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あの日
しかられて家を飛び出した少女の私は
夜に足をとられて川べりに一人
飲み込まれるのが恐くて泣いた

もう誰も私を見つけない気がした
一人分の砂利の音は
風に揺れる荒れ草の音に
さ ....
色は午後から塗りましょうと告げられ
私は途方に暮れてしまった

先生、
この鉛筆でなぞるべきものなど何処にも見あたりません
という小声の訴えは
38分の1の軽さでもって
上着のポケットに ....
 
長い針がてっぺんで止まって
からくり人形が踊りだすように
季節は正時を知らせないので
私には夏と秋の境目が分からない
午後いつものように並木道を通ると
すっかり中年になった白樺の深緑
 ....
 
並木道に
誰かの日傘が忘れられているのを見つけ
持ち主の名前がなかったので
失敬することにした
けれど自転車のかごに引っ掛けて
ペダルをこぎだしたそばから
日傘は陽を浴びて匂いたち
 ....
瀕死の人間の魂が電波を操れるわけはなく
だからあの明け方に二度鳴ったベルはあなたのおじいちゃんの仕業ではなく
単に誰かの間違い電話だったのだよ、 と言われ
冷静な私はそれを十分わかっているの ....
台所で玉子を割り
箸で溶いて
フライパンでバターとからめた


食卓であなたと向かい合い
それを口にふくんだ時 はじめて
涙が溢れてきた
  (お前も卵にはなれなかったのだね)

 ....
箸を持って近づいてみたら
じいちゃんの骨はほとんど残ってなかった
焼き時間を間違ったんだって
ママとママの姉弟は泣き崩れて
火葬場の人は床につくくらい頭を下げていて
あたしは用事のなくな ....
その本を手に取るたびに
同じページばかり開いていたから
今では机に置くだけで
パラパラと そこへたどり着く

私の心の傾きが
そのまま しおりになっている
     どこから。


     
     ひやりとしている土の上で生きている梢の揺れる(揺れる)末端に刺さる光、が








        わたしの温い肌に染む ....
昨日見た夢の中で
銀世界の夜
雪だるま達が
無言の笑い声を響かせ
雪合戦をしていた

目覚めたベッドから
窓を開けると
おととい冬の子供等が
煙の吐息昇らせて
きゃっきゃっ とつく ....
たとえばそれは
黄色と黒の表紙がついた
どこにでもあるスケッチブックで
軟らかい鉛筆を握って
記憶の底の君の笑顔を
なぞってみる
のだけれど

たとえばそれは
終電を逃しちゃった
 ....
竜道から少し外れた、石の多い場所で
あなたは待っていると言った
すうん。
空には旋回する群れ
あそこにも石が散らばっている、よう

十、は
たくさん。
九九もたくさん。
千、は
手 ....
起きたら
三島由紀夫だった

下唇を噛んだら血が出て
三島由紀夫の血はこんな味なのか とか
白くて小さめの歯は けっこう硬いのだ とか

会ったことないのに懐かしむ

せっかくだから ....
彼は語る、
砂糖壺に群がる蟻のように勤勉に、
生まれたばかりの赤んぼ並に計算高く、
梅雨時になると痛み出す古傷の神経組織に似て巧緻に、
洗ってもこすっても落ちない風呂場の汚れよりも執念深く、
 ....
今日は老人ホームの庭を
婆ちゃん達とさんぽして
草っ原のベンチにみんなで肩を並べ
空泳ぐ鯉のぼりを眺めていた 

「大きいまごいのお父さん」は
しぼんでこんがらがった日干しの姿で
尾っ ....
第九、を
歌おう
裏声も雪のかたさにかすれ
鈴の音も惑う聖夜に
深く沈む想いと「僕」と二人きり
肩を並べて雪にとけて

それから
それから

 ....
骨壷をもうひとつと
父親は頼みました

寒い寒い一月の斎場で
白い骨になってしまった
母親を乗せた
鉄板をみんなで囲みながら

葬儀屋が用意してくれたのは
大きな骨壷がひとつと
 ....
暑中お見舞い申し上げます
 今年は母さんの新盆だから
 せめて墓参りにくらいは帰ってきなさい
                  父より

   追伸
   そういえばクロがおとと ....
父はつまらぬ魚屋でございましたが、係累は多うございました。
たいそう古くから魚屋を営んでいたと申します。
けれども嫁はどこの馬の骨ともつかぬと祖母は母を貶めました。
わたしは母の係累をひとりも存 ....
ぬれた銀杏から
ぬれた銀杏の においがする

眼をとじても とじなくても

晴れた日の銀杏から
晴れた 葉のにおいがするように


紙の 傷のある指と
かさの柄をにぎる指

と ....
プラズマ放電のなか生まれ落ちた

ハイパーコダマこんじきの馬体



かの女の競馬熱は
とどまるところを
知らない こんやも
カクテルライトに浮き沈み
ターフのへりにぶ ....
Aliceと書いてアリサと読むの、
と女は言った。
黒の手袋をベッドサイドに垂らし人工の月明りの中で背中を見せる
のは初めて、
と女は薄く笑う
きしむ音はチークの椅子かチープなベッドかそれと ....
おれは見たい、
赤錆びた鉄塔の頂きに
鳥のように爪先立って
人影のなくなった都市を見たい
きみとだ


おれは見たい、
太陽のとなりに炸裂するもうひとつの太陽の誕生を
塵からつくられ ....
なぜ これほどに哀しいだろう
秋は雨粒の輝きのように
軽々と走り去り
数々の贈り物を
私の町に残していった
その道を
にこやかな天使が歩み来るのに

あなたが私の朝となり
あなたが私 ....
凪沙の歌


ぱぱ
ぱぱはきのうおそくにかえってきましたか
あたしとままがねてるおふとんのよこに
もうふだけおしいれからだして
おきがえもしないでねましたか

ぱぱ
ぱぱはきのうば ....
エミリー
あなたと最初に出会ったのは羊水の中
あなたは何も言わず
私を蹴って押し出してくれました
あなたはそれっきりそのままで
難産だったと語る母にあなたのことを訊いてみたのです ....
骨洗いの宿題はたいへんだ
僕は集中力がないから
いつも苦労する

僕のお姉さんは骨洗いが
とても上手だ

姉さんが骨を洗う姿は
とてもきれいで
僕は
自分のお姉さんなのに
変な気 ....
街路図には
方位が記されていないので
正しい道順はもうわからない


人影のないアーケイドを逆順に進めば
三番街と一番街のあいだに
二番街がない


封鎖された地下通路から
川底 ....
君とアリス・ドライブの途中
蒼い森の入り口で白い車の息があがった。
僕は
車のボンネットを開けてしたたかに朝の蒸気を浴びる
ナビ・シートでは彼女のソウルが
コールタールの音をたてているんだろ ....
ありがとう
うまかった

ありがとう
まずかった

いつも
いつも
飢えていて

ありがとう
食べてきた

皿盛りの肉
絞った蜜
犬の舌焦げ

ありがとう

母の ....
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