火し
そのきらめきは引き出しの奥で眠るルビー
....
駅の夜景を一人じっとみていた
君のことを想うと滲む
なぜ僕に嘘を言った
なぜ僕に好きだなんて言った
僕の心が君でいっぱいになったころ
なぜ行ってしまった
....
月光にてらされる鼠色のわたし
窓辺の机の上で
いつものように月をうっとりと眺めていると
だんだんと月が大きくなってゆくようです
最初は夜空の真ん中に黄水晶のように透き通った月の
輪郭がしだ ....
さしこむ月明かりに
浮かび上がる
窓枠におかれた青白い手
古びたホログラムのような
その手の
輪郭が、ぶれ
はしる、ノイズ
握られたナイフの
かるい重み
ナイフは澄んだ鏡
凪い ....
曇空が緑にとどいて
海を見せてゆく
緑は
しあわせになる
船が船を呼んでいる
砂浜と鉄路のむこうに
声にかがやく枯れ野があり
波をこがねに照らしている
....
この部屋のおくにはいってこないでよ(あのひとだけは許されるけれど)
ただすこし、濁ったことばに背を向けてすべてを拒絶していただけで
そのあとは さんかくすわり、鍵をかけ 誰かを待ってい ....
卵二個とひきかえに
体を売った 女の子
てびきした 少年
十代らしい
権力のある大人が
相手 らしい
新聞記事 外国の記事
よいわるいではなく
よわい立場で
....
1 2 3 4 5