すべてのおすすめ
雨上がりの濡れた空気に
しっとり染み込む芳香は
垣根の向こうの金木犀
乾き始めたアスファルトに
規則正しくむちを打つのは
子どもが回す赤いなわとび
吸い込みすぎて重たくなっ ....
あんなに耳障りだった蝉の声も
虫眼鏡で集めたみたいな痛い陽射しも
まるで色あせ始めた遠い物語
なだらかな坂道を自転車でおりると
向かい風がほんのわずかの後れ毛を揺らす
時折小石が顔を ....
浮いた光は気まぐれに運ばれているのか
それとも決まった順路を漂っているのか
ただ、示されたとおりに視線を動かす
乾きから守ろうとする瞳は水の膜を張り
鮮明だったはずのものがぼんやりにじむ
....
忘れかけている遠い記憶のあの子
白いワンピースがお気に入りだった
生まれつき色素が薄かったようで
肌は陶器のようにつるりと白く
髪は太陽に透けるような茶色だった
大人は口をそろえて
....