すべてのおすすめ
もちろん君のいない森の中で木が
倒れようと何の音もしはしない
一生を何に捧げるでもなく終わる人の
命を絶ったところでどの神も怒りはしない
そして誰も傷つけまいとじっとしていても
....
嵐の夜
白と黒の町
{ルビ礫=つぶて}のなかの
廃屋をめぐるまわり道
螺旋階段に立つ人々
雨のなかの天使を見下ろしている
瞳から瞳へ落ちてゆく滴
水彩の ....
writeと書いてあるボタンを押したら
全部消えて真っ白になった
よく見るとwriteではなくwhiteだった
なるほどそういうことだったのか
つまり世界はそういうふうにできていて
ひと ....
夏ではない海に
沈めてしまえるものでしょうか
私たちが紡いだ金色の思い出
もう 灰色の霧に閉ざされて
セピア色の彼方の風景
春ではない草むらに
置いていけるものでしょうか
遠くか ....
折りたたみ自転車が
折りたたまれていたのは
空いたばかりのトランクのなかで
トランクをバタムとしめると
あなたは取り乱しもせず
じぶんじしんを折りたたみ
わたしのバッグのなかにもぐりこ ....
金木犀の小花が
打ち明ける秘密を
直ちに忘れてしまってこそ空は
どこまでもひとつの
どこまでも青く澄み切った隙間です
衣服を自らほどいたわたしたち ....
ゴージャスなイタリア製のブーツ履いて
電車に乗り遅れまいと走ったときに
ヒールが折れて
あたし
電車のがす
100足の靴の中
磨かれ待ちの靴が20足ほど
ヒールの修理待ち ....
太った男の人が
日向で陽の光を浴びて
まだ少しずつ
太っている
やがて坂道経由の犬がやって来て
すべてを食べてしまった
+
お座り、が得意な子でした
お手、もしたし
....
いくつも詩を読んでくうちに
詩なんてくそくらえと思う
飾っちゃってさ
君をもっと知るために君の陰部を見せてくれないか
君は呆れ身構えるが
そうしないと僕には君が見えないんだ
....
涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた
雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている
物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた
栞を
....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
僕はスプートニク2号
地球初
気密室を搭載した
宇宙船
まもなく
僕は
他の兄弟と同じように
宇宙の塵となる
鉄の塊
その日
僕の部屋に来たのは
いつ ....
木がねむると
木のなかに
ほんとうの木がうまれて
風にふれようとする
風がねむると
風のなかに
ほんとうの風がうまれて
空にとどこうとする
空がねむると
空のなかに
ほんと ....
朝日の広さがだらだら緩んで
だらだら、昼まで届いて
ぼんやり正午をふやかしたアルコール
その向こう側を透かしたら既にぼんやり
夜、のような
そこが既に、夜なら
....
命の重さを量る機械を発明した科学者は
池袋毒キノコ事件で有名な例のカルト団体の信者によって拉致され
19日後に青森県の山奥で遺体で発見された
遺体には鋭利な突起物で刺された痕が合計69箇所あり
....
線路脇に建つ家に生まれて
ずいぶんと長い間 そこで暮らしたせいか
今でも 5分おきに
からだを揺らしてしまう
そうやって揺れているうちに
いつしか わたしは
窓ガラスの
3メート ....
きりすとが赤くきれいに咲いている
きりすとが青々と茂っている
一本の樹齢二千年の木のように
立っているきりすとは
大きな丸い世界を{ルビ蒼=あお}く包む空にとけゆき
無限の宇宙へと広がりゆく ....
空があんまりひくいので
きりんのくびは
つい空から突き出してしまった
そして見たくないものを
見てしまった
あああんなにうつくしいものを見てしまったら
もうぼくは
なにをみてもう ....
恵みは 希望を膨らませ
たわわに 蓄えられて行く
根ざす 大地は暖かく
不自由さに 逆らうことも無く静かだ
希望は満ちながら 腕から零れ落ちて
一面に 撒き散らされる
帰ること ....
ちょこっとのきっかけで
けんかになった
ぼくは
ありったけのわるぐちをいった
ばか
おたんこなす
よわむし
げじげじ
ぷいっとそっぽをむいて
いえにかえった
ひとり ....
改札口にて
お待ち申し上げております
行き先を
詮索したりはいたしません
どうぞ
ご安心を
あなたがここを
通過してゆく事実のみ
確かめさせて頂きたいのです ....
僕のお母さんからは ロケットが出るんだ
小さい頃 そう歌ってた記憶がよみがえって来たんだ
作詞も 作曲も 全部僕で
ずっとずっと、歌ってた気がする
僕のお母さんからは ロケットが出 ....
三匹のすもも
好かれて切ないすねすもも。
好けば嬉しやつややかすもも。
好きでうるおうおぼこのすもも。
それ、いちにのさん
恋で潰れた割れすももおっう
恋であ ....
タクシー未満の部屋を
間借りすると
運転手がいません
タクシー未満の部屋なので
運転手未満の僕がいます
それから線路のように
どこまでも間延びした
顔の恋人
そのために僕は ....
秋の色や形に
よく似た人と走る
最初にゴールした僕がふり返ると
その人は手を振って笑っている
もう一度ふり返ると
跡形も無い
一等の賞品に
砕け散ったコップをもらった
....
秋の夕暮れに
夕日がふたつ
赤く熟した
太陽と
柿の実と
風に揺られて
見分けがついた
少しだけ、冷たい風が吹いてきたのは
とても遠い場所からだった
人はいなくなる、ということが出来るらしい
世界はいつも通りに明るくて
僕らは同じように電車に乗り込む
乗り継ぎ駅で世界が追い ....
悲しいと言って
君が釣り糸に噛み付くから
僕はまた一つ疑似餌をつける
ショップに並べられた僕らの履歴書は
いつも濡れていて
釣り上げてしまったものを未来と呼んでも
誰も咎めはし ....
わたしは みにくい獣だ
鋭利な刃物を知っている
(わたしの爪はいつも)
鋭利な言葉を知っている
(やわらかな皮膚だけを)
鋭利な視線を知っている
(傷つける)
みよう ....
呼んでる
わたしは はんぶんだけの さいぼうだけれど
くらくて とくんとうごく かべのへや
まってる
淋しいと 引っ込むみたい
雨が浸みると 歩くのいやいやって するみたい
満ち潮
....
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