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雨のなかに
すむさかなを
優しいひとくちでは
描けない
まだ
飲み干したはずの
模様がいつまでも海、で
花びらに
ふるえる風の光と影
それはもう
はるかに見失うよう ....
雨とよばれる
雨とはちがうそれを
よける隙間も
したう境界線も
本能のなす
川かも知れない
浴びていることを
浴びせてしまうような
無知なる無知の
さらなる先 ....
たのしそうに語る
あなたの足跡を
みつけた
わたしの庭には
しばらく無い、
かげ
不本意ならば
どうぞ消し去りなさい
あなたの好きな場所を
汚すつもりなど無い
....
揺れる、
ということを
幾度も揺れながら
風景は、
まったくとおい
わたしで
あった
と
えがかれてゆく、海
まっ白なのに
それはもう
古いかげ
波 ....
吹きぬける冷たい風の空高く
ひかりの鼓動は
静かにそそぐ
雪解けをあつめて川は哭いている
生まれたばかりのわたしの春に
ひとひらの可憐な花は弓使い
瞳砕けて曇りをうるむ ....
傘のしたでだけ
降り続ける雨がある
強弱では語り得ない、それ
交差点を渡る黒たちの
はじまりの日は
白だった
或いは
今も
嘘とほんとを
分けたがるけれ ....
むずかしい顔をしていても
だれかに名前を
許すとき
見えない風に
腕だけ乗せる、ような
わたしはひとつの窓になる
だれかの背中のさびしさに
おもわず声を
かけるとき
....
グレープフルーツ、を{ルビ啜=すす}ると
ゆびさきやら舌先やら
なぜだかきみを、
おもいだして
グレープフルーツ、か
それとも、ぼく、か
においのあふれる
部屋になる
....
ねぇ、アリス
貴女が居なくなっても
この世界は続くと思っているでしょう
ここは
たまたま落ちた夢の国
だから
たまたまなんて
二度と起きたりしないのよ
ねぇ、アリ ....