満月



帰り道
どこもかしこも冬の空気で
しんとした夜のそらに
ぽっかり月が浮かんでいた

北風の冷気が全身を刺す
爪先はもう完全に冷え切っている
死んでしまったのではないか
と思うくらいに。

どこもかしこも真っ暗で
建物から漏れるか弱い光と
街灯だけが頼りの世界に
ありありと浮かぶ満月

一面嫌なグレーの雲に覆われていて
星の光さえ届かないのに
満月の光はここまで届くのだから
不思議。

それにも関わらず
貴方の輝きが控えめで冷たいのは
もしかして
太陽に配慮しての事だろうか?

幽玄で怪しいその光に
何故だか心が振るい動かされる
まるで狼男のように

余りに月が美しいので
自分の死んだ手の冷たさを忘れていた



自由詩 満月 Copyright  2016-01-28 08:36:58
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