あなたの手はいつも潤っていて僕は戸惑ってしまう
涙みたいだ
そう思った
あなたが生きている時間の中には
行き場をなくした幼魚の群れが泳いでいる
おそらく何万という幼魚の群れであなたはでき ....
諸刃の切っ先
喉元に突きつけられても
触れるまで気付かない
それほどの暗闇の真ん中で
足元の砂 蹴散らして
舞い上がる薄桃色の花弁で
鮮やかに描く 微光の軌跡
水銀灯に群がる羽虫のように ....
私は通りすがりの人にカメラを渡し
何枚か写真を撮ってもらった。
…昼下がり クリーム色の歩道橋
おとなしい道路―
現像した写真を友人に見せると
「きれいだ」とか「うまい」とか褒められたの ....
あなたは昨日の夜
悪夢を見たんだね
顔に影が射している
僕が
出来るだけいい夢を運んであげる
花束を持って訪ねて行ってもいいかい
ケーキを持って訪ねて行ってもいいかい
一晩中おし ....
ここでお召し上がりですか?
それともテイクアウトですか?
じゃあ
テイクオフで
というわけで
私は今
飛行機に乗っています
まだ飛んでません
滅多なこと ....
わたしの視点は常に動いている
つまりは漂泊している
定点にとどまることなく
四次元に動きまわっている
時間も場所も人も変わりゆく
きみはその雲の行く先を知れない
わたしは明日きみの見る雲を知れない ....
折角
あなたの好きそうな
マリモを持って帰ったのに
返してきなさい
とあなたは怒ります
何故なのでしょう
家で飼うには大きすぎたのでしょうか
残念です
折角
あなたの好みそうな
....
片足だけ靴履いて
レプラコーンに会いに行こうよ
どこにも続かない道を
どこまでも行こうよ
夏風邪の悪化した僕には似あわなかった
安っぽい向日葵の柄のワンピースを着た君にだって似あわなかった
この部屋の築弐拾年という白かったはずの壁にはもっとずっと似あわなかった
どこにおこうか、買って ....
ポチ
あたしに名前をちょうだい
できるだけ覚えやすい
あたしの名前は
とうの昔に
風に飛ばされてしまった
決して飛ばされることのない
首輪のついた名前を
それは
....
先生が転校生を紹介した。
キリンだった。
だけど首が長すぎて教室に入れないから
教室の外で、窓から顔を入れて勉強している。
キリンの家に遊びに行った。
部屋の中心に座れば、取りたいものを ....
向こう側へ行きたい
わたしの愛は
あの人の心をとらえることができるだろうか
ああこの我が儘で一方的な愛は
果たしてもう堕落しているのだろうか
ただただ胸の奥ではうろたえて身悶えている
小さな ....
大切な人へ
世界中のあらゆる拷問の道具が
天井からぶら下がっている
静かで清潔な部屋で
一人の野蛮人が
膝の上に乗せた子犬を
優しく撫でている
子犬は
野蛮人の膝の上で
まどろみながら
人間 ....
腕を
上げ下げする時モーター音が少しうるさいでしょう
ごめんなさい
今日はどんな一日でしたか?
駅でまたお腹が痛くなったんですか
大丈夫ですか
私ですか
私は駅のホームか ....
1.
あのまま薬をもらわなかったとすれば
病に向き合うこともなく
ときどき不調、で括りあげてきたのかもしれない。日没と
払暁でめくる暦のスピードで
2.
父も、だと
母にとっての閨房 ....
ぼくの大切なおもちゃは
おとなにとってはゴミだった
ぼくだけの公園は
おとなにはお金にしか映らなかった
あと一歩でゴールというとき
足をひっぱったお母さん
踏み切 ....
鼻歌を歌う君が夢で僕の隣を歩いてた
浜の砂は熱く僕の足の裏を焦がしていた
星の砂が刺す手の平を僕に見せ笑う君だ
同じ浜で歩く僕の隣は僕の影がいるだけ
君に会う前は浜の砂も海の魚 ....
正月に日本酒を飲みながら詩を書いていたら
火曜日に詩を教えているキムからskymailがきた
「幹さんやばいっす、オレ犯罪犯しちゃいそうです」
『ちゃんと詳しく説明してミソ』
「ちんこ ....
自分が不正直であるかのように
投函したポストに手をはさまれても
心ここにあらず
無理やり服を着せられてる
かわいそうな犬が
その俺に憐憫の目を送ってきても
心ここ ....
遠いむかしの風景は
なぜだかいま眺めるそれよりも
幾分ちいさくてちっぽけだとさえ言える
それは自分が大きくなったから
だなんて理屈を聞かされても
納得なんてできない
僕が思うには
やっぱりその風景 ....
それは一晩中泣き喚いた後の
空の真白
真白で無関心な、朝、まぶしくて
腫れ上がった目蓋と、熱い頬と
厭味たらしい空の
詩を忘れた
詩を忘れた
詩を忘れた
後は空白
空の
今日もきゅうりは
もてなかった
女のこたちの気ままな指で
もがれてみると
ぽきんと折れた切り口には
みずみずしい
ひかりがあふれていた
うちに帰ってきて
冷たい水で
顔をごしごし ....
どれだけ手を伸ばしても、
届かない。
一、
せんせい、と
あたしの声が響くたび
澄んだ空気が
ゆらり
あでやかに揺れる
それに気付いて
目の奥のどうようを
れいせいな
おとなのまなざしで
隠すひと
その距離は ....
羽のついたボールが
キャッ、キャッ
といいながら落ちてきた
「ほらね僕にだって飛べるんだ
鳥になったんだよ」
「あのね、それは飛んでるんじゃなくて
落ちてるのよ。 ....
さいきん不安定です
イライライライラアイシテルゥゥ―――――――――
ほらね
たぶん僕は
きみのこと、嫌いじゃないんだ。
ひけらかすような寂しさを
風が夜更けに運んできた
分かり易過ぎて僕は
冷たくしらけてみたりする
寂しさなら山ほど
ウチの廊下にも溜まってるし
そんなに暇じゃない ....
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