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木々は裸に剥かれ冷たい風に
枝先を震わせている
白いベンチは錆ついて
今はだれも座るものもない
緑の葉が深呼吸を繰り返す
....
突風がふいたときに、持っている荷物を手放したいと思った。わたしは橋の上を歩いていて、右手にお気に入りの傘をさしていた。それを風が揺すっていくままに任せ、世界がどうなるのかを見てみたいと思った。この傘は ....
藁葺きの小屋であれ
コンクリートのビルであれ
その四隅にはたぶん、
柱がある
その柱の向こうは、果てがなくて
やがてどこまでも丸い大地を離れ、成層圏をぬけだして
宇宙という名の空間をゆくこ ....
日光を反射した光は
触れようにも
手の中に収まりはしない。
触れようとした途端に
手の甲に滑って流れてしまうから
私が触れようとしてることさえ
太陽の子どもは
気付いていないよう ....
帰り道
どこもかしこも冬の空気で
しんとした夜のそらに
ぽっかり月が浮かんでいた
北風の冷気が全身を刺す
爪先はもう完全に冷え切っている
死んでしまったのではないか
と思うく ....
カラスの鳴き声がした。
小学校の帰り道、ひとりで帰っていたときのことだ。
前方に広がる、両端が田園の、まっすぐな道の直線を見ていた。
いつも一緒に帰っている幼なじみが、休みの日だった。
立ち止 ....
天気予報を見ると、日本のどこかに雪のマークがついている。ツンとした空気の真ん中で、息を吐く。するとその音が思いのほか大きくて驚く。あったかい毛布を肩にかけ、音楽を聴く。ロックを。できるだけ明るいロック ....
いない人だからちょうどいい
闇がやってくる
やがて
海と空の境界線をうやむやにする
闇がやってくる
完全なる闇の中で
闇を知ることはできない
闇を知ることは簡単だ
ぼんやりとでも
灯りをともせばいい
....
固く胸がふくらみ始め
女の子はあごの下で
つぼみが育っているのを知る
不思議なわたし。
自分の体につぶやいてみる
身体の深奥から
まるで一本の茎が通っているみたいな内部から
外へ外へと ....
誘惑する怠惰にそっと触れてみる朝僕はだれ
ただひとつ詩だけが浮かぶわけでもないのにこの海に
蔓延する伝染性の恋愛文化のバラのつる
ことばにならないもどかしさかかえてはしれ直感
....
石で打たれるような
犬に追い立てられるような悲しさに
居ても立ってもいられなく
ただただ早く帰りたかった
日没に向ってひたすら走り続けた
貝のように固く握りしめている
決して手放し ....
夜がながれております
黒です
いっぽんの
さむざむとした白が
なぶられるように揉まれております
黒です
それ以上のことが
なにか目の前でおころうとしているのに
ただたちつく ....
ネコがニャーと鳴く
ゴメンね キミのうちが分からないんだ
だから キミをボクの部屋に閉じ込めるよ
安心して
ちゃんと毎日ミルクをあげて ちゃんと毎日撫でてあげるから
....
ダイスを転がして運命を決める
でも出た目が何か決めてなかったので
僕は都合のよいように解釈する
何回振っても薔薇色の未来
そんな運命を望んで
でも不思議と1のぞろ目は出な ....
無力感
それは安らかで 静かな時の流れ
どこへ向かうでもなく
心のわだかまり漂っている
とても静かな時の流れ
自殺者が私にこう告白した。
「いつの間にか「シ」という音が俺の全身に転移していった。初めはこの「シ」は「詩」なんだとか「史」なんだとか思おうとしたが、そのような思念の枝分かれ・芽吹きを斬り落として ....
熱が下がったのだろう
うつら、うつらしていた
私は碧く底の知れない
淵に浮んで
水の深みを見ていた
耳もとを太陽の光が筋になって
淵の彼方を目指しているが
その光の筋の先は
揺 ....
{引用=ジャンクフードからドッペルゲンガーまでを
わたしの小さな世界の一員と認めて陳列したストアで
コスモポリタニズムを宣言するの。
エキセントリックな彼を愛する彼がとても好きだから
シャネル ....
十字路に立って交わした契約は
今では反故になりそうだが、
これから先の道行きに
指針となるはず 悪魔の言葉
神に言葉はかけられない
神から言葉はかけらない
教会にいてもかけられない ....
そこには白い夜が横たわっていた。
美しい肢体の上には黒い枯れ木が今にも折れそうに、
風に揺られていた。
私はその枝をポキリと折って、
彼女の口元 ....
静寂のリズム
小さなわたしが震えている
手を差し伸べた
貴方の温もりに
あの頃の私は目を閉じて
身を委ねた小波は
浄化する
醜い私を剥がしていった
星を散りばめた夜空には
言葉な ....
せかいは思っていたよりせまく
水中は人肌のあたたかさをたたえる
くちをひらけばアルトの悲鳴と二酸化炭素がもれて
よじれていく
それは意識なのか 上っ面の社会性なのか
・・・どうでもい ....
すがる手を拒むように
早朝の冷気はすべすべしている
僕……僕は空き缶を捨てるため出かける
眠っているはずの街は
どこかうるさく感じられる
ちぐはぐな大きさ ....
三階階段の縁から身を乗り出して
手を振るのは逆光の天窓を遮る影なのです
その振り子運動の往復に眼球が催眠される瞬間
私は階段の縁に手も掛けず三階下を覗き込み
爪先も触れぬ一個の天秤の両端で ....
雨上がりの濡れた空気に
しっとり染み込む芳香は
垣根の向こうの金木犀
乾き始めたアスファルトに
規則正しくむちを打つのは
子どもが回す赤いなわとび
吸い込みすぎて重たくなっ ....
{引用=眠れよい子よ
月がほしいと泣く君よ
闇夜の空に手を伸ばし
きつくきつく握っても
月はその手をすり抜けて
君の心を絞めつける。
ほしいほしいと泣けば泣くほど
月は君を支配して
....
影響
少しだけの賞賛が
少しだけの満足が
少しだけの尊敬が
少しだけの裕福が
それが人生の全てだ
と気づくのに人生の大半を費やしてしまった。
少しばかりの賞賛と
少しば ....
遠浅の日々はいつの間にか息継ぎの仕方を忘れさせる。
駅まで、の最後の交差点に立つと
呼吸が止まるほどに夕焼けの匂いがした。
*
「雲は、本当は流れていないのです ....
白と黒の樫の木の時
過ぎ去った羽根を伸ばす木菟
折れ曲がった追憶
無口な星と人の間
単音の呼び声
ほう
ほうっ
ど ....
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